本作は異世界ファンタジーの中でも冒険ものに分類されるかもしれませんが、私にとってはそれ以前に異世界を舞台にした人間ドラマです。主人公は賢くて強いだけではなく、愚かな面もあったり、醜い感情を持つこともあったり、そういう人間の醜い点もこの作品は露わに描いています。それの行きつく先がこの物語の結末です。
それから、恋愛小説好き人間としては、やっぱりマィソーマとデルトの淡い恋の行方も目が離せませんでした。それだけにどうしてそうなる前になんとかできなかったのか、認めたくないけど、マィソーマの罪はやっぱり重い、かな?
ちなみに『2人のライオネット』も合わせて読むと、マィソーマとデルトの背景をよりよく理解できます。
こちらは、全て読んでからのレビューとなります。なので、若干ネタバレを含みます。
物語の始まりは、モンスターの大量発生。これにより主人公らは、領地を離れることを余儀なくされます。
そこから冒険者となりましたが、盾役の青年は『力不足』を理由にパーティーから追放されてしまう。
従来の『追放もの』なら、シンプルな『ざまぁ展開』となります。しかし本作では、追放した側にも『事情』があります。
青年を追放したお嬢様は、かつて去った領地を取り戻すべく、是が非でも『昇格』する必要があった。
非情な判断もあり、その後お嬢様パーティーは昇格を果たし、ふんぞり返っていた悪徳領主の放逐にも成功。
一方、追放された青年も新たなメンバーと出会い、才能【爆水(水と雷)の複合属性】を開花させます。戦闘だけではなく、開拓でも非凡な才能及び努力家の一面も見せます。
ここから先は是非、ご自身の目で確かめてください! かつて別れた『運命』が交錯する時、タイトルの意味が解ります。
本作は心理描写にも長けており、物語に没入できます。読後も、色々と考えさせられる作品です。
正直、なんで☆20なのか? と思います。やっぱり『面白さ ≠ ☆数』ですね。もっと評価されていいと思います。
長くなりましたが、本作に出会えてよかったと思います。