王立騎士団と王宮魔道士
王立の騎士団と王宮魔道士はエリート中のエリートである。
私とリヴィオとジーニー、騎士団長と王宮魔道士のリリーが騎士団の居住区や王宮魔道士達の居住区などを歩きながら見ていた。
「トトとテテは元気にしてるかしらーっ!?お久しぶりね!」
王宮魔道士の筆頭、フォスター伯爵家の当主のリリー=フォスターはトトとテテの母でもある。『深紅の魔女』という異名があり、魔力も強いと言われている。
「お久しぶりです。相変わらず、トトとテテは発明を楽しんでます。いつも楽しそうな二人から私も元気をもらってます」
深紅の魔女は目に浮かぶのか、ウフフと嬉しそうに笑った。
稽古に励む騎士たちはとぉ!やぁ!と剣や槍などの自分の武器を手に稽古に励んでいる。
「久しぶりに来たな」
リヴィオが1年ほど在籍していた騎士団の雰囲気にしみじみとそう言っている。騎士団長は苦笑して答える。
「リヴィオほど手を焼いた新人は先にも後にもいない」
自覚があるのかないのか聞こえないふりをするリヴィオ。
「リヴィオは騎士団、セイラは王宮魔道士に推薦されていたから、二人共、その道を進んでいくと思っていたんだけどな」
ジーニーは騎士団の稽古風景を見ながら懐かしむように言った。
運命は変わった。お祖父様がいなくなった瞬間に。私はそう思った。
「おー!リヴィオ来てたのか!」
騎士団の先輩のような人が声をかけてきた。リヴィオはああ……と頷いてしばらく数人と世間話をしている。
「なんのかんのと、あいつの周りには人が集まるよな」
ジーニーがそう私に言う。確かに旅館のスタッフ達ともいつの間にか仲良くなって、今では呑み友達のようだし……。
「そうね。無愛想のようで、けっこう優しいし、仲間思いなのよね」
「僕へのセイラの評価も聞いてみたいな」
……一瞬ドキッとしたが、表情に出さないよう気をつける。先日のマリアの一件はしっかり蓋をして鍵をかけ、聞いてないことにしたのだから。
「ジーニーも優しいと思ってるわよ。必要なときに必ず居てくれるもの」
ジーニーが便利屋だなと苦笑した。
「さて、会議室が用意されたようだから、行きましょう!対策会議よ!」
ちょうどいいタイミングで、深紅の魔女が意気揚々と言った。騎士団長もそうですねと同意し、部屋へ向かう。
部屋には王都の地図、師団ごとに分けられた表などが貼られている。
「王都の守護や地方への出動なども含め、すぐに動けるよう配置してみました」
騎士団長が説明をする。ジーニーは顎に手をやり、ジッと地図を見る。
「自分が王都に魔物を放つなら、こうするな」
ペンでシュッと丸をつけていく。リリーが何故?と問う。
「囲んでいき、じわじわ輪を縮め、中心までダメージを与えるには、この配置だ。王宮を狙うならば……干潮の瞬間を狙い、この配置だな」
どっちでくるか?民か王家かどちらにダメージを与えたいのか?
「もし地方というか……ナシュレへの攻撃もあると考えたほうがいいだろうな」
リヴィオがナシュレへの危険を示唆する。地方への攻撃はナシュレが狙われるだろう。
私は暗い気持ちになる。表情で察したらしくリヴィオが声をかけてくる。
「また自分のせいでとか思うなよな。大丈夫だ。オレがなんとかしてやる」
金色の目は常に自信と強さがあり、私の不安を吹き飛ばしてくれる。
「そーよ!この件はセイラさんのせいでは決してないわっ!皆で頑張りましょう!騎士団、王宮魔道士たちに任せなさいよ」
深紅の魔女が腰に手をやり、トトとテテと同じような明るさで言ってくれる。
「この国の民に害をなす者は許しません」
騎士団長はそう力強く言った。
ジーニーは常に冷静で、サラサラと区域分けをしてA地点、B地点………などを書き込んでいた。
「皆で、この地図を覚えておいてくれ。後、王都の混乱は避けたい。だから非常事態でありながらも一種の祭りのようにしたい。恐怖ではなく楽しさの興奮を与える」
「そういう楽しいのなら、私も得意よ!」
私も気分がのってきて、ジーニーに言う。そして案を出していく。
リヴィオはジッと私の様子を眺めていた。それはどんな思いの表情なのか複雑すぎて読めなかった。
帰りにゼキ=バルカンに会った。
「雪解けが始まった頃に航海へ出なければならないんだな。……アイザックは仕掛けて来るだろうね。手を貸せなくて、ごめんよ。残る者達はあまりいないが貸すよ!」
力になりたいが、なれない。航海を中止にはできない。そんな困った様子がわかる。
「心置きなく行って来いよ。こっちは大丈夫だ」
リヴィオが言うとハリトが強がるなよとボソッと言い、なんだとー!とまた喧嘩になっている。飽きない人達だわ……。
「アイザックはシンのことが好きだったんだな……それが変に歪んでしまった。救えるものなら救いたかったが、あいつは変わってしまったのかもしれないな」
ゼキは孤児院にいた頃のことを思い出しているのだろうか。遠い過去を思い出す彼はどこか痛みすら伴うような表情をしている。
「シンと一緒に成り上がっていったあの頃が一番楽しかったな。今を生きていることを実感できたし、必要とされることが嬉しかったよ。アイザックが人を傷つけるなら、あいつが昔のままならば、本当の気持ちは苦しんでいるはずだ。しかし変わってしまっているならば……断ち切ってやってくれないか」
「王都や地方への攻撃をした瞬間に裁く。改心が無理ならアイザックを葬ることを許してくれ」
リヴィオの短い一言にゼキ=バルカンが目を丸くし、そして笑った。
「驚いた。シンも絶対に、そう言うだろうね!……頼むよ。シンと今、一瞬話しているのかと感じたじゃないか!」
ゼキ=バルカンは最初から最後までふざけることなく話をした。
「ゼキ=バルカンさんも航海、気をつけて行ってきてください」
私にありがとうと答えて、ゼキは言った。
黒龍の加護が君たちにあることを願うよ。
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