この世界は誰のもの

「リヴィオ!大丈夫なの?」


 帰ってきた彼は顔面蒼白だった。キサが横に付き添って帰ってきた。私とノーチェ、ラビの姿を見るとホッとしたように少し笑って、心配ないと言った。


「白銀の狼が来てくれたのか……悪いな」


 白銀の狼は寝そべっていたが、ユラリと立ち上がる。


「黒龍の守護者よ。無事でなによりだ。光の鳥と黒龍をしばし起こそうと思う」


「ああ……オレも黒龍に話がある」


 リヴィオがそう言うと私を見た。


「オレとセイラで2つに分けた黒龍の力をオレだけにする」


「そ、それって……リヴィオ……それをすると……」


 私の声が震える。リヴィオは金色の目を細めて言う。私に反論は許さないという強い視線。


「セイラは守護者からはずれろ」


「私……その意味さすがにわかるわよ!?リヴィオだけ危険に晒すってことよね!?」


 何者かにその身を奪われたミラは黒龍の守護者を狙っていた。私ではなく黒龍の気配を探していた。黒龍の力が一つになればリヴィオだけが狙われることになる。


「今のおまえには無理だろ!?」


 珍しく私に怒鳴るリヴィオに焦りを感じる。


「リヴィオ……落ち着け……」


 ジーニーがそう言うが、リヴィオは止まらなかった。


「ここに帰ってくるまで、怖くてたまらなかった!もし3人がいなくなっていたと思ったら………セイラは今、ノーチェとラビを守れる状態か!?以前とは違うんだぞ!」


「リヴィオは1人で戦うつもりなんでしょ!?そんなことさせられないわよ!私だけそんなの……」


「何を優先するか考えろよ!今はオレじゃないだろ!?」


「私はリヴィオもノーチェもラビも守りたいわよ!」


「そんなこと無理だってわかってるだろう?守護者はオレ1人で十分だ!」


 リヴィオと私は珍しく言い争う。ジーニーが止めに入る。


「リヴィオ!言い過ぎだ!セイラもだ!」


 ジーニーの声にはっ!と我にかえるリヴィオ。キサにも落ち着けと言われている。私はノーチェとラビのじっと私を見る視線を感じる。同時にヨイチとアサヒが声をあげた。


「セイラさん……僕ら、日本に帰るかどうか……まだわからないけど、ノーチェとラビを守ってくれると嬉しい。リヴィオのことは僕らが守るから!」


「まだ帰りたくないけど!リヴィオのことは任せろ!」


 なんでお前らに守ってもらわないとダメなんだー!とリヴィオが双子の少年に言う……私は何も言えない。


「………ちょっと気になっていたんだが、この……アサヒとヨイチっていう子達はまさか……」


 ジーニーがアサヒとヨイチの日本という単語に反応したらしい。リヴィオがめんどくさそうに手を振る。


「ややこしくなるから、ジーニー、後から説明する!」


 わかったよとジーニーは引き下がった。


 私はリヴィオと子供らどちらかを選べと言われているような気がして、どうしても選べなくて、不覚にも涙が出てくる。


「ごめんね。選べないの。私はどっちも大事だものリヴィオもノーチェもラビも……」


 リヴィオが複雑な顔をして横を向いて、ごめんと謝った。リヴィオがすごく私と子どもたちのことを心配してくれてるのがわかるの。だけど選べない。


 黙っていたキサが言った。ノーチェとラビにプレゼントだと渡した銀の護符を『少しの間、貸してくれ』と一言告げてから外して、リヴィオとアサヒに放り投げた。


「それを1枚ずつ持っていてくれ。ミラが現れたら教えてくれないか?すぐ駆けつける。刺し違えても……決着はオレがつける。他の誰でもなく。白銀の狼、その前に話を聞かせてくれ。以前の記憶があるからなんとなく理解をしている部分もあるが……ルノールの民とこの地に住まう三つの神の民の話を聞きたい」


 承知したと重々しく白銀の狼は答えたのだった。

 

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