第134話 謀略
■中央ゴレムス暦1586年5月25日
アウレア おっさん
凱旋を果たしたおっさんは首都アウレアにしばらく留め置かれることとなった。
他の家臣たちと言えば、ベアトリスは貿易の様子を確認しにハーネスに戻り、ノックスはナリッジ・ブレインと共にウェダに帰還した。
結局、おっさんはブレインを殺さなかった。写真が出回っていないからこそできる芸当だが、ホーネットには処刑済みだと報告してある。ブレインの性格はアレだが、その能力は今後の戦いに必要になってくるはずである。プレイヤーが組めば難局も乗り越えられる確率が上がるだろうと考えての処置である。それと同郷の誼と言うこともあるのだが。
アイル・レスターにはネスタトへ向かわせ、コダック砲や新型銃の改善と開発の監督を任せた。
一方、おっさんが何を始めたかと言えばエレギス連合王国の新大使とラグナリオン王国の大使との会談である。
エレギス連合王国とはヴァルムド帝國の扱いについて話し合いを行った。おっさんとしてはいずれぶつかるガーレ帝國との戦争の前に降しておきたい国家である。
海外の植民地も持っておりそれなりの国力を持っているが皇帝が重病で子供たちが跡目争いを始めていると言う。3年間戦力の増強に励んできたアウレア大公国なら戦えない敵ではないだろうとおっさんは考えている。
エレギス連合王国としてもガーレ帝國と共に列強国であるヴァルムド帝國は目の上のたんこぶらしくアウレアを使って代理戦争をさせようとする意図が透けて見える。
ラグナリオン王国もヴァルムド帝國とは昔から仲が悪いこともあって開戦する可能性があるのだが、その他にも西のカヴァリム帝國など敵対国が多いため動くに動けないようである。そこでアウレア大公国との相互不可侵を発展させ軍事同盟まで持っていきたいと言う考えを持っていた。
おっさんとしては慣れ合う気はないので軍事同盟を結ぶ気はない。ここのところはホーネットと意見が一致している。
おっさんは会談を終えるとボンジョヴィを呼び出し今後のことについて話しは始める。
「しばらくはガーレ帝國もだがヴァルムド帝國も警戒する必要があるな。列強の2国と国境を接してしまった。アルタイナではヴァルムド帝國にも講和の仲介の一翼を担ってもらったが、どうであれあちらは列強だ。油断はできない」
「御意にございます。しかし列強とは言えガーレ帝國ほどではござりませぬ。決して敵わぬ敵ではありますまい」
この3年間でガーレ帝國は不気味なほどに動かなかった。
もちろん海外派兵は引き続き行っているが本国周辺には目立った動きはない。
ヴァアルムド帝國は北グラン大陸で原住民に悪逆非道の限りを尽くしていると
後はおっさんが権力の頂点を取ればアウレア大公国はおっさんに取って代わられるだろう。
「元帥位に関してだが、バルト王国の討伐が終わったけどどうするんだ?」
「既に根回しは済んでおります。閣下は貴族から絶対的な信頼を得ておりますので貴族院は掌握済みです。民院も問題ありませぬ。
「そんな上手くいくか?」
「いきましょう。残りの大公陛下の1票は意味をなしませぬ」
「でもなぁ血統って大事だと思うんだが? アウレアはずっと男子の万世一系だろ?」
「お覚悟なされませ。閣下は簒奪者になるのです。この乱世を治めるためにはそうする以外他にないのです。それにシルフィーナ公女殿下がおります」
「どういうことだ?」
聞いておいてなんだがおっさんにも流石に意味は分かる。
シルフィーナを娶り大公家と血縁関係になると言うことだ。
現代日本でも反日勢力が考えているようなことである。
「言葉通りの意味にござります。公女殿下を伴侶となさいませ。既にラムダーク・ド・テイン侯爵、ラグナロク・ド・レーベ侯爵、ネオキア・ア・キングストン伯爵とご本人には了承を得ております故」
「キングストン伯爵だと? アリオーガのか?」
「そうです」
「シルフィーナ殿下もだって? マジか……」
「おめでとうござりまする」
ボンジョヴィが恭しく礼をする。
顔がニヤけているのを隠そうともしていない辺り、おっさんの気持ちは丸裸だろう。
「(こんにゃろ! いつかはッ倒す!)」
おっさんはこの優秀な部下にやり返してやることを天に誓った。
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