対となる者たち

「これがノーチェとラビ?」


 少し落ち着くと、私の腕の中にいた赤ちゃん達に気づくアサヒとヨイチ。先程の騒動に泣きもせず、むしろジッと大人しくしていた二人がすごい。空気を読んでいたのかしら?……私、親バカかしら?


「そうよ。アサヒとヨイチ、はじめましてね」


 私は見せようとし、ヨイチは覗きこみアサヒが手で触れようとした。


 いきなり少年達はバッと飛び退いた。怖いものでも見たかのように。


「この双子はっ!アサヒ!触るな!」


「あ、あぶねーーーーっ!!」


 ヨイチがアサヒの手を払う。アサヒは叫ぶ。


「えっ!?どうしたのよ!?」


 なにか変だったかしら……交互に私はアサヒとヨイチ、ノーチェとラビを見る。


「それは僕たちだ!」


 ヨイチの声に固まる私。


「はい?えっ!?僕…たち?……ノーチェは……ラビは……」


「ノーチェがヨイチ。ラビがアサヒって感じで合ってるかな?」


「あ、合ってると思う!」

 

 アサヒがヨイチの予想に同意した。フルフルと震える指先で指差す双子の少年。


「ヨイチ、帰るとき、今じゃねーよな!?今は無理だろ!?ってか、帰りたいのか!?」


「そんなこと聞かれてもわかんないよっ!」


 混乱している二人。私も混乱している。深呼吸一つする。


「確かに……今、思えば、私、あなた達を見た時に懐かしく感じたわ。そしてヨイチとアサヒが日本にいた時の夢も見た……その夢ってもしかして、私が見たわけではなくて……」


 思わず、私の腕のなかでマッタリと過ごす双子の゙赤ちゃんをマジマジと見た。


「セイラさんにどこか懐かしさを感じていた……それがまさかこんな形だったなんて……」


「ノーチェとラビが産まれて……僕らの役目はこの世界で終えたのか……もしかして?」

 

 この世界がいらないと言っている?とアサヒとヨイチは少しショックを受けた顔をしている。


「そんなことはなかろう。その幼きものたちが、次期白銀の狼の守護者とヨイチとアサヒがいなくなれば適合する。しかし役目を果たすにはまだ幼すぎる」  


 ワンタロー……白銀の狼が口を挟んだ。


「しばらく帰るかどうかの考える猶予は与えられているってことか?」


「困ったことに……守りたいけど、セイラさんには近寄れない」


 ヨイチとアサヒは日本へ元の場所へ帰る切符を手に入れた。しかし二人は顔を見合わせて困った顔をしているのだった。


「話を変えて悪いが、とりあえず、向こうでなにがあったか、話してくれ。ミラはどうした!?リヴィオとキサはどうなってる!?」


 治癒を終えてジーニーが動揺している二人に言う。ハッ!と私も我に返った。あのリヴィオが帰れないほどの怪我を負ったということなの?


「リヴィオの怪我は治癒してきたから心配しなくても大丈夫だよ。しばらくしたら動けるだろう。キサさんも無事だけど………ミラさんが石の中に眠っていた人のようなものに取り込まれてしまって……」


 ヨイチが説明をしてくれる。私はそんな……と震える声しか出なかった。


 さっきのミラは何者かに体や意識を奪われてしまった彼女だった……明らかに雰囲気が別人だった。


 暗い雰囲気になってしまったこの場で白銀の狼が口を開く。


「我らとの因果があの者にある。話そう。黒龍と光の鳥もいっときならば起きれるだろう」


 そう静かに告げたのだった。

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