第33話七夕祭り4
うわあ!!
祭りの入口を通り中に入ると、胸がドキドキして興奮した!
賑やかな声や、
曲。
そしてカラフルな装飾と、
いい匂いが鼻につき、
とても楽しくなった。
いつもの街並みなのに、祭り、という言葉がピッタリな、様変わりした風景に嬉しくなった。
それも今日はとても天気がいいし、7月とはいえ、そこまで暑くなく、祭り日和だ。
今日の祭りは、
殿下の誕生日、
と言うのもあるが、
七夕祭り、
とも言う。
日が沈む頃、蛍光塗料を塗った紙風船を、願いを込め川へと流す。
それが天の川のように見えるから、七夕祭りになったとのだと、習った。
いつも殿下の誕生日パーティーに参加しているから、昼間のお祭りに来た事がなかったが、1度だけ、公務として紙風船を流しに参加したが、とても楽しかった。
「ねえ、あれ美味しそう!」
1番手前にある露店を指さした。
果物に棒を突き刺し、その果物に飴を絡まているのが見え、太陽の光を浴びてとてもキラキラ輝いてる。
「カレン様、私達あちらを見に行きましょうよ」
「ん?あ、そうだねクルリ。じゃあねスティング、また後で会いましょう」
2人はさっさと歩いて行った。
「行こうか、スティング。あの飴が気になるんだろ?」
え?
あ・・・そう言う事か。
恥ずかしそうながらも嬉しそうな顔のフィーと、目が合い、こそばゆい気分になった。
「うん。行く」
気を使って2人にしてくれたのか。
「いらっしゃい!何だあんちゃん、殿下の誕生日パーティーにもれた貴族だろ」
店の前に行くと、気さくなおじさんが声をかけてきた。
「あんちゃん?貴族?」
あんちゃんと呼ばれるとすれば、フィーの事よね。
ふい、と横に立つフィーを見て、
納得!
今さらと納得した。
貴族だわ。
フィーはなるべく普通の服を着てきたのに、キラキラしたオーラが漂っていて、そこにいるだけで普通の人とは違うのがよく分かる。
クルリの言う通り、私、この服着て来て良かったわ。いつもの格好で、フィーといたら場違いかもしれなかったわ。
「そ、そうなのよ、貴族だけど殿下の誕生日パーティーに参加できる程でもなくて、毎年お祭りで楽しんでるのよ。お祭りの方が楽しいわ。ね、そうでしょ?」
話合わせて!
私の顔に、
え!?
と挙動不審な動きを見せたが頷いてくれた。
「そ、そうなんだ、よね。パーティーなんて退屈すぎて途中から疲れてくる。楽しくもない相手と雑談し、聞きたくもない他国の愚痴を聞き、途中で逃げるカレンの尻拭いしながら相手をしなきゃ行けない。父上や母上も俺の事を帝国の」
「フィー、分かった!」
がっ、と腕を掴み、
黙って!
と睨んだ。これ以上喋ると余計な事口張りしりそうだ。色々溜まっている事があるのだろうけど、
そ・れ・は・後で聞いてあげるわ!
自分が言った内容に気づいたようで、バツが悪そうにこくこく俯いた。
「あ、えーと、分かった」
宜しい。
「確かに面倒そうだな、貴族の集まりは。でもな、今回のパーティーはひと悶着あったらしいぞ」
ん?
何処かで聞いた言葉だわ。
「何でも殿下の婚約者の、我儘三昧の公爵の娘がな」
ん?
殿下の婚約者?
我儘三昧の公爵の娘?
あれ?
私の事?
「帝国のお偉いさんを上手いこと言って騙して」
ん?
帝国のお偉いさん?
上手いこと言って騙して?
チラッ。
フィーを見ると、違うだろ、と憮然した面持ちでおじさんを睨んだ。
どっかで聞いた話だわ。
笑いを出てきて、我慢するのに必死だった。
「何だかんだといちゃもんつけて、殿下に喚き散らした、とさ」
ん?
いちゃもん?喚き散らし?
したっけ?
笑える話だわ。
「ようは、レインの可愛いのに嫉妬してる、と噂だ。えらいブサイクらしいからな」
ほお。そこは否定しないわ。だって、レインは可愛いもの。
「何処からそんな馬鹿げた」
「フィー!」
また、がっ、と腕を掴み、
黙って!!
とまた睨んだ。
私の為に怒ってくれているのは、正直嬉しかっが、
妙な威圧のを出してきて、笑いが引っ込んだ。
いい?
今は、こっちの話をも少し聞きたいの。
「少し下がっててくれる?」
早く!
「・・・分かった・・・」
宜しい。
「私もその話聞いた事ある。高飛車な公爵の娘で、殿下がかなり困ってるんでしょ?その上。レインとの恋仲を邪魔してるらしいね」
「やっぱりか!その話しはワシも聞いた。余程ブサイクなんだろうな、その娘は。自分の立場を利用して殿下を困らせ、レインをバカしにしているんだとさ」
「許せないわよね。お互い好き同士なら身を引くべきよ」
「お前さん分かっているな!だが、そこを助けているのが慈悲深い王妃様だ」
ん?
慈悲深い?
「平民であるレインを庇い、2人を助けているらしいじゃないか。いやあ王妃様でありながら、素晴らしい考えじゃないか?その上、いつも穏やかで怒りもしない、優しい人らしい。その小生意気公爵の娘よりもよっぽどワシ達の事を考えて、レインを押しているんだろよ。いやあ、これからワシらの生活も良くなるだろうな」
「そうね。だって平民のレインがその公爵の娘よりも殿下に愛さているのだもの。その上、王妃様の力があればより、この国の皆が裕福になるように動いてくれるものね」
「その通りだ」
悪いが、そんなの空想上の理想論だ。
現実には、無理な話だ。
生活が裕福になる為には、単純にお金があればいい。
だが、お金はどうやって手に入れる?
国民は王族、貴族は税金で生活している、と罵る者がいるが、王族も貴族もそれ相応の働きをして国を養っているのだ。
そこを見せないようにし、空想の理想論だけを膨らませる。
いわゆる、希望、それは、噂から全てが始まる。
ふーん、なるほどね。
上手く使ったものだわ。
ふーん、なるほどね。
上手く噂をたてたものだわ。
「その通りだ!いやあ、娘さんよくわかってるな。しかし、あんた、レインよりも綺麗な顔してるな。あんたのような綺麗な娘さんなら、殿下はレインよりも選びそうだな」
「ふふつ、上手い事を言うわね。おだててもそんなに買えないよ」
「残念。あんちゃんに買って貰うと思ったんだけどな。だが、冗談抜きであんたは綺麗だ。勿体ないな、殿下があんたの顔みたらレインよりも気に入りそうだ」
ん?
これは本気で言っているな。
ふっふふ。いい気分だわ。
「嬉しい事言ってくれるわね。じゃあここにあるの全部買うわ」
「は?おいおい、そう言うのは冗談でも言わない方がいいぞ。ワシだからいいが、他のやつなら本気にするぞ」
「本気よ。いい話を聞かせてもらったし、私を褒めてくれたもの。リューナイト、お金払って上げて」
「はい、お嬢様」
リューナイトは、私の護衛の1人だ。
「幾らになりますか?」
リューナイトは女性なのだが、中性的な綺麗な顔立ちの20代。
カレンが来たから良かったものの、クルリがいつも、私と並ばせて、
いいですね!もう少し、いや、抱き合って下さい!!
とか、訳の分からないことを言っていた。
今はカレンと仲良くなったおかげで、そんな意味のわからない事を言われなくてほっとしている。
「あんた何もんだん?」
「私も一応貴族なのよ」
「見えねえけどな。まあいいか、金さえ貰えればこっちは万々歳だ」
驚きながらも嬉しそうに、箱に詰め出した。
「フィー、どれがいい?私これがいい」
バナナに飴が絡まらているのを選びとった。
「俺はこれかな」
フィーはカットされたオレンジのをとった。
「じゃあおじさん、リューナイトが払うから。じゃあね」
「おう、ありがとうな」
気持ちのいい返事でせっせと箱に詰めてくれていた。
「美味しい!!」
「うっ・・・酸っぱ・・・」
「甘いオレンジじゃなかったんだね。ぜんぶ買ったから、後でバナナ食べてみてよ。美味しいよ」
「そうする。これは、かなり、目が覚める味だな」
「残念だったね。でも、これなら私作れそうだよ。今度作ってみようかな」
「それは楽しそうだな。出来たら俺はアボカドがいいな」
「・・・意外な物言うね」
「そうか?」
アボカドが好きなんだな。1つフィーの事が知れて嬉しかった。
でも、アボカドに飴細工かあ。ちょっと思いつかないけど、以外にいいかもしれないな。
「いいよ、作ってあげるよ」
「楽しみだな。だが、なんだあの噂は酷いもんだ!」
最後のひと口を口に入れながら吐き捨てた。
「気にしてないよ。学園でも同じような事言われているもの。それに噂だもの」
「そうだが・・・。俺としては納得いかない」
「ありがとう。でも、本当に私は気にしてないよ」
私も最後のひと口を口に入れた。
美味しい。
「スティング、少し変わったな。なんと言うか、強くなったというか、明るくなったと言うか」
「私もそう思う。殿下から離れて、全てがスッキリして、色々考える事ができる。ほんの些細な事も逃さず、視野が広くなった気がする。あ、勿論この服のお陰もあるよ。元気を貰えたような気がするもの」
「そうだな、今のスティングによく似合っている気がする」
いつものように優しく微笑むと、私が持っていた串を取り、捨ててくれた。
そんな小さな事に気づいてくれるフィーに、気持ちが落ち着いた。
殿下とは違う。
あの方は全部私が私がしてあげて、
何言ってくれなかった。
「ありがとう、フィー」
「何が?」
自然の優しさは、
心にとてもしみた。
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