第37話 ラコールへの攻勢
ゲミュートによってクリスタとサボジオの国境が開放された。そしてその約1時間後、白金隊が国境を越えて全速力で黒狼隊のもとへ向かった。トラオムはチーシュを通った時に白金隊に伝令を出していた。
―――白金隊到着後
黒狼隊と白金隊は敵を撃滅後、パーラに移動した。パーラに到着後、アドルフとヴァイスハイトはエーデルシュタインを訪ねた。そしてアドルフが
「今回の救援にはかなり助けられた。本当にありがとう。」と感謝を述べた。
「国王まで動いたんだ。なのに俺たちが動かねえわけにはいかねえからな。」と言うとアドルフが
「陛下が!?」と驚くとヴァイスハイトも
「国王陛下なら動いてくださる可能性も考えてはいたが、まさか本当になるとは。」と少し驚いていた。そしてエーデルシュタインから国境開放について話を聞いた。エーデルシュタインが
「フェルネの野郎、ヴァイスハイトの予想通りラコールと通じてやがった。蒼龍隊がレイドに着いたらやつはもういなかったそうだ。」と話すとヴァイスハイトが
「フェルネとしても今回が、打てる最後の手だったのだろうな。」と話した。
「そういえば薔薇隊じゃなくてなんで俺たちだったんだ?」エーデルシュタインが聞くとヴァイスハイトが
「敵軍が私たちの上陸を知っているとしたら黒狼隊を挟んだ後、サボジオの兵士を利用して到着後に挟撃してくる可能性があった。そして交渉が始まる前にサボジオ軍が出ていたならこっちに到着する前に撃破してほしいと考えた。そう考えると隊員の体力が多い白金隊なら早く来てくれると思ったからだ。」と答えた。
「それよりよく黒狼隊だけじゃなくて白金隊も死傷者が出なかったな。」とアドルフが言うとエーデルシュタインが
「それがよ、俺たちが突撃したとき敵の歩兵が陣敷いてなかったんだよ。」と不思議そうに言った。
「もしかしたら敵軍にはちゃんとした指揮官がいなかったのかもしれないな。白金隊の突撃を受けて黒狼隊に突撃をかけたのも安直すぎる。」と答えた。
実際にラコール軍にはまともな指揮官がいなかった。フェルネは黒狼隊を挟撃する作戦を考えたが、過去にナハトが対峙した密偵の男がゲミュートがザボギアに向かっているという情報を掴み、それを聞いたフェルネは国境開放は時間の問題だと考えその男とともに海に出た。そして黒狼隊を挟んでいる艦隊に合流し、艦隊の指揮は執っていた。だが陸のほうは、騎兵の中から適当に指揮官を選んで指揮を執らせた。フェルネは最初から勝ち目がないと判断し、陸のほうは切り捨てるつもりだったのだ。
黒狼隊と白金隊がパーラに入って2日後、伝令が来て両隊がザボギアに召集された。ザボギアに到着すると、黒狼隊と白金隊以外にもクリスタ軍の主力全隊が集められていた。そして各隊の隊長がトラオムに集められた。
「サボジオの国境開放ができて、ラコール軍はこっちに攻めずらくなったね。これからはこっちが攻めていくよ。」とトラオムが言うと隊長達は気合の入った表情になった。続けてトラオムが
「でも上陸したとして、持ってる船の数的に向こうに送れるのは1部隊ずつって感じだね。その部隊の役目は港湾都市ハノの確保。今のクリスタ軍で上陸戦を経験したことがある人はいないから、結構大変だと思うけど誰か行きたい人いる?」と聞いた。すると真っ先に蒼龍隊と薔薇隊の4人が手を挙げた。
「おい待て、戦闘経験がほとんどないお前らには危なすぎるぞ。」とキューンハイトが言った。すると蒼龍隊のマクシミリアンが
「なんやキューンハイトさん、新入りに手柄とられんのが怖いんか?」と聞くと
「おれはお前らを思って言ってんだ。」とキューンハイトが言い返すとトラオムが
「確かに実戦経験を積む良い機会ではあるね。クリスタ軍としてはできたばかりの主力部隊が壊滅するのは避けたいね。」と言った。
「突っ込むしか能のない蒼龍隊なら負けるかもしれないけど、私たちなら優秀な弓兵もいるし必ず勝って見せるわ。」と薔薇隊のべルティーナが言った。すると蒼龍隊ギュンターが
「突っ込むしか能がないとは心外だな。自分たちなら優秀な弓兵が相手でも矢を払いのけて蹴散らせる。」と言い返した。
「馬鹿は黙ってなさいよ!」とべルティーナが言い返すと薔薇隊のアーデルハイトが
「まあまあ今僕たちで言い争っても意味はないよ。トラオムさん、最終決定に従うよ。」となだめた。トラオムは
「じゃあどっちかに行ってもらうとして、どっちにしようかな。」と考えると
「俺は薔薇隊を推薦する。」とアドルフが進言した。それを聞いたトラオムはアドルフの目を見て
「じゃ、そうしよっか。ラコール上陸作戦は薔薇隊が担当するってことでー。はい、会議終わり。各隊は指示があるまで待機ねー。」と会議を終わらせた。するとギュンターは
「待ってくださいトラオムさん。自分たちの意見も聞いてください。」と引き留めたが
「何を言っても覆らないよー。」と言いながら扉に向かって行き
「あっそうだ、薔薇隊で作戦考えるときいつでも参謀部に来てね。手助けはするから。」と言うと部屋を出て行った。
こうしてラコール上陸作戦は薔薇隊が担当することになった。
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