【トトとテテ①】

「フォスター家の双子は甘やかしすぎだ!」


「ちゃんと躾けろ!魔導士にさせろ!」


「変な物ばかり作らせるな!」


 そんな声がいつも家にいると聞こえてきて、飽き飽きしていた。何故、皆はこの楽しい発明品たちに心を動かされないのだろう?


 だけど我らは幸運だった。生まれたときから、この気持ちをわかり合えるもう一人の存在がいたから。


 ある程度の年齢にくると、エスマブル学園に入学することになった。家にいては我らの良いところを潰される!と両親が心配したからだ。『特別扱いするな』と、ブーブー文句を言う兄弟たちは無視されていた。


 当然なのだ!我らは未来の天才発明家なのだ!


 家から出て、自由になったが、学校のカリキュラムはしっかりこなさねばならなかった。めんどくさいが、仕方ない。その代わりエスマブル学園の先生方は理解があった。『発明部』というものを立ち上げて、発明を心ゆくまでしなさいと、言ってくれた。


「また教室を吹き飛ばすなよぉ?双子ちゃーん?」


 ニヤニヤとからかい出すエイデン。将軍の息子というだけのくせにいつも偉そうなのだ。


「毎回、声をかけるなんて暇人なのだ?」


「教室の前にお前を吹き飛ばしてやるのだ」


 ガタッとエイデンが椅子の音をさせて、飛び退いた。いい反応なのだ。


「でも本当に、いつも変なものばーっかり作ってて、変人よね」


「ほんとほんと」


 クラスメイト達がそう言う。やっぱりここでもそうなのだ。我らは異端児。誰にも理解はされないのだ。


 ……と、思って過ごしていた矢先だった。


「またトトとテテか!?こんな変なものを教室において!どかせよ!」


「なんだこれ!?壊してやる!」


「邪魔すぎるわ!」


 その日の教室は暑かった。涼しくなれば良いと思って、巨大な羽根を取り付けた風を起こすものを置いた。


『やめるのだ!』

 

 我らがそう言うのに、手に棒やドライバーを持ってきて壊そうとする。


「……面白そうで、良いじゃない」


 ボソッと言った声は存在感があった。小さい声だったが、その一言にざわめく教室。


「セイラ………バシュレ!!」


 入学してから常に首席で謎めいた雰囲気のいつも読書をしているセイラだった。本を置いて、立ち上がる。


「一生懸命作ったものを壊すなんて、どうかと思うの。私はトトとテテの作ったもの、面白くて好きよ」


「別に邪魔になんてならねーだろ?むしろスイッチいれてみよーぜ」


「リヴィオ、君ってやつは……怖いもの見たさだろう?でも今日は暑いから涼しい風を起こしてもいいかもしれないね」


 廊下から公爵家のリヴィオと学園長の息子のジーニーがやってきて、セイラの意見に同意する。


「さすがなのだ!」


「じゃあ、共犯者ということで、失敗した場合、罰は一緒に受けるのだ」


『えっ!?それはちょっと!?』


 3人の言葉と同時にスイッチが入れられた。


 ゴオオオオオと暴風が起こる。キャー!うわー!誰かー!助けてー!飛ばされるー!と教室は大騒ぎとなった。


 リヴィオがゼーゼー言いつつ、スイッチを止めに行ってくれた。さすが黒猫。身体能力が高いのだー。


「ちょっと、風が強すぎたのだ」


「ちょっと、回転を起こしすぎたのだ」


『ちょっと!?』


 セイラとリヴィオとジーニーがまた声を合わせた。


 その日の罰掃除は5人でしたのだった。

  

 我らはみつけたかもしれない。我らを認めてくれる人たちと居場所を。


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