心の鏡の迷宮
「ずっと自分の姿を見ながら歩くなんて気持ち悪いのだ」
「双子が四つ子になったりしてるのだー」
まだ二人には冗談をとばす余裕がある。
突然、声が迷宮の中に反響する。
『トトはいつもずるいのだ』
トトがテテに今のは、なんなのだ!?と振り返って睨む。テテは何も言ってないのだ!と首を傾げる。
『テテは掃除当番なのに、さぼったのだ!いつもこうなのだ!』
テテが、今のはなんなのだ!?とトトに問う。トトもまた首を横に振る。
『我の方が発明の才能があると思うのだ』
『さっさと家に帰ればいいのに、なんで一緒にいるのだ』
トトとテテは顔を見合わせる。
「声が反響しているのだ。我らは何も話してはいないのだ」
「心の声が出ているのだ!?」
それも嫌な気持ちにさせる声が、どんどん大きくなっていき、二人を囲むように悪口が出てくる。
『テテの方が1cm身長が高いのだ』
「……これは心底どうでも良い話なのだ」
『トトの方が今月は太っていたのだ』
「……黙るのだ!」
二人はイライラとしてくる。お互いの顔を見て、プイッとそっぽを向きだす。そんな姿が球体のモニターに映し出された。
「あの絆が深い双子でもこーんなつまらない言葉に惑わされるなんてねぇ。アタシの塔にほしいと思ったけど、たいしたことないね」
そう賢者ブリジットは言う。
「トトとテテはもともと喧嘩は多いの。喧嘩だけが不安要素だけど……双子ちゃんを甘くみない方が良いわよ。絆は確かに深いわ」
セイラがモニターを見つめる。そこには喧嘩寸前のトトとテテしか見えない。
『おまえなんかどっかいっちゃえばいいのだー!』
そう叫んだ声がした時だった。
「トト、ほんとにそう思っているのだ?」
「テテも我のことをほんとにそう思っているのだ?」
二人が互いそう言うと、フッと笑う。
『そんなわけないのだー!!』
アハハハと楽しそうなトトとテテの笑い声が響きだす。
「こんなうるさくて嘘の声を出すものは邪魔なのだ!破壊なのだ!」
「我らの心は我らが一番よく知っているのだー!」
懐から工具箱が出てきて、パーツとパーツが素早く組み立てられた。きゅいーんとからくり人形が飛び出す。空中を舞う。
「声の発生源の鏡を割るのだー!!」
「ゆくのだ!からくり人形!!」
青白い光の鏡の中に一枚だけあった紫色に光る鏡が、からくり人形のビュンっという風を切る音のパンチとともにガシャンっと割れた。
静けさが戻る。そしてトトとテテの迷宮の道が開く。道はまっすぐになり、ゴールを示す。二人は簡単にゴールした。
「楽勝なのだ!」
「我らの勝ちなのだーっ!」
ガッツポーズをする双子ちゃん。
『我らの心は我ら自身が一番よく知っているのだーーっ!』
そう空に向かって言い放った。
モニターの前ではがっくりとうなだれているブリジットがいた。
「それでこそ、フォスター家の天才発明家だけど、早い。早すぎる。この心の鏡の迷宮を作るのにどれだけ時間をかけたと思う!?まったく楽しめなかったじゃないかいっ!」
セイラがフフッと笑って言った。
「天才の心を測ることはできないわ」
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