Do謝罪

 依頼人の東国原杏が帰った後、何でも屋ではどう謝罪するか話し合いが開かれた。

 各々考えつく事を発言してきたが、中にはこんな意見があった。

「前に謝罪をテーマにした映画を観たんだけど…」

 そう発言したのは、鬼塚だった。

「あの映画では、深く頭下げるか土下座して謝ってたよ」

 鬼塚が話す映画とは、数年前に公開された謝罪をテーマにしたコメディ映画の事であった。

「映画みたいに土下座するんですか?そんな事したら逆効果なんじゃ…」

 伊万里が言った。

「土下座なんて映画かTVドラマぐらいだよね〜。通用するの」

 一華がのんびり言った。

「いやいやいや!土下座はしないよ?」

 鬼塚は慌てて言った。

「さっき東国原さんに話した謝罪する側の身内として代わりにするの!それを誰にする?」

 鬼塚は大声で言った。

 終業時間が近づき、話し合いはお開きとなった。


「今日も謝罪代行の話し合いやるよ」

 鬼塚はそう言うと壁にかかってあるホワイトで書かれた予定を見て

「残念ながら本郷君は夕方まで山田さんのおばあちゃんのお宅へ買い物代行やハウスクリーニングへ行くから本郷君抜きの話し合いになります。本郷君ごめんね」

 鬼塚はそう謝ると

「大丈夫です」

 本郷は言った。


 その日は本郷抜きの話し合いとなった。

「鬼塚さん〜、東国原さんの家族構成で何か伺ってますか?」

 一華が聞いた。

 鬼塚は昨日自分がメモしたA4サイズの紙を見ながら

「東国原さんは両親とお姉さんがいる。このメンバーで『両親です』というのは、あまりにも不自然だからお姉さんだけにしよう!そうなると阿南さんか皇さんだね」

 一華が手を挙げると

「鬼塚さん〜!皇ちゃんがいいと思います」

 鬼塚は伊万里を見て

「なるほど!皇さんのほうが歳が近いからいいね」

「え?困ります!私にそんな大役!」

「皇ちゃん〜毎度毎度だけど諦めて。鬼塚さん1度決めたらやり通さないと気が済まないから」

 一華は笑いながら言った。

 伊万里は愕然とした。一華の言う通り鬼塚清志郎は、1度決めたらやり通さないと気が済まない男なのだ。

「大丈夫!土下座じゃなくてデパ地下にある高級な お菓子持って謝りに行くだけだから」

 鬼塚はウィンクしながら言った。

「そんな〜!!!」

 伊万里は建物中に響き渡る声で叫んだ。

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