幸せな時間は壊される
ノーチェ!ラビ!そう名を呼ぶと物事がわかっているかのようにニッコリ笑う二人。可愛すぎる!
「こいつら、わかってるよなぁ?もうこっちの言ってることわかってるってすごくないか!?天才だろ!」
ニマニマした笑いが止まらないリヴィオ。私の予想を超えてくる親バカぶりを発揮している彼で、双子ちゃんのために『双子用のベビーカーを作ってくれ!』とトトとテテに頼んだり、馴染みの帽子店に行っても『双子用の帽子を作ってくれ』と特注したりしている。
あのリヴィオがねぇ……とジーニーすら少し引いている。
親バカねと苦笑しつつも、ピクニックシートを敷いて座り、温かな日差しの中、4人でこうしていられることは奇跡なんじゃないかなと思う。少女時代の寂しい気持ちは今もどこかにあって、またいつか失うかもしれないって臆病な自分がいる。
ノーチェのほっぺをつついて笑うリヴィオを見ると、臆病な気持ちも不安も忘れて、幸せだけを感じていれる気がした。
「なにか飲み物飲む?食べ物や飲み物をコック長がいろいろ用意してくれ………リヴィオ?どうしたの?」
ピタリとリヴィオの金色の目が私の背後を見つめ、睨みつける。そして低い声で言った。
「セイラ、動くなよ」
バッと私とノーチェ、ラビをかばうように上から覆い被さり、片手で抑える。その瞬間、ドンッという爆発音が起こる。周囲の木々がなぎ倒され、地面はえぐれる。轟音が響く。
キャア!という悲鳴を飲み込む。ノーチェとラビを抱きかかえて守る。
「狙いはオレだろう。セイラ、屋敷に向かって走れ!」
リヴィオの金の目が強く光る。
「リヴィオ!でも……」
「躊躇うな!セイラは子どもを守れ!行け!」
私が一瞬振り返ると長い銀髪をなびかせたミラが無表情で立っていた。声をかけたい。でも今は子供たちを安全な所へ!
フッと目の前が暗くなる。セイラ!という声が聞こえた。視界が揺らぐ。ゆらゆらと……。
気づけば、暗い硬質の部屋にいた。目眩がして冷たい床に膝をつく。二人の子どもを両方に抱えたまま、どこかへ転移させられたようだ。
「ここ……は……?」
「天空の地」
ミラの声で答えるが、温かみがない無機質な声音。
「なぜ私を連れてきたの?」
すでに黒龍の紋章も力もないのに、なぜ?
「おまえがいるだけで、ここに神々が集ってくる」
「囮なのね……」
「餌だ」
そう冷たく言ったかと思うと、扉を閉めて出ていった。灯りもなにもない暗い部屋は嫌なことを思い出させる。
ふぇ……とノーチェが泣き声のような声をあげる。ラビはジッと私の顔をみている。大人しくしている二人には感謝だった。リヴィオのいうとおり、この状況が分かっているかのような二人。
そうだ。私は一人ではない。ノーチェとラビがいるからしっかりしなきゃと思える。
でも……。
「リヴィオ早く来て……」
不安で怖かった。私、一人で守れるの?暗闇に私の心が砕かれそうになるのをグッと堪える。二人を抱きかかえたまま、部屋の隅でじっと助けを待つ。何もできない自分が悔しい。弱い自分が悔しい。
でも私は今、こうして待つことしかできないのかしら?本当にこれしかできないの?暗闇の中で私は顔を上げ、そしてノーチェとラビをもう一度見たのだった。
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