【カシューの町おこし!】

 リヴィオが言った。


「カシュー地方の寂れた感をどうにかしたい」


 リヴィオを始め、ジーニー、トトとテテ、私の5人が執務室に久しぶりに集結していた。


 カシュー地方はバシュレ家の父が管理していた領地だ。重くかけられた税に領民たちは苦しみ人口は流出、土地は荒れてしまっていた。


「もともとは肥沃な地だから、いい感じに伸びては来てるけどね」


 ジーニーが統計表をパラリとめくって、そう言うが、リヴィオはウーンと腕組みした。


「うまくはいってる。だけどナシュレほどの賑やかさがない。そこで、いい案が無いか聞きたかった」


 トトがハイッと手を挙げる


「からくり人形で働き手を増やすのだ!からくり達の街を作るのだー!」


「こえーな……おい……その発想、ロボット的なやつだな」


「き、近未来ね」


 魔法世界なのにSFにするつもりか!?ここから!?……と、私とリヴィオは顔がひきつる。そういう意味じゃないんだとリヴィオが却下した。


「今、カシューにいる人達、それから出ていった人達を呼び戻し、活気づけたい」


「また新しく美味しいお店を開店するとかどーなのだ?セイラは思い浮かばないのだ?」

  

 テテに尋ねられ、私はそうねぇと考える。


「今、他国にも温泉を広げてて、余裕ないのよね……カシューにも銭湯やアイスクリーム屋さんとかは作ったけど、新規でお店となると、それはそれで……」 


 一日48時間ならなぁと遠い目をする私にリヴィオが働きすぎるなと釘を差してきた。


「カシュー地方は農業の盛んな小麦がよくとれる領地だろう。それを利用してみたらどうかな?なにより王都から近いという利点を使わない手はないだろう」


 ジーニーが提案する。その提案は一番現実的で良かった。今、季節は初冬。始めるのは春からということで、準備をすることにした。


『うまーいっのだー!』


 トトとテテが力をこめて言う。『自家製ピザ作り』を体験してみている。ピザ窯から出したばかりのピザは熱々で、はじっこの生地はカリッとし、チーズはトローリと伸びる。アチアチと言いつつ、二人は美味しそうに食べている。


「これも良いなぁ。僕は気に入ったよ」

  

 ビールを作っている所があったので、整備し、ビール工場にしてみた。工場見学後のビールと地元産の野菜料理を出してくれるレストランにジーニーは幸せそうに飲んで食べている。カシューの地ビールは美味しい。深みのある味わいでありながらも飲みやすく、万人に愛されれること間違いなし。


 リヴィオは『馬レース大会』を開催する!と言った。


「まさかっ!リヴィオ!?だめよ」


 私が止めようとすると、肩をすくめる。


「いやいや、競馬じゃないって!落ち着け!純粋に良い馬を集めて、優勝した人には報奨金をあげるんたが、こういう大会すると、良い馬を作ろうと頑張るだろ!?馬の品評会みたいなものだって!」


「賭け事はだめよ?」


 念を押す。


「オレはしたことない!」

 

 オレは?……まさかね?シンヤ君の顔がちらりと脳裏に浮かぶ。高校生の彼にそんなことはできないだろう。


「セイラー!ここも楽しいのだ!」


「ヒャッホーイなのだーっ!」


 トトとテテがはしゃぐ先にはアスレチック遊具。冬の風が冷たいわ……と私は遊んで体感気温が上がってる二人をみつめていた。


 長い巨大滑り台から降りてきて、着地したかと思ったら、ブランコへ走っていく。子どもは風の子……あ、双子ちゃんは子ども扱いしたら怒るんだった。


「ジーニーの体験型の町おこし案は良いかもね。春が楽しみよ」


「本当だな。おまえ、こういう仕事向いてるんじゃねーの?」


 私とリヴィオの褒め言葉に肩をすくめるジーニー。


「僕のこと、王国トップの学園の学園長って、たまに忘れてないかい?でも自分もできるなら好きな仕事したいよ。次、転生したら好きなことをすることにするよ」


 ハハッと私とリヴィオに、そう冗談めかして言う彼。転生したら……なんだか転生してもジーニーは私とリヴィオの近くにいそうな気がする。そんな予感がした私だった。

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