第145話 法案決議
■中央ゴレムス暦1586年6月30日
アウレア おっさん
法案審議も終了し、決議を取る刻が来た。
主な法案は下記の通りである。
・元帥位常設、及び元帥への軍権委譲
・銃火器保有禁止法の撤廃
・軍制改革の継続と徴兵による戦力増加
・教育法の改正
これを大公、貴族院、民院で議決を取りそれぞれを1票とする
貴族院定員151名、民院定員353名。
貴族院議長が早速本題に入る。
「では議決に移る。元帥位の常設、及び軍権の委譲に関してである! 皆、静粛に投票を行うように!」
その時、大公派の議員から大声で意見が飛ぶ。
よっぽど法案を通過させたくないのだろう。その目は血走っていた。
「元帥位の常設と軍権委譲に関しては別々の案件であると言ったはずだッ!」
「その件に関しては既に決議にて決着済みである。静粛に」
「民院にも諮るべきだと言っているッ!」
「却下」
その後もその議員は何とか時間を使おうと必死でアピールするが無駄な足掻きであった。
おっさんはその様子を冷めた目で見つめていた。
議長に促され議員たちが議長の机の上に木札を置いていく。
結果は火を見るまでもない。
「(工作ばっちりだな。これで懸念の1つが消えるか……)」
「では『元帥位常設、及び元帥への軍権委譲』に関しては賛成101票、反対44票、棄権6票を持って賛成多数につき貴族院では可決とする」
おおッと議場が大いに沸いた。
「次は『銃火器保有禁止法の撤廃』に関してである。では投票を開始する」
投票は粛々と行われた。
議員たちはここでも賛成に票を投じていった。
「では『銃火器保有禁止法の撤廃』に関しては賛成138票、反対12票、棄権1票を持って賛成多数につき貴族院では可決とする」
これを持ってアウレア大公国の故ホラリフェオの念願が叶おうとしていた。
少なくとも貴族の危機意識というものが高まった証左と言えよう。
あとは大公ホーネットと民院次第である。
その後も着々と投票は進んで行った。
・軍制改革の継続と徴兵による戦力増加
これについては賛成105票、反対46票。
徴兵しても使い潰すようなことはするつもりはない。
成績か良いものについては将校候補として取り立てていく予定である。
・教育法の改正
賛成98票、反対53票。
「(微妙に賛成が減ったな……まだまだ庶民に知識をつけさせたくないってところか? これと軍制改革はセットのようなもんなんだがなぁ)」
まだ決議は続いているがおっさんの目的は達した。
おっさんは手で頭を支えながら民院の結果に想いを馳せるのであった。
―――
――
―
さて民院の投票結果である。
民院の定員は509名。結果は下記の通りとなった。
①元帥位常設、及び元帥への軍権委譲
賛成402票、反対107票。
②銃火器保有禁止法の撤廃
賛成335票、反対174票。
③軍制改革の継続と徴兵による戦力増加
賛成469票、反対40票。
④教育法の改正
賛成493票、反対16票。
この結果により、大公ホーネットが①に反対票を投じたものの総合結果として賛成2、反対1で『元帥位常設、及び元帥への軍権委譲』法案は可決となる。
ここにおっさんの策は成ったのであった。
おっさんの勝因は単純だ。
おっさんの能力によりホラリフェオ公の仇を取った上、戦には連戦連勝。
アルタイナに部分的に領土(租界)を保有し、バルト王国まで滅ぼしてみせたのだ。
公国民の人気はうなぎ上りであった。
そして戦争につぐ戦争により現代の戦では銃火器が必要不可欠と言う認識が広まった。いや、広めた。
更に
逆にホーネットの方は何もできなかった。いやしなかった。
優秀なブレーンがいないことでおっさんのような工作が一切できなかったのが大きいと言える。それにホーネットは大公になった後、特にこれといった政策を出していない。また三男であったため、国民の認知度も低く人気もなかったと言っても良い。
ホーネットのこの日の激怒っぷりはかつてないほどだったと言う。
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