力の鏡の迷宮
「鏡の迷宮とか悪趣味だなー。エスマブル学園には変人しかいないんじゃねーの?」
オレがそう言うと、ジーニーが肩をすくめる。
「リヴィオ、それを言うとエスマブル学園の卒業生である僕らも含められるけどね。迷路を抜けるときは、こうやって、右手をついて、沿って歩いていけば簡単に抜けれ………」
「おい。ただの迷宮じゃないらしいな」
ジーニーが迷路の攻略法を言い終える前に、鏡の中から自分にそっくりな人影がゆらりと現れた。幻影ではなく、実体を持ってるらしい。さすが賢者が作った迷宮だ。オレと似ているもう一人の人間は手に剣を持っている。
「リヴィオ!気をつけろよ!こっちもだ!」
ハッとジーニーの方を見るとジーニーとうり二つの人物がいた。
「へぇ……これは、なんだか面白そうな予感がするな」
オレも剣を抜いて構える。ジーニーと背中合わせになり、背後をとられないようにする。相手を見据える。オレのそっくりな人間は地面を蹴る。キンッという金属音をさせ、刃を受け止めた。
「気をつけろ!」
もう一人のジーニーは手に風魔法を纏わせた。ヒュンと音がして空気を切り裂く。同じ魔法を素早くジーニーが紡いでぶつけて、相殺させる。そして反撃の魔法陣を描く。手をつくと、パリパリッと音を立てて、氷の塊に人形が閉じ込められていく。……が、ジーニーの足元からも氷の塊が上がってきて、地面に繋ぎ止められた。同じ術を返された!
「ジーニー!大丈夫か!?」
「こっちは大丈夫だ!リヴィオ、そっちも集中しろよ」
オレの方も、もう一人のオレからの鋭く素早い斬撃を受けている。剣さばきがオレとそっくりだ。グッと押し込んで弾く。間合いを互いにとる。
「強い……いや、これほしいな。良い戦闘訓練になるなー」
「そんな戦闘バカなことを言ってる場合じゃないな。自分で言うのもなんだけど、僕らは強すぎる」
ジーニーが紡いだ魔法を両手を合わせて、氷の術を解呪するジーニーの人形。オレの人形は剣に炎を付与した。魔法剣にしている……まるっきりオレの力をコピーしてるのか?ちょっとめんどくさいな。
攻撃しては相殺されてというジリジリとした時間が流れる。
その頃、モニターを見ていた賢者とその他弟子、セイラは……というと、賢者ブリジットが高笑いして勝利を確信しようとしていたが、弟子の1人が遠慮気味に言った。
「この二人はヤバいですよ?同世代の卒業生なんですが、そこのセイラさんを含め、天才と呼ばれてました。ブリジット様、何年もかけて作った迷宮が破壊さ……」
全てを言い終わる前に、始まってしまった。
「おい!ジーニー久しぶりに全力で行こうぜ。そろそろめんどくさくなってきた。壊しても文句言われないって素晴らしいよな?」
「そうだね。……けっきょく僕らは力押しになるなぁ」
オレはジーニーの返事に、ニヤリと好戦的に笑う。気持ちが高揚してくる
「学園長様の許可はもらったぞ!」
「もらわなくてもするだろ?」
ジーニーと共に、互いの魔力の解放をする準備をした。魔力が光となり、包み込む淡い白い光。圧倒的な魔力の前では偽物の鏡のもう一人の自分など玩具の人形に等しい。近づけず、弾き飛ばされている。
ドンッという爆発音。ザアアアアアッと粉々に砕け散る鏡という鏡。すべての鏡が光が放たれたと同時に粉々になった。
人形もフッと姿が消えた。広範囲にあった魔法の鏡は全てなくなる。トトとテテがゴールだろうか?小さい点でようやく見え、手を振っている。
「きれいに更地になったけど、どれほどの土地面積を研究に使ってるんだ!?これ、誰が許可したんだろうか?父か?もっと良い活用できると思うんだが……」
エスマブル学園の学園長たるジーニーはそう粉々の砂のようになった鏡を蹴って言う。
「手っ取り早くゴールできたなぁ。おーい!トトー!テテー!」
オレはトトとテテに手を振って、呼ぶ。
モニター前にいた賢者がキャアアアアア!と悲鳴をあげて、ありえない!迷宮の制作時間を返して!と大騒ぎしていたことは知らないオレたちだった。
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