【狩りに行こうぜ!】

 ヒュンと空を切る音がして木にぶら下がる的の真ん中にダンッと命中した。矢が突き刺さっている。


 リヴィオがヨシッとガッツポーズ。ジーニーが一枚の紙を見ている。


「『ナシュレで食べよう!ジビエ料理イベント開催!』ってこれに参加するのか?」


「ジーニーも参加するだろ?狩りに行こうぜ!」


 リヴィオ、どこぞのゲームのようなセリフを言っている。


「狩りにか……良いね。久しぶりに馬に乗って獲物を追いかけたいね」


「お貴族様!?」


 馬を使い、獲物をねらってくやつ!?思わず驚く私。


「セイラも貴族だろ?なに言いたいんだろうか?」


 ジーニーが首を傾げる。リヴィオがなんとなくセイラの言いたいことはわかると苦笑する。


「私も行っていい!?私、狩りをするのは見たことないのよね」


 興奮する私に、どうぞと二人は笑った。


 当日、ナシュレの猟師達とリヴィオが招いた貴族たちに別れて追うことになった。リヴィオたちは鹿狙い。私は見物客として見に行く。たくさんの人々が集まっている。


 リヴィオがサッと腕を胸の前に持ってくると、バサリと空から降りてきて、腕にとまる鷹。様になっている。カッコいい……私も鳥を操ってみたい。


「じゃあ、行ってくる」


「楽しみだね」


 リヴィオとジーニーは気持ちが高揚している。馬が走り出したそうにカッカッと足踏みしている。


 手綱をグッと持ち、ニッと二人は顔を見合わせて笑った。いくぞ!と掛け声をかけ、足に力を入れ、馬に乗って駆けてゆく。風のように走り、あっという間に行ってしまった。


 貴族の嗜みか。すごいわ。あの二人、たまに超お坊ちゃんってこと忘れちゃうのよね。


「セイラさまー!こっちで炭焼きしませんか?」


「イノシシ肉のシチューも作ってみました!」


 私はこっちかなー。ナシュレの人達がイベント用の美味しいものをテントをいくつも立てて、用意している。


「美味しそう!味見していいの?」


 どうぞ!どうぞ!と気前よく呼んでくれる。私は肉汁が出ている肉を1つ食べてみる。


「どうです!?野生の臭みもうまくとれてるでしょう!?」

 

 私はコクコク頷く。ジュワッと噛むと肉汁が出てきて、野生独特のお肉の味わいがあり、美味しすぎる!美味しすぎて声が出なかった!


「セイラ様!こっちもどうですかー?味付けしたお肉をパンにはさんでみました!」


 色んな屋台の人達が声をかけてくれ、お腹いっぱいになってしまう。満ち足りた気分になっているところに帰ってきたリヴィオとジーニー。


「……おい?狩りを見たかったんじゃ?」


「まあまあ。リヴィオ、こっちのほうがセイラらしいだろ?」

  

 帰ってきた二人は獲物を携えていた。呆れたように言うリヴィオにジーニーがフォローをいれる。


「うわー!さすがですね」


「見事に急所に当てて仕留めてある!」


 リヴィオがフフンと得意げに笑いつつ、腕のガードをパチンッと取り外す。


「セイラ、褒めてやってくれよ。リヴィオ、君に褒められたくてはりきって………」


「ジーニー!余計なことを言うなよっ!」


 怒るリヴィオにアハハハとジーニーが笑って逃げる。


「なんだか、今日は二人共、無邪気ね」


 学園時代の二人を思い出す。


「そうかな?馬に乗るのは久しぶりで、楽しかったからかな」


 ジーニーは良い気分転換になったよと言う。普段、学園長として大変なのだろう。


「あ、そういや、セイラ、これが役に立った」


 ホイッと渡されたのはトランシーバーだった!そうだった!そんなこともあったわね。


「トランシーバーを使いたいって、狩りに使いたかったのね」


「そーそー。ジーニーと追い詰める時にめちゃくちゃ便利だった。狩りをする時はチャット的な意思疎通は大事だな」


「シンヤ君ってもしかして……」


「ゲーム好きだったよ。そこからヒントを得た!」


 やっぱり……と私は呟く。


 リヴィオとジーニーのところへ他の貴族の人達がやってきて、素晴らしい腕前でしたな!二人を褒め称えていた。


 ジーニーの的確な指示が良かったとリヴィオは隣にいる親友を褒めるとジーニーはリヴィオの弓矢の腕前を褒める。


 楽しげに笑うリヴィオとジーニーにちょっと羨ましくなって、次は私も見ているだけではなく、馬に乗って一緒に行ってみたいなと思ったのだった。


 そしてナシュレのジビエ料理イベントでは十分なお肉とお料理で賑わった。

 


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