知識の塔の女賢者
三賢者の二人目に会う。少し私は緊張する。
「よく来てくれたわねっ!アタシの塔へようこそ!」
バァン!と扉が壊れそうな勢いで、開いた。場が一瞬静まり返った。人を服装や見た目で判断するべきではないと思う。しかし、目の前にいるのは……。
派手な孔雀の羽根を帽子につけ、サーカスのピエロの様な服を着たお年を召した元気な女性だった。
「トト〜!テテ〜!とうとうアタシの塔にくることにしたのかい?」
『してないのだ!』
ジーニーの後ろにバッと隠れる双子ちゃん。ジーニーが苦笑する。
「賢者ブリジット、トトとテテの頼んだ案件はどうかな?」
派手な格好の老婆は腕を組む。冷静に尋ねるジーニーにつまらなさそうな顔をした。
「父親に似ず、真面目な男に育ったわねー。つまらない!すぐに答えをあげると思ってるのかい?迷宮に入って、抜けれたらあげるよ!」
「迷宮?」
私が興味を示すとリヴィオがバッと私の耳を塞ぐ。
「セイラに興味をもたせんな!」
「もちろんセイラは留守番だろう」
ジーニーとリヴィオが勝手に決めてる……。え!?一言聞き返しただけなのに!?
「誰が入っても良いが、アタシを楽しませておくれ!そうじゃないと、こっちだって時間を割いて調べてるんだから、楽しみの1つや2つほしいよ」
「オレが行く!セイラはこの変なばーさんと待ってろ!」
「だれが変なばーさんだいっ!」
リヴィオの正直な見た目の感想に怒る賢者ブリジット。
「もちろん我らもいくのだ!」
「セイラは体を大事にするのだ」
「ありがとう……でもつまらないわ」
行動に制限があるって、ホントに退屈なことだけど、今は仕方ない。大人しくしていよう。
「僕も行こう。賢者ブリジットを楽しませてやろうじゃないか」
「ジーニーもか?定員オーバーだろ」
「リヴィオ、久しぶりに一緒に戦うのも悪くないだろう」
リヴィオとジーニーが顔を見合わせた。そうだなとニヤッとリヴィオが笑った。……嫌な予感しかしない。フッと脳裏に学生時代の二人の姿が浮かんだ。
「アタシの迷宮を抜け出せたら、あんたらの勝ち!ギブアップしたら負け!わかったね?」
「負けたら……」
そう聞く私に賢者ブリジットはフンと鼻を鳴らした。
「抜け出せすこともできないやつに知識をあげることはしたくないね。知識はタダではないんだよっ!」
努力と汗と涙の結晶なんだよと言われる。確かにその通りではある。
トトとテテ、ジーニーとリヴィオは二組に分かれて迷宮と呼ばれるところへ、弟子の1人が案内役となり、行ってしまった。
賢者ブリジットは塔に住む弟子たちを全員呼ぶ。
「さあ!一緒に迷宮でさまようアリ達を見ようじゃないかい!?」
「ブリジット様の悪い癖がまた出てきたんですか?」
「ううっ……こんなことより睡眠時間くださいよ」
「楽しいのはブリジット様だけじゃないですかね」
「あー、客人ですか?巻き込まれて大変ですねー」
……散々なことを塔の弟子たちに言われている。モニター代わりのいくつもの球体が光、迷宮内を映し出す。
確かにここまでの装置を用意するなんて暇人なの?いやいや……まさか、これがメインの研究なの?
「鏡の迷宮?」
場所が球体に映し出された。ズラッと並ぶ自分の姿を映し出す鏡が壁となり、青白い光を放ち、硬質的な美しさがある。
「さあ!ごちゃごちゃ言ってる奴らはともかく!楽しい時間の始まりだよーっ!」
帽子の孔雀の羽根を揺らしてアッハッハ!と笑う。私に隣に来るように手招きして呼び、座らせる。
そういえば、賢者の住まう知識の塔は三つある。もう一つの塔の賢者も変人なのかしら……変人のような気がするわ。
迷宮を見ながら、私はそう確信するのだった。
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