双子ちゃんの帰還

 トトとテテが帰ってきた。執務室に久しぶりに私、リヴィオ、ジーニーを含めた五人が揃った。


「誤算があったのだ」


「装置の方は直せる気がするのだ」


 だけど……と二人は続ける。秋に採れたさつま芋で作ったしっとりどっしりとしたパウンドケーキを口に運び、紅茶を飲みながらも、頭から離れないのは装置のことだ。


「転移装置の方のしくみは驚くほど、ウィンディム王国でも使用されているものに近かったのだ」


「そこにあるものと似ているのだ」


 エスマブル学園と執務室を繋いでいる転移装置を指差すトトとテテ。ジーニーが持ってきたやつだ。


「ここのところについている球体が魔力を集めていて………って説明はいらないのだ?」


「マニアックな説明はいらねー」


 リヴィオが断る。テテが、頷く。


「超簡潔に言うと、ここについてる球体が破壊されてて、これを作ることが難しいのだ」


 パラパラとカシュー地方の財政の書類を見て、チェックしながら聞いていたジーニーが、なるほどと言う。


「その球体部分はエスマブル学園の賢者が相談にのれるかもな……父ではない賢者。三賢者のうちの一人で……トトとテテは知ってるんじゃないか?スカウトされてなかったな?」


 双子がガタッと立ち上がる。すごく嫌な顔をしている。……その反応は深紅の魔女である母と遭遇する時以来。


「どんな人なの?」


 私は知らないので、とりあえず尋ねてみる。


「研究が何よりも優先なのだ」


「研究員は寝食をまともにとれなくなるくらい過酷な職場なのだっ!」


 二人がそう言うと、リヴィオが苦笑する。


「いや、それ普段のお前らじゃね?むしろ気があうだろ」


『…………………』


 ジーニーがハハッと笑う。


「会ってみればわかるよ。双子の言ってる意味がね。確かに強烈な人だよ。うちの父とはまた違った感じの賢者だ。……っていうか賢者でまともな人はいない」


 エスマブル学園長は自らが誇る3つの塔に住まう三賢者のことをそう評した。


「とりあえず、面会の手配はしておく。いつになるか……まあ、トトとテテに会えるよと言えば、会ってくれるかな」


 双子がイヤーな顔をした。


「しかたないのだ」


「さっさと完成させたいから、会うのだ」


「その時は私も一緒にいくわよ」


 私がそう言うと、オレも行くからな!とリヴィオが言った瞬間、トト、テテ、ジーニーが一斉にリヴィオの方を向いた。


「リヴィオ、落ち着くのだ」


「セイラに危害はないのだ」


「僕も行くから無理しなくても……仕事が忙しいだろ?」


 だめだ!とリヴィオがムキになる。私はクスクス笑ってしまう。


「リヴィオ……三人にからかわれてるのよ」


 はっ!と三人の真意に気づく。ちょっと顔を赤くなる。


「おーまーえーらーっ!」


 爆笑する双子ちゃんとジーニーに怒るリヴィオ。


「ごめんね。今まで、たくさん心配かけてしまったから、必要以上にリヴィオが私のことを心配するのもわかるのよ」


 私が謝ると、リヴィオがハァとため息をついて、クシャッと自分の前髪を掴む。

 

「大人しくしててくれと言いたい。でも、セイラにそれは無理だろ。それならせめて、オレを傍において欲しい」


 わかったわと私は木に返事をした。


「もう一つ我らに重大な任務ができたのだ」


 トトが言う。私はなに?と聞き返すと双子ちゃんはニンマリ笑う。


「セイラの子に世界一素晴らしい玩具を作るのだ!」


「とっても重大なのだっ!」


 思わず私は顔がほころぶ。 


「ありがとう。トト、テテ……すごくすごく嬉しいわ」


 きっと二人が作る玩具は心が踊るもので、最高だろう。

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