第14話王宮でのお茶会ホールにて1
「王妃様がお部屋でお待ちでございます」
「分かりました」
不安そうに私を見る、テスターに微笑んだ。
「心配しないで、いつものように流すから大丈夫よ。それよりもあんまり私に話しかけちゃ駄目よ」
微笑む私により辛そうに顔を歪め、頭を下げ去っていった。
テスターは公爵派の1人で、王妃の側にいる数人の1人だ。上手く王妃に寄り添い、情報を流してくれている。
勿論、それを知られれてはいけないのに、とても心配性の性格で、話しかけてくる。
「クルリ、行きましょう」
「はい、お嬢様」
いつものように無理に微笑みを張りつけ返事をしてくれた。
すっと背筋を伸ばし、階段を上がった。
今日は定例の殿下とのお茶会だ。
不思議だ。
毎週楽しみにこの王宮の階段を登り、今日は何を話そう、と色々考えて足を踏み出していた。
どの内容なら殿下は喜ぶだろう。
どの内容なら殿下は私を見てくれるだろう。
どの内容なら殿下は笑ってくれるだろう。
そう、いつも思考を張り巡らし、この階段を登っていたのに、今日は気分がのらない。
何一つ考えられない。
それよりも、明日のお2人が遊びに来る事ばかりが気になっていた。
正直、自分に狼狽えていた。
お2人と友達になってから、とても楽しくて、殿下に気が回らなくなっていた。
こんな事初めてでどうしていいのか分からなくいながらも、お2人の、
スティング、
と呼んでくれる声に、安心を感じていた。
「邪魔、です」
その悪意ある言い方にはっとした。
「何ですか?ぼーとして頭悪そうなのに、今日はもっと頭悪そうな顔してますよ」
「申し訳ありません。掃除の邪魔ですね、退けます」
私の前で王宮で働くメイド、リットが鼻で笑った。
すっと、横に退けると同じように動き私の前に立ち、大袈裟に箒を動かした。
「はあ。そんなに私に嫌がらせしたいのですかあ?退けてくれると言ってましたよね?何で私の前に来るんですか?」
それはあなたがワザとそう動いているからでしょう?
でも、そんな事もう言えない。
「申し訳ありません。王宮の掃除は大切ですものね」
微笑みそう答え、ホールの端まで歩いた。
ここなら邪魔にならない。
どん!
違うメイドがぶつかって来た。
「あ、ごめん。見えなかったわ、公爵令嬢様」
「いいえ、お仕事の邪魔して申し訳ありませんね、スタン」
「謝らないでくださいよ。また、あなたの被害妄想で疑われたら困りますからね」
「・・・そうね。では、失礼します」
一礼し微笑みその場を離れた。
「ちっ、それだけ?もっと、倒れる程当たっておけば良かった」
背後から聞こえる声を背に、より脚を速くした。
「クルリ、我慢しなさい」
私の後ろに控え、沈黙を守ってくれる、優しいメイドに声をかけた。
「・・・でも!!」
「あなたの気持ちは分かっているわ。・・・ごめんね・・・私が殿下を好きだから・・・」
「違います!あの人達はおかしいんです!!」
吐き捨てる言葉に、とても申し訳なかった。
王宮での王妃に側の召使いの私に対する態度は、明らかに目に余るものがあった。
忘れもしない、小等部に入って婚約が決まり、週末お茶をすると決まった、初めての日に始まった。
あの頃の殿下は私に優しく、気を使って下さっていた。でも、側を離れたすぐに、召使いの1人が私に罵倒を浴びせてきた。
あまりに驚き、泣きながらすぐに帰った。
お父様が抗議したが、帰ってきた言葉が、
公爵令嬢が平民をわざと貶めた、
という、逆に抗議の文書だった。
私が帰ったあと、その召使いが私から酷い叱責と暴力を受けたと訴え、それが通ったのだ。
公爵派は王妃が手を回したのだ、とはっきりは言わないがまた抗議したが、結局証拠がなく、私の被害妄想だったと片付けられた。
そこから私の言葉は全て受け入れなくなり、王妃側のいいように受け止められるようになった。
お父様が心配して警護の為、クルリ以外をつけると、
王宮の警護が公爵でありながら不安なのか?それは、王宮でありながら手薄な警護だと言っているのか?
と、文句をつけられた。
でも、公爵派は角を立てず大人しくしてくれた。
私が殿下を愛していたからだ。
何時でも私の気持ちを尊重し、前を見据え、まだ大きく動きはしない。
大丈夫。殿下は私を昔と同じように愛してくれているわ。
呟く思いが、癖、だと気づき、違う、と振り払った。
大丈夫よ。
殿下は私を、
愛してくれているわ。
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