第22話あなたがお茶をしたい、と言ってくれたら良かったのに

「スティング、殿。その、母上がお茶でもどうだ、と言っている。今日一緒に帰るぞ」

授業がが終わり、殿下が背後にいるお2人を気にしながらも、命令口調で声をかけてきた。

廊下を見るとレインの姿はない、という事は本当に2人で行くのか。

王妃様が動き出したのね。

コリュ様とドレシャス様が上手く騙せなかった事と、クレス様のお茶会を聞いたのだろう。

どれだけ私がこの2人と親密かを確かめるためと、どうにかお2人を引き入れる策を講じたいのだろう。

見え見えの魂胆に笑が出そうだった。

「申し訳ありません。既にフィー皇子様とカレン皇女様と帰る約束をしておりますので、御一緒出来まません」

「・・・は?」

真っ直ぐに殿下を見つめ、そのまま軽く頭を下げ頭をあげると、私の答えに酷く驚き、睨んできた。

殿下の驚きも分かりながら、自分のがとても冷静に答えれたのにも驚いた。

これまで1度として、殿下の誘いを断った事はない。

何があっても優先し、喜んで返事をしていた。

それを殿下も知っているからこそ、まさか断られると思っていなかったようで、睨んできた。

ましてや王妃様、と言う名を出しているにも関わらず、なのだから、心中穏やかでは無いだろう。

「あ、いや、そうか・・・。では明日はどうなんだ?」

こんな取り繕うような言い方初めて聞いた。

「申し訳ありません、明日も約束をしております」

「は?では明後日にするからな!」

あからさまに今度は脅すように言ってきた。

「申し訳ありません、明後日も、と言うよりもこれから先も、約束をしております」

「なんだって!?」

普段なら、私を思い通りに動かしてきた殿下にとって、屈辱だろう。

顔を真っ赤にさせ、さすがにお2人を睨む事も、そして、お2人に、文句言う訳にもいかず、悔しそうに無言で踵を返した。

「あ、あの殿下、王妃様とはまた、時間を見てお茶をさせて頂きます。今日はお2人では如何でしょうか?」

殿下の後ろ姿につい、言葉がでてしまった。

振り向いた殿下の顔に、

気持ちが沈んだ。

「母上がお茶をしたいと言っていた、と私は言っただろ?どこから私と2人で等と言う下らん話しが出てくるのだ」

苛立たと言うよりも、悲しい程に興味のない突き放した言い方だった。

「・・・そうでございますね。では、また日を改めて、とお伝え下さい」

「分かった」

迷いもなく背を向け、歩いていった。

馬鹿ね。

自分から、断っておいて、何を期待したの?

嘘でもいいから、そうだな、と言ってくれたら、例え王妃様と結局お茶会となったとしても我慢出来た。

ほら、そんな事を考えしまう事自体が無意味なのよ?

殿下の背中を見つめながら、そう思う自分の気持ちが胸に重くのしかかり、息苦しさえも感じた。

「スティング帰ろう。良く、頑張ったわ」

「この間の喫茶店に行かないか?美味しそうなケーキが他にもあっただろ?」

「・・・そうだね」

私が距離を置く、と言った事に対して、元気づけようとしてくれる気持ちがよく分かり笑うことが出来た。

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