第23話ロール様からお茶会の招待
馬車乗り場に着くと、誰かが待っていた。
「ごきげんよう、帝国皇子フィー様、帝国皇女カレン様、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様」
その学生は綺麗な声で、綺麗に会釈した。
「ごきげんよう、ロール様」
私が返すと優しく微笑んだ。
「お初にお目にかかります、帝国皇子フィー様、帝国皇女カレン様。ロール・ホッリュウと申します。お目にかかれて嬉しく思います」
ホッリュウ伯爵家のご息女だ。勿論王妃派だ。
丁寧な挨拶と、人だかりを避けた登場の仕方、そして、自分の紹介。
王妃様からまた、色々学んできたわね。本当に情報が早い事。
呆れるわ。
「こちらこそ、嬉しく思います」
「こちらこそ、嬉しく思います」
お2人が、この学園では初めて見る社交辞令の挨拶に目を奪われた。
姿勢も会釈も何もかもが同じなのに、全てが違う。
言葉がなくとも醸し出す気品が、体中から溢れ、圧倒される。
元に私だけではなく、ロール様も怯み、震えていた。
「ロール様どうされました?何かご用事もございますか?」
「あ、申し訳ありません。実は先日他の方から伺ったのですが、帝国皇子フィー様、帝国皇女カレン様は、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様の参加するお茶会には、御一緒に参加するとお聞きしました。来月私の主催するお茶会に、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様は参加して下さるので、おこがましいとは思いましたが、帝国皇子フィー様、帝国皇女カレン様に参加して頂きたいと思い、招待状をお持ちした次第でございます」
すっと招待状を差し出したのを、フィーとカレンはさっさと貰い、
「ありがとう。さあ帰りましょう」
「そうだな。スティング様行こう」
と、興味がなさそうに言うとカレンは私の手を引き馬車に乗せた。
馬車に乗る時チラリと顔が見えたが、悔しそうにこちらを見ていた。もっと話を弾ませるように言われていたのかもしれない。
「あれ、また、王子の友達?」
カレンが面白そうに招待状をヒラヒラさせ聞いてきた。
「そうよ。何故わかったの?」
「あの人達同じ目をしてるわ。全員スティングを見下している。今日の女が1番わかり易かったね。それに、あの女、この間のお茶会の女から学んだのね。何あれ?そんな繋がりあるの?何したいの?」
無邪気に笑いながらも、目が笑っていない。
下手な事は言えない。
カレンの感情が、好意あるものか悪意あるものか、分からない。元々この方々が本当に偶然この国に来たのかも分からない。
「・・・それは・・・派閥があると言ったでしょ?公爵と言う立場が嫌いな人が多いのよ」
「派閥ねえ。どこの国にもあるけど、今回は・・・」
ちらりとフィーを確認するかの様に見たカレンは
「当たり前だ!どこまでふざけてるんだ!!」
「・・・フ、フィー?」
急に声を荒らげたフィーが、見たことも無い怒りにの表情に驚いた。
これまでいつもカレンの言葉に頷き同意だけを口にし、あまり、前に出る事がなかったのに、まるで我慢の限界を超えた様な顔だった。
「スティングは自分の感情を勘違いしているんだ!あの王子を好きなのは知っている。だが、人の本心と感情は違うんだ!スティング前に言ったよな。好きなように生きた方がいい、と。それが本心だ!だが、感情は、己の地位や立場に左右される。スティング、王子を好きなのは、本心か!?それとも感情なのか!?」
突き刺すように私の心を抉ってきた。
本心?
感情?
私は・・・殿下を・・・?
本心で愛しているの・・・?
フィーの言葉に私は、
何も返せなかった。
もうすぐ殿下の誕生日パーティーが催される。
今度こそ私をエスコートしてくれる筈だ。
陛下も、
お父様も、
公爵様達も、
私も、
その意味を伝えた。
大丈夫
私は、
殿下を愛している。
殿下も、
私を愛してくれている。
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