【工房のお昼ご飯はいつになる!?】

 その日、トトとテテの工房は忙しかった。


「おーい!トト、テテー。街の中のからくり時計の調子悪いんだが?」


「銭湯の自動販売機、ちょっとみてくれないか?」


 トトがからくり時計を見に、テテは自動販売機へと手分けして走る。


 弟子をとれと言われているが、二人はどうしてもそんな気になれない。二人でいるほうが気楽だし、他人を入れると発明に集中できないからだ。


『お昼は温かいラーメンにするのだ!』

 

 リヴィオが苦心、再現して作ったインスタントの味噌ラーメンとやらは、二人のお気に入りとなっている。お昼にひさしぶりに食べたくて、リヴィオからもらってきたのだが……。


「やれやれ、やっと帰ってきたのだ。テテはまだなのだ?先にお湯を沸かしておくのだ」


 トトがお昼ご飯を食べようとすると、またドアのベルが鳴った。かわいらしい子どもが泣きべそをかいて立っている。


「どうしたのだ!?」


「僕の馬の玩具が壊れちゃったんだー!直せないかな?」


「大事なものなのだ?」


「誕生日に買ってもらったんだもの」


 それは直してやりたいのだとトトは工具箱を持ってきて、分解し、壊れた部品の代わりになるものを削ったり嵌めこんだりした。無事に馬が動いて、床の上をパカパカと歩くと、子どもがありがとう!とお礼を言って満面の笑顔で帰っていく。


「あああああ!?お湯が!!……あやうく火事になってテテに怒られるところだったのだ」


 鍋に沸かしたお湯は蒸発してなくなり、火にあぶられて熱々の鍋だけがあった。証拠を隠そうとトトは水で冷やしておく。


「ただいまなのだー。お昼ご飯食べるのだー!」


「テテ、今、お湯を沸かすのだ!」


 再び、火にかけようとすると、玄関のベルが鳴る。嫌な予感がするのだ。


「トトー!テテー!いるか?自転車のメンテナンスをしてほしい。なんかサイクリングしてる客から変な音がするって言われるんだよ」


『油をさしておけばいいのだ!』


 我らの昼食を邪魔するな!なのだ!と油だけ渡そうとすると、困ったように『どこに?』と聞かれた。……説明するのも時間がかかるので、二人でさっさと油をさそう!と走り出す。


 無事に自転車は滑らかに走るようなった。


「さて、ラーメンを作るのだ!」


 バーンと扉が無遠慮に開いた。


「うちの奥さんが怒ってるうううう!冷蔵庫が壊れて、中身が腐る!助けてええええ」


 フリッツである。奥さんには滅法弱いと聞いている。仕方ないのだとトトが行こうとする。テテも二人の方が早いと言って、二人で修理をしに行く。なんでも中に物をいれすぎなのだ。冷蔵庫の中身はパンパンだった。


 ありがとうと感謝されて、やっとやっとラーメンにたどりついた。ドアの前にセイラがいた……まさか!?とトトとテテは顔を見合わせる。


「二人とも、お疲れ様。仕事だった?」


『……そうなのだ』


 腹ペコで元気の無い声になった。


「これ、食べて。差し入れよ」


『セイラあああああああ!!!!』


 我らはバスケットを差し出すセイラに抱きついたのだった。


 時々、セイラはこうやって食べ物の差し入れにきてくれるのだった。発明に没頭すると何も食べず、眠らず、風呂にも入らないため、体に悪いわよと見にくるのだった。


 ついでにラーメンを手慣れた感じで作っていってくれた。そのおいしかったことといったら!やっとありつけた昼食を食べ、満足し、トトとテテは顔を見合わせてにんまりしたのだった。

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