第120話

「お疲れ様です皆様。さすがビビは凄い人気ですね!」

店員さんの満面の笑顔に、疲れを感じながらも、とさっきの握手会で皆の笑顔を思い出し笑みが漏れた。

言われて嫌な気分にならない。

ふふん、どうよ叔父様。

「そりゃーそうだろ。私の自慢の姪っ子だからな。こいつの性格とこの顔に惚れて、子の小説が出来たんだ。いつかは、スティーンから産まれた本なんだ、と言いたかったんだ」

熱く語る叔父様の言葉に、叔父様の愛を感じた。

知っていた。

いつも私を馬鹿にする内容なのに、慈しみさを滲ませた感情があり最後はむくれる私を、優しく笑って包んでくれた。

だから、私も叔父様にはいつも素直でいられた。叔父様にお2人を任せる、と決めたお父様とお母様の判断は、間違いなかった、と断言出来た。

もう、ドヤ顔を見せた私が恥ずかしいじゃない。

叔父様の言葉に定員さん達は私を持ち上げる話ばかりをしてきたが、叔父様は何一つ反論せず逆に、私あってのビビだ、と熱く語りだした。

聞いているこっちが恥ずかしいくらいだった。

そんな和気あいあいの中、昼食となった。

控え室には、質のいいお弁当が用意されていた。

用意したのは、叔父様だろうけど、中身が好みではなものばかりが入っていて不思議に思った。

叔父様は、魚が好きでないのに、魚が入っている。

叔父様は、茄子が好きではいのに、茄子の天ぷらが入っている。

叔父様は、椎茸が好きではないのに、椎茸の煮物が入っている。

叔父様は、酢の物が好きではないのに、入っている。

えーと、これは誰の好みなの?

だって、叔父様は嫌々食べている。

ラギュア様とカンタラ殿下は普通に食べている。

という事は、2人ほ好みに合わせているのか。ふーん。少しは他人の好みに合わせれる大人になったのね。

そりゃそうね。自分よりも立場が上の方々相手にしているのですもの。

ぷっ。

笑いを必死に我慢した。

食べれないものばかりで嫌そうに、少しずつ口に入れる叔父様の姿は面白い以外の何者でもない。

その中で、ラギュア様とカンタラ殿下には、美味しいだろ、とか確認する姿がまた、面白かった。

和気あいあいと食べている途中で、警護の1人が入ってきて、入口で待機していたザンに何かを話していたが、あまりいい話ではないようだ。

直ぐにザンは私のそばにやって来て耳元で話をした。

「先程の女性が瀕死の状態となり、恐らく助かりません」

淡々と話す冷静な声が、体中の呼吸を停めるかのように、縮こまり、言葉が出なかった。

瀕死?

バニラ様が?

「指示を」

鋭い一言が、私の意識を戻した。

「申し訳ありません。少し席を外します」

叔父様やフィーやカレンの顔が一気に変わったが、立ち上がり廊下へ出た。

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