第8話 身も心も解放されるって何?
「じゃあ、あなたが昼間は決して屋敷にやって来ないのはなぜなんですか?」
「それは君が裸を僕には見られたくないだろうと思ったからだよ。違ってた?」
「違ってないけど、そもそもあなたの悪趣味で私を裸にしているのでないなら、なんで私から服を奪ったんですか!」
「それは君のためだよ、全ては君のために用意したのだから」
コーディはまた訳の分からない事を言い出しました。
「私のため?どういう意味ですか」
私は少しキレ気味に言いました。
「服を脱ぎ捨てる事で身も心も解放される…それこそ君に掛けられた呪縛を解く最善の方法なんだ」
コーディは怪しい宗教団体の教祖みたいな事を言っています。
「もし心が解放されたとして、それでも私はあなたを愛する事はないと思いますけど…」
「そんな事を言えるのも今のうちだよ。君は必ず僕を愛していると言うようになるんだ」
今夜も不毛な会話に時間をとられてしまいました。庭師の名前がダルトンだと分かった事が唯一の収穫でした。
* * *
この屋敷に閉じ込められてからどのくらい経ったでしょうか。
一ヶ月を過ぎると私の日付間隔も狂ってきました。
私は朝になると自分でナイトドレスを脱ぐようになっていました。メイドに無理やり脱がされるよりは抵抗が少ない気がしたからです。
その日もいつものように朝食のサンドイッチを食べていると、正門からダルトンが入ってきました。
地上から二階のこの部屋の中が見えないのは分かっているのですが、それでも私は慌ててしゃがみ込むと息を潜めました。
彼は鼻歌を歌いながら作業を進めていきます。それを聴いていると何だか私まで楽しい気分になれるのでした。
(ダルトンはどんな顔をしているんだろう?)私はダルトンをちゃんと見たことがありません。ちらりと垣間見た感じでは二十台後半のいかにも田舎の好青年といった感じでした。
(私、ダルトンが好きになってきている?)
私は慌てて頭を振りました。(違うちがう!今の寂しい環境のせいだ、私が愛しているのはエドワードだけ…)私は自分に言い聞かせました。
(う、マズイ…)唐突に私を猛烈な尿意が襲いました。ここで下手に動いてダルトンに存在を知られたくはない。しかし一度催した尿意はもう押さえられません。私は音を立てないようにゆっくりとトイレに向かいました。
(ああ、もれそう…)私はトイレに着くなり急いで穴を跨ぎました。
なんという運命のいたずらでしょう!私は神様を恨みました。二階のトイレの下、つまり一階の排泄物堆積所に、肥やしを回収するためダルトンが入ってきました。最悪のタイミング…ダルトンは誰もいないと思っているのか二階を気にする素振りもありません、そう思わせるように存在感を消していた事が仇となりました。
(気付かれないようにこの場を立ち去ろう)そう思ったのですが、すでに我慢の限界でした…
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