第34話

 僕は熟睡して寝坊しかけた。

 昨日遅くまで小説の話をしていたのとベッドが気持ちいい。

 このベッドは僕に合っている気がする。


 僕は眠い目を擦りながら学校に着いた。


 教室に入るといきなり女子に話しかける。


「モブ、前髪上げてよ」

「急に何かな?」


「女子よ。モブに用でおじゃるか?」


 3馬鹿の登場で女子が後ろに下がっていった。


 ホームルームが終わり、休み時間になるとガリに呼ばれる。


「教室を出てどうしたんだい?」

「これを見て欲しいでおじゃる」


 僕とユキナがベンチに座っている写真がスマホに映される。


「広まっていたのか」

「心当たりはあるでおじゃるな?」

「同じ高校の女子に昨日撮られたよ」


「食事会の後でおじゃるな。話は分かったでおじゃる。恐らく、モブのメッキがはがれるのは時間の問題でおじゃる」

「そっかー。高校卒業まで1年切っていたのに。今まで完璧だと思っていたけど、ばれる時はあっという間だね」


 あの写真が出回れば、僕の飲食店での手伝いも自転車屋の修理も僕がやっているとばれる。


「策はあるえおじゃるか?」

「あるにはあるけど、モブじゃなくなるから完全な解決にはならないかな」


「うむ、策があるならいいだろう」

「へ、何かあれば協力すんぜ」


「マッチョ、ブタ、ありがとう」


 こうしてその日は何とか無事家に帰った。


 ヒマリはもう家に来ていて、父さん母さんと話をしていた。


「ただいま」

「おかえり」

「おかえりい」

「おあえりなさぃ」


 ヒマリの声だけ小さい。


「聞いたわよ。モブ偽装がバレそうになっているみたいねえ。バレたらもう無駄よお。開き直りなさい」


「シュウ、どう振舞うか考えてはあるのか?」

「一応考えはあるよ」

「ならいい。今日は玉ねぎ剣士を頼む」


「分かったよ」


 玉ねぎ炒めが終わり、リビングに向かうと良い匂いがした。

 四天王が全員揃っており、母さんがユキナの作ったパスタを貰いに来ていた。


「ニンニク多めなのだけど、みんな大丈夫かしら?」


 ヒマリ以外が全員親指を立てた。


「え?え?」

「ごめんなさいねえ。ヒマリちゃんはルームシェアをしていないからこういうのに合わせられないわよねえ」


 そう言って母さんがパスタを持って去って行った。


 皆美味しそうにパスタを食べるけど、ヒマリだけは微妙な顔をしている。


「ヒマリ、ニンニク多めは僕の提案だよ。ユキナのせいじゃない」

「え?違うわ。おいしいわよ」


「ヒマリちゃんはユキナのライバルだよね。ユキナがおいしいパスタを作ったら複雑な気持ちになるの、先生分かるわ」


 そう言ってユヅキがヒマリの頭を撫でた。

 ヒマリは顔を赤くしつつ、僕をちらちら見て食事を続けた。


 メイは元気にミートソースを食べ、きゅうは玉ねぎ抜きのきゅう特性ミートソースを顔で食べ、顔が真っ赤になっていた。


 メイは昨日からミートソースと何度も言っていたので食べるペースが早い。

 すぐに食べ終わって眠くなっているきゅうを抱いてシャワーを浴びに行く。


 そしてすぐ戻って来てきゅうを乾かして眠らせるとまたパスタを食べていた。

 胃が空いた分詰め込む気だ。


  メイは食べながら言う。


「皆早くお風呂に入ろうよ!早くみんなで遊ぼう」

「そうね、私もお風呂に入るわ」


 ユキナがお風呂に入り、ユヅキは洗い物を済ませ、入れ替わるようにお風呂に入る。

 そんな連携の様子をヒマリは見つめていた。


 皆がお風呂に入り、飲み物を飲んで落ち着くとメイが立ち上がる。


「お兄ちゃんの部屋でゲームしようよ」

  

 ヒマリはテレビゲームの事だと思っているのかもしれない。

 でも僕の部屋にはノートパソコンとスマホしかないのだ。

 変な事を考えているのが分かった。

 

 そしてメイはお絵かき用のタブレットを持ってみんなを僕の部屋に入れる。


「こちょこちょゲームだよ!」


 絶対エチエチ同人誌の資料にする気だ。

 そういえば昨日僕とユキナが小説の話をし始めてからメイがヒマリをお泊りに誘っていた。


 メイは楽しく遊ぶ事と同人誌の販売資料、そしてミートソース3つの果実を手に入れる事になる。


 ヒマリが部屋を出ようとするが、ユヅキが僕の部屋の扉を守る。


「逃げたらこちょこちょだよ!」

「ヒマリちゃんアウトね」


 そう言った瞬間にユヅキがヒマリをくすぐる。


「聞いてな、ん、あ!ふう!」


 ユヅキとヒマリの姿にドキドキする。


「お兄ちゃんがベッドに座ってみんながお兄ちゃんを椅子にして座ってお兄ちゃんにこちょこちょされてね」



「それはどうなったら勝ちなのかしら?」

「う~ん」


 メイが考え込んだ。


「時間で決めましょう。どのくらい耐えられたかで決めて、たくさん耐えた方が勝ちはどうかしら?」

「それだよ!でも、ギブアップした時のスイッチが欲しい。クイズの時に鳴らすみたいなの」


「それは無いけど、タッチライトがあっただろ?あれはクイズの時のスイッチに似ている気がする」


 メイはすぐに部屋を出た。

 そして電池式のタッチライトを持って来る。

 デフォルメしたユーフォーのような形をしているタッチライトを付けたり消したりする。


「これにする!これ良いよ!」

「ちょっといい?ユヅキにくすぐられてもうヒマリはゲームオーバーじゃないか?」


「お兄ちゃん、まだ勝負は始まってもいないよ!」

「分かった分かった。最期に1つ。僕はくすぐられなくていいんだよね?」

「大丈夫だよ。私達4人で勝負するから」


「もし10分経ってギブアップしなかったら止めるけどいいかな?」

「いいよ。私からね」


 こうしてこちょこちょ選手権が始まった。




 








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