第3話 ご説明有難うございます
「バカだねぇ、テメェでふっ飛ばして落ちてきたゴブリンの棍棒に当たってちゃあ世話はないよ!」
「面目ないです・・・」
夕方、すっかり体調の戻ったモーリィさんが僕達のいる草原まで来てくれて僕の手当をしてくれる。口調はドギツいがその手つきは優しい。
彼女はイラザス鉱山で囚人たちの食事から体調管理まで行う仕事をしていたそうなので医者程ではないが的確な応急手当をしてくれる。
話によるとアークさんについて旅をしているモーリィさんはイラザス鉱山で刑期を終えた彼の監視役、という事らしい。僕と同じくEランク冒険者だけど元囚人の再犯を防ぐのが役割だとか。
「それで?坊やの戦闘訓練はバッチリだったのかいアーク?」
「デルト君は飲み込みが早くて教え易い、だがソロで討伐クエストをさせるにはまだまだ経験が必要だな」
経験不足は理解しているけどアークさんの評価に自信を持てそうだ。これならモンスター討伐クエストだってイケる!
「・・・坊や、アンタ今『だったらイケるぜ』とか思ってただろう?」
「ぅ・・・」
モーリィさんは僕の心が読めるんだろうか?そんなスキルがあるなんて聞いたことないけど。
「カマかけただけさ、それよりアタイに良い案があるんだよ・・・聞いてくれるかい?」
「あ、はい?」
「実はアタイらもそろそろ旅の資金が底をついちゃってねぇ、Eランクのアタイがいればギルドでクエスト受ける事もできるんだけどこの町には不案内なのさ・・・そこで坊やにはアタイらのパーティー『トリニティ・フロント』に入ってもらいたいんだよ」
なるほど・・・同じパーティーなら続けてアークさんに指導してもらえるし、逆にアークさんとモーリィさんの泊る所も僕が手配すれば問題ない。
返答しようとした僕をアークさんが抑える。
「ちょっと待てモーリィ、デルト君にも都合というものがある・・・我々、いやGランクの私と活動していれば彼の評判が悪くなるに違いない」
彼は僕の評判を心配してくれているようだ。昨日頑なに宿に泊まろうとしなかったのはこのためか。しかし、
「心配要りません、僕はアークさんに戦い方を教えてもらいますが別に高位ランクパーティーに入れてもらうつもりはないので・・・評判が上がるだの下がるだのは気にしてないんです」
モーリィさんが立ち上がって僕の背中をバンバンと嫌というほど叩きまくる。
「よく言った、それでこそ男だ!見かけは坊やだけど腹が据わってるねぇ!アークもこのぐらい思い切りが良けりゃいう事ないのに!」
「・・・君はもう少し思慮深くなるべきだよモーリィ」
「あんだとぉぉぉ?!」
「まぁまぁ・・・」
こうして僕はアークさんとモーリィさんの「トリニティ・フロント」に入る事になった。
ギルドで申請する時に教えてもらったけど、前日から張り出されていた「流れの冒険者の身元引受人」のクエストの対象者がアークさん達だったとの事。なので同時にクエスト受諾も行った。もっとも報酬が貰えるのはパーティー解散後だ。
Gランクのアークさんがいるせいか受付の人からは「トラブルに巻き込まれた?」「脅されているんじゃ?」と見当違いの心配をされたけど。
まぁ僕も事前に会って無ければアークさん達の性格は分からなかったから無理もないか。
◇◇◇
「流れの冒険者の身元引受人クエスト」を受領した翌日、受付の人からギルドマスターからの呼び出しの要請を受けた。招待されたのは僕だけだ。
案内されるままにギルドマスターの部屋に通される。豪華な調度品に満たされた部屋の中には2人の男女がいた。若々しさのある女性が気さくに話しかけてくる。
「急な呼び出しでごめんなさいねデルト君・・・だったかしら?私はギルドマスターのイレーヌ・ラジエルよ」
「は、初めまして・・・デルトです」
ロザリスのギルド「グラーナ」出身の僕がこのゼルベのギルド「ラジム」のギルドマスターに会うのは初めてだ。イレーヌさんはこんなに若い女性なのに荒くれ者の多い冒険者達をまとめ上げているなんてどうやっているんだろう?
「うふふ、真っ直ぐな目を持ってるわねぇ?やっぱりランクで人は判断できないわね」
「い、いやその・・・」
そう言って僕の目をのぞき込んでくるマスター。少なくとも悪意は感じないけど綺麗な人だから正直照れくさい。
そうしているところで同席しているもう一方の男性が声を掛けてくる。髪をオールバックで後ろに流した野性味ある顔立ちだ。
「マスター、彼がそうなのか?」
「ええ、貴方様の国の出身者ですわ・・・クライツ王太子殿下」
「!!」
クライツ王太子殿下?出身者という事はつまりシャンゾル王国?ついこの間まで僕が住んでいた国だ・・・そこの王太子がどうしてこの隣国スティバトに?
「ここでは『クライツ』呼びだ・・・って話だったが仕方ない、俺の出した依頼を引き受けてくれた彼にはきちんと説明もしたいからな・・・ええと」
「これは失礼しました・・・デルト・ミナズと申します、クライツ・ロイヤル=シャンゾル王太子殿下」
「あら、何て礼儀正しい子!高位ランクの冒険者でも出来ない事ね?」
慌ててひざまづく。ここが本国ではないとは言え相手は王族、執事だった父さんに仕込まれたマナーを思い出す。マスターの様子を見る限り僕の態度に失態はないようだけど。
しかし殿下は手の平を前に出して振る。
「ああやめてくれ・・・ここは王宮じゃないし国も違う、俺の部屋じゃないが掛けてくれ」
「はっ、それでは失礼致します」
気さくな態度に驚くもお許しが出たのでソファーに座る。丁度2人と向かい合う格好だ。
「デルト君、だったか・・・君は我が国出身との事だがどうして国を出ることになったんだ?無理には答えなくてもいいが」
・・・一瞬考え込むけど別段隠す必要のない事だ。
「くだらない話です、ロザリスの町のギルドで入っていたパーティーから仲違いで追い出されたのが原因です・・・元メンバー達と顔を合わせるのもイヤだったので国を出ました」
「そうか・・・気分の悪くなる話だった、済まん」
「あ、いえ・・・」
こんな小さな事で謝るとは・・・王族らしからぬ態度に慌てて恐縮してしまう。
「君から聞かせてもらったのでこっちも話そう、まずシャンゾルの王太子がなぜこんなところにいるのか・・・理由は簡単、こちらで別荘を購入しているので時折休暇に来ているというだけのことさ、だからここではただの『クライツ』だ」
なるほど、ゼルベの町には休養が目的という事か。
「そして君を呼んだのは他でもない、君が受領してくれた『流れの冒険者の身元引受人』の依頼を出したのは俺なんだ」
それであの破格の報酬だったのか。でも一体なぜ他国の王太子がGランクの冒険者の面倒を見ることになったのやら?
「Gランク冒険者が札付きなのは知っているな?刑期の終えた彼らは更生活動として様々なギルドで活動して評価を上げていく義務がある、その際にはその土地の有力者の監督が必要だ」
「・・・・・・」
「しかし誰も元犯罪者であるGランクの面倒など見たくないというワケだ、そこで日頃からこの町の世話になっている俺が名乗りを上げた・・・そして実際に彼らを世話する人間が必要になったので依頼を出させてもらったという事だ」
今回の依頼を出したのは政治的判断があったワケではないのか。だったら何故依頼を引き受けただけの僕にわざわざ・・・。殿下は僕の疑問を見透かしたように語る。
「別段他意はない、ただ面倒な依頼を引き受けてくれた同国人の君がどんな人物なのか気になっただけなんだ・・・だから気を楽にしてくれ」
「ご説明有難うございます、Gランクといってもアークハイドさん達は穏やかな人なので問題ありません・・・それで彼らとパーティー活動する期間はいつまでなのでしょうか?」
「彼らがこの地を離れて他国のギルド管轄となるまで、というところだ・・・長い期間になるかも知れないので俺の方もなるべく君に便宜を図ろうと思う、改めて宜しく頼むぞデルト君」
思わず跪きそうになるけど殿下は嫌がられているので頭を深く下げるだけにしておく。それまでずっと僕達のやり取りを見ていたマスターが一言。
「デルト君、前のところじゃパーティー追放なんて酷い目にあったようだけど・・・まぁ冒険者稼業やってると色々とあるものよ、気にしないでこのギルドでしっかり頑張りなさい?」
「はい、マスターもありがとうございます!」
マスターの励ましに元気づけられたかな?これからはアークさん達としっかりクエスト活動していこう!
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