第9話 幕間

「報告ご苦労」


 そう言って公爵は持っていた紙の束を魔法で一瞬で燃やした。


「それでお前たちの感想を聞かせろ」


 頬杖をついたまま目の前に立つ3人に尋ねた。


「は、問掛けの際に最初の30秒ほど使いギミックを見抜いたことは素晴らしく知性の面では今後に期待出来るかと。しかしながら優柔不断な一面と気弱さが表に出ており若干の頼りなさを感じております。忠誠を誓うかと問われれば現状は誓うことはないでしょう。以上でございます」


「問掛けでは特に何も考えることなく1分程で3問お答えになりました。剛毅果断は美点かと思われます。そしてその後忠誠を誓え、と申し出られましたが断らせていただきました。今は今後、自らの武力を見せるために戦争を起こそうと味方集めに奔走しておられるようでございますが母親が潜り込ませた騎士以外集まる見込みはないでしょう。よく言えば武人よりの思考、悪く言えば短慮、そして何より気になるのが母親の傀儡となっていることです。母親が離れることがない限り忠誠を誓う状態にはならないでしょう。以上でございます」


「問掛けに際して一問はそのままお答えになられましたがその後ギミックにお気づきになり時間ギリギリまで解答をお続けになられました。それだけでなくあの問掛けの裏の意図にまで気づいておられる様子でした。また現実をしっかり見据えており、問題への対策もしっかりと取ろうとしている点は及第点でしょう。それと時折見せる黒い面が少し気になりますね。忠誠を誓うかと問われれば現状はとお答えします。以上でございます」


 そう言って3人はそれぞれ礼をした。


「ふむ、何も抵抗せず離れに行ったと聞いたからのゴミかと思ったが、少しは期待が持てるか・・・。しかし、ヴィンテールの小娘は少々目に余るな」


 そう口にすると、目の前の3人の存在感が高まった。


「手は出すな。今しばらくは様子見である。ああ、それとあの黒髪の小僧の儀式を担当した神官の足取は常に掴んでおけ。あの小僧が殺気を向けていなければ、すぐにでも殺っていたが5年は待ってやろう。5年経ってもあの小僧が始末しないのならお前たちで始末しておけ」


「「「は、かしこまりました」」」


 ――∇∇――

「お前が保留と言うとはどういう風の吹き回しだ?何か感じるものでもあったのか?」


「そうですね。現状忠誠を誓う可能性があるかと問われれば1%もないでしょう」


「それなら、なぜああ答えたんだ?」


「なぜでしょうか。……そうですね、あの方が少し公爵様に似ていたからかもしれませんね」


「ほう。そう言われたら俺も俄然興味が出たぜ。担当変わらねえか?」


「お断りします」


「即答かよ。まあいいぜ。そのうち会う機会もあるだろうよ」


「あなたたちまだ公爵様の領域内ですよ。私語は慎みなさい」


「「は」」


 そう言って3人はその場から消え、それぞれの監視対象のいる邸に戻っていった。


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