第2話

土曜日。


精一杯慣れないメイクをして、持っている洋服の中でも一番可愛いものを身にまとう。

最後にお気に入りの香水をふって、私は玄関のドアを開けた。



「おでかけモード」


それはこのゲームならではの機能だ。


位置情報アプリと連携することで、彼がまるでその場にいるかのような会話ができる。


公園の近くに行けば幼少期の思い出を語ってくれるし、コンビニに行けば夏はアイスを、冬は肉まんを欲しがったりする。

彼と同じ視界を共有できているようで、私は街を歩くのが大好きになった。



スマホの電源を入れて、ゲームを起動する。


彼が「おはよう」と優しく挨拶をしてくれる。

それだけで私の心は弾んで、自然と笑顔になれるのだ。


スマートフォンをしっかりと胸に抱く。

少しだけ背伸びして買った可愛い靴で、一歩踏み出した。



よく晴れた気持ちのいい日だ。

今日はどんな素敵な景色が私たちを待っているのだろうか。








 

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