第24話

 次の日の夜、僕とメイはマダムユキナの部屋に向かった。


「マダムユキナ、お邪魔します」

「マダム姉、お邪魔します」

「きゅう♪」


 僕たちはマダムユキナの部屋でくつろぐ。


 ガチャ


 ユズキがユキナの部屋に入ってきた。


「皆で楽しそうに話をしてる。私も混ざりたいなー」

「今ユキナがマダムっぽいって話をしてたんだ」

「マダムそのものね」


「あ、そうだ!お兄ちゃんとお姉ちゃんに相談があったんだ」

「私は?先生には無いの?」

「クリエイターの話だよ」


「話してみなさい」

「エチエチな電子書籍でお金を稼ぎたいんだー」


 そう言ってメイは親指と人差し指でお金のマークを作る。

 メイがやると不思議な感じがする。


「それでねーどこで売ればいいか調べて、同人誌を書くことにしたの。でも、どう練習すればいいか分からなくて」


「そうね、まず1つの作品を仕上げて売ってみるのが良いと思うわ。売ってどのくらい反応があるかはやってみないと分からないのよ」

「う~ん。やってみようかな」


「実際どんな作品なんだ?」

「これ」


 メイが作品を僕たちに見せる。

 

「……これって、ヒマリだよな?」


 ヒマリが分からせおじさんの餌食になる作品だった。


「ちゃんと名前は変えてあるよ」


 ユヅキとユキナは顔が赤くなっていた。


「ユヅキはどう思うかな?」

「わ、私?絵がうまいと思うわ」


「ユキナはどう思う?」

「そ、そうね。絵がうまいわね」




 僕は3回メイの作品を見直した。

 絵はうまい。

 表紙の絵にも力も入れている。


 何回も作れば絵はもっとうまくなるだろう。

 でも、この作品は、いい絵を並べただけに見える。


 ネームがうまくいっていない気がする。

 ※ネームとは漫画のコマ割りを大雑把に表したもののこと。


 いい絵が並んでいるけど、ストーリーの構成が甘い気がする。


「メイ、僕は漫画の事はよく分からない。それでも思ったことがあったんだ。話半分で聞いて欲しい」

「言って欲しいよ」


「メイの作品は絵はうまい。でも、ネームの作りこみを次から勉強した方がいいと思う」


「ネーム、確かに構成は苦手だよ~」

「得意不得意は誰でもあるけど、最低限のレベルまで上げれば、もっと良くなる気がする」


「どうやって勉強すれば良いかな?」

「小説とジャンルが違うけど、僕の小説の勉強法なら言えるよ」

「言って欲しいよ」


「僕の場合は、結果を出した人のネット情報を参考にしていた、かな」

「結果?」


「あ~例えば、会社を何社も立ち上げて軌道に乗せた敏腕オーナーのAさんと、ずっとニートで自信満々なBさん、会社の社長になりたいならどっちの言う事を聞く?結果を出したAさんと何も結果を出していないBさんどっち?」


「Aさん?」


「そう、そして、動画サイトを参考にするなら、漫画家になりたい場合、動画の再生数が多い作品を批評する人と、再生数の少ない書籍化した漫画家、どっちの言う事を参考にする?」

「う~ん、分かんない」


「僕なら動画の再生数が少なくても、書籍化している漫画家さんの話を参考にする。再生数の多い批評家は、面白く批評する能力はあるかもしれないけど、作品を生み出す能力があるとは言えないんだ。批評と漫画家の能力は違うんだ。批評がうまくなりたいなら批評で実績のある人を選んで、漫画家になるなら漫画家で実績のある人を参考にするよ」


「おお!お兄ちゃんプロっぽいよ!」

「プロはユキナ先生だけどね」


「あら?私もシュウの考えと変わらないわよ。私がメイの立場ならまず今の作品はそのまま販売するわね。販売して反応を見るわ。


 そしてシュウの言う通り、成功している人のやり方をネットで調べるわね。

 場合によっては成功者の書いた漫画の描き方の書籍を購入するわ。


 さらに言うと、売れている作品を何度も見て、良いと思った所はどんどん取り入れるわ。


 もちろん小説と漫画は違うと思うから、取り入れられると思った所だけ取り入れてね」


「お兄ちゃんもお姉ちゃんも凄いよ!やる気出て来た!」


 メイは自分の部屋に戻っていった。

 ユヅキはきゅうを抱っこして部屋に戻る。


 その後僕とユキナは小説の執筆について、夜遅くまで話が盛り上がった。




【次の日の朝】


 ユヅキはリビングで笑顔で出迎えた。


「お、おはよう」

「やっぱり眠そうね。みそ汁とご飯は作ったけど、食べられるかな?」

「ありがとう、頂くよ」


「ふふふ、皆昨日は集中してて、可愛いわね」


 ユヅキは眠そうにご飯を食べる僕を見つめてほほ笑む。


「メイもユキナも起きてこないね」

「私が起こしてくるわ」


 メイがおんぶされて起きてくる。

 椅子に座っても半分寝ていた。


 ユキナは眠そうにしながら、顔を洗ってコーヒーを飲んだ。


「眠い?」

「少し、眠いわね」


 起きてすぐの湿ったような声のユキナは魅力的だった。

 小説の話が出来るのは周りにユキナしかいない。

 読む人は多くても、書く人は少ないのだ。





















 

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