第34話七夕祭り5

「お腹すいたね、2人を探しに行こうよ」

「そうだか、だが心配しなくてもすぐに見つかるよ」

はあ、とフィーはため息つき、指さした。

その先を見ると、赤いパンツ姿が見え、何だか怒っていて、側にいるクルリがオロオロしている。

「あいつは何処に行っても目立つんだ。何かあれば、私は帝国皇女だ、と言い出し我儘言い出すから困るよ。スティングみたいに少しは大人しくなればいいと思うよ」

「そう?カレンは、あれでいいんだよ。だって、私には無い、とても素直で真っ直ぐだもの。私は、カレンみたいになりたいと思ってるわ」

「あれと同じに?本当にか?」

「こんなのイカサマよ!あんたが当てれて、私が当てれない何てイカサマ以外の何物でもないわ!!」

ん?

カレンの怒っている声が聞こえた。

「金だけぼったくろうとしてるのが見え見えよ!!」

仁王立ちのカレンが睨みながら指さして言っている。

ん?

2人に近づくにつれ、カレンに怒号の声がどんどん大きくなる。

「あんたが下手なんだよ!!」

「何い!!もう1回言ってみろ!!」

机を乗り越えんばかりの勢いのカレンを慌ててクルリが止めていた。

「カレン様やめてください!!」

「あんたみたいな口の悪い客は初めてだ!それもどこぞの貴族の娘だろうが!余程我儘三昧育てられたらしいな!!」

「だから何よ!金はあるが、我儘三昧は育てられてないわ!」

「はあ!?それのどこがだい!!」

「だから、カレン様もうやめてください!」

大騒ぎだ。

確かにこれは、真似出来ないな。

「あ、お嬢様!どうにかして下さいよお」

私?

クルリが私達に気づき泣きそな顔で、側によってきた。

「何やってるんだ?」

フィーが、またか、みたいな顔で聞いた。

「これよ!」

はい、とカレンが指さした。

見ると、ダーツの遊びのようだ。

さっきの話からすると当てられなくて、ごねているのか。

机の上に何個も飴があった。

「あんた達この子の連れかい!?煩いから連れってくれよ!」

恰幅のいいおばさんがほとほと困り果てたように声を掛けてきた。

「だから、イカサマなのよ!」

「違うと言ってるだろ。あんたが下手なんだよ!」

「違うわ!ちょっとスティング投げてみてよ!」

「私?やったこたないわよ」

それに、的は結構遠いし、小さい。

「いいから!このおばさんが投げたら当たるし、その上ザンが投げるのを嫌うのよ、イカサマ以外の何物でもないわ!」

「何言っているんだ。あんな何でもできそうな男が投げたら商売上がったりだろうが!!」

確かに。ザンが投げたら当たりそうだよね。

それにザンは止めようともせず、真顔でたっているだけだ。

この人、護衛以外は何もしないのだろうか?

「仕方ないなあ、フィー一緒にやってみましょうよ。その代わりこれ終わったら何か食べに行こうよ。お腹すいたよ」

「そ、そうですよカレン様。お昼まだですもの」

私達の言葉に、クルリはかなり必死にお願いしきて、やっとカレンは渋々うーん、と大人しくなった。

「確かにお腹すいなあ」

「カレン、店の人を困らせてどうする。申し訳ありません、連れがご迷惑をお掛けしました。ほら、カレン、騒いだら他の客が来れなしいし、スティングもお腹すいているなら可哀想だろ」

「まあ、確かにお腹すいたな。2人が終わったらもう終わりにするよ」

「ほれ」

どうも早く終わって欲しいようでおばさんは手を出し、その手にクルリはすかさずお金を置いた。

「ほい」

おばさんは私とフィーに三本の矢を渡してきた。

「あそこの的の当てたら当たりだ。中央に当たれば、このぬいぐるみをやるよ」

的の横に、ドン、と置いてある大きいぬいぐるみ。

「それ!それが欲しいの!」

カレンの言葉に、

絶対欲しいわけじゃないよね。

只、1番的な感じが欲しくて、的に当てようとしているんだ、と思った。

だって、あれたいして、可愛くないし、質も良くないもの。

「変な意地ばっかり持ってるからな。悪いが付き合って上げてくれ」

ボソッとは私だけに聞こえるようにフィーが言った。

優しいな。

こうやっていつも尻拭いしてあげてるんだ。

「大丈夫。私も楽しいから」

私の言葉に、微笑み、肩をつんと当てきた。

え・・・?

たったそれだけなのに、顔が熱くなりドキドキしてきた。

「それなら良かった。じゃあ俺からなげるな。もし中央に当たったらスティングにあげるよ」

格好良く言ってくれたけど、

正直いらない、

と、

とても冷静に思ってしまう自分が楽しかった。

フィーの投げた、一投目は的に届かず、二投目は的を掠めて、三投目は的の下の方に当たった。

「ほら、イカサマじゃないだろ。的に当てたからこれな」

そのイカサマと言う言葉あえて言うのやめてよ。カレンの睨みが怖いから。

フィーは飴玉でなくチョコを貰ってたが、残念そうだった。

いや、大丈夫、あんなのいらないからね。

「じゃあ私投げるね」

フィーで届かなかったということは、けっこう思い切り投げた方がいいのね。

構えて、一投目を投げると、的スレスレで落ちた。

もう少し強くか。

二投目は、的を掠めた。

もう少し強くね。

三投目は、

「あ・・・」私。

「嘘っ!?」クルリ

「まじ?」カレン

「嘘だろ」フィー。

「おお、おめでとう!!そこは三等賞だ!!」

中央には当たらなかったが近い所に当たりおばさんが品物を持ってきてくれた。

小さいうさぎのぬいぐるみだ。

「可愛い」

フサフサの肌触りで、目が真っ赤で触り心地が良かった。

「本当にイカサマじゃなかったんだ」

「だから言ってるだろ。ほれ、飴は袋に入れたから帰りな」

しっし、とばかりなおばさんにカレンはムッとしたがさすがに何も言わなかった。

「あんたスティング、という名前なのかい?」

おお、またさっきの話だね。

「そうなのよおばさん。あの、性格の悪い殿下の婚約者と同じ名前なのよ。嫌になっちゃうわ」

「そりゃ可哀想だな。何でも我儘三昧の気位の高い金持ちらしいな」

「羨ましいわよね。お金持ちなら何でも許されるって」

「だが、あんたは同じ名前でも可愛いし、性格も良さそうじゃないか」

「よく言われる」

「あっはははは。良い性格してるわ。あんたが婚約者だったらいいだろうな」

「ありがとう。じゃあ邪魔になるから行くね」

バイバイと手を振り、そこを離れた。

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