第7話 庭師の青年がやって来ました
あれから何度目かの朝が来ました。
相変わらず昼は裸、夜はナイトドレスの生活です。
コーディは毎晩やって来ては、私に婚約破棄と愛しているの言葉を要求してきました。
私は愛してると言ってこの不毛な生活を終わらせるという誘惑に駆られながらも、人として譲れない何かがそれを許しませんでした。
慣れとは恐ろしいもので、私は平然と屋敷内を歩き回ったり、庭園を散策したりしています。そうしながら私は脱出方法を探していました。
メイドたちは私を見かけても特に反応する事もなく、話しかけても終始無言を貫いています。私はメイドたちを勝手な呼び名で呼ぶ事にしました、名前を訊いても答えてくれないので仕方ありません。
私がいつものように庭園に出ようとすると、メイドのジェーンが引き止めました。何でだろうと思いましたが、その答えはすぐに分かりました。
窓から正門を見ると庭ばさみなどの造園道具を持った青年が入ってきます。私は慌てて身を隠しました。メイドの前では平気になったとはいえ、私もうら若き乙女です。青年の前に裸を晒すほど恥じらいを捨ててはいません。
庭師の青年が庭の手入れを終えて帰るまで、私は大人しく身を潜めていました。
それからというもの、青年は週に1、2回のペースでやって来ました。庭園に出入り自由なところを見ると、よほどコーディに信用されているか、そもそもコーディが使用人を人として見ていないかのどちらかでしょう。
青年は庭園のランプ照明を手入れするため、夜間に来る事もありました。
夜間であれば服も着ているので青年に助けを求める事もできそうです。しかし、私はそれをしませんでした、青年が敵か味方か分からなかったのもありますが、もう一つ問題があったのです。
青年はトイレに溜まった排泄物を回収して肥やしに使っていました。青年と顔を合わせるとトイレの使用者が私と知れてしまいます。それは気恥ずかし過ぎました。
* * *
ある夜、思い切ってコーディに訊いてみました。
「庭師の青年は誰なんですか?」
「ダルトンの事が好きになったんですか?でも彼は平民です、貴族の君とは付き合えませんよ」
コーディは表情を変えずに言いました。
「そういう意味じゃなくて、部外者が自由に敷地に入れるのは不用心じゃないですか」
「ハハハ…彼はとても善良な男です。心配しなくて大丈夫ですよ」
「例えば何かの拍子に私の裸を庭師に見られても、あなたは平気なんですか?」
私はコーディの独占欲を煽って、私に服を着せるようにアピールするつもりでした。
「言ってる意味が分からないな、裸を見られても平気かどうかは君自身が決める事です、僕がどう思うかは関係ない事だ。」
(えっ)想定と違う答えが返ってきました。
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