第30話 フェルネの読み

   アドルフの話が終わり皆眠りにつき、翌朝黒狼、深緑、白金、蒼龍、薔薇隊の隊長たちを読んで会議を開いた。そこでサボジオを混乱させている人物がいるはずと考え黒狼隊からナハトとナハト直属の密偵5人をザボギアに送ることになった。すると会議中に兵士が伝令書を持ってきた。キューンハイトが受け取り読んでみると

「ザボギアにて攻勢準備の動きあり、全部隊引き続きチーシュにて待機。フェルネ」

と書いていた。するとキューンハイトが

「今のサボジオの状態を考えてもここを落とすことはできねえはずだ。ここよりかレイドを狙うんじゃねえのか?」と話すとヴァイスハイトが

「いや、伝令書にはザボギアにてと書いてある。ザボギアからレイドを狙うのは我々の隊に側面を突かれる恐れがあるため考えにくい。」と返す。

そしてアドルフは

「今はわからないことが多すぎる。とりあえずナハトたちの報告を聞いてからもう一度報告しよう。」と言い、とりあえず全部隊がチーシュに留まることになった。


   ナハトたちがザボギアに到着し、それぞれが個々に情報収集に当たった。するとザボギア王宮前に大勢の人が集まっており、一人の男が台に乗って演説をしていた。ナハトは聴衆に混ざりそれを聞くと

「我々は前回の戦争でクリスタに負けたせいで侵略されようとしている。奴らは親交を深めるように見せかけて、大陸全土を征服することを狙っている。その証拠に国王陛下を暗殺した!これは断じて許されるものではない。そして前日わが軍は敵国都市チーシュを包囲することに成功した。だが敵軍は都市を囮にしてわが軍を逆に包囲して見せた。奴らは戦争に勝つために国民をも囮にするような蛮族である!これからも奴らは...」

ナハトが演説を聞いていると、40歳ぐらいの男が話しかけてきた。

「爺さんうちの商品ちょっと見ていってくれよ。クリスタから奪い取ったもんが手に入ってよ、今なら安くするぜ。」ナハトはこの時変装しており、誰から見ても年老いた老人にしか見えなかった。話を聞いてナハトはクリスタから奪い取ったものという言葉を聞いて、敵に利用される前に回収しようと考えついていった。すると路地裏に連れていかれ、そこには露店があって商品に布がかぶせてあった。すると男は

「俺は誰にでも売るってわけじゃなくてよ、年寄りが好きなもんでな。あんたはなんだか特別な感じがしたんだ。」と話しながら布をつかんだ。

「さあ見て驚きなこれが仕入れたての商品だ!」といい布をがばっと開ける。なんとそこにはナハトと一緒に潜入していた5人の首が並んでいた。ナハトが驚いている隙に、すぐさま男が短刀を投げてきた。ナハトは一瞬反応が遅れ、短剣が頬をかすめた。すると男は

「へえ、今のを避けるか~。さすがはうわさに聞くナハトだな。」といい懐に隠していた短刀で切りかかってきた。なんと男はナハトの変装を見破っていたのだった。ナハトはそれを躱し距離を取った。すると男は密偵たちの首を路地に向かって投げた。ナハトはそれを落とすわけにもいかず飛んでキャッチした。すると悲鳴が聞こえてきた。ナハトは後ろに飛んだことにより人目の付くところに出てしまったのだ。すると

「見ろ!クリスタの犬がわが国民を殺しているではないか!やつを捕まえろ!」と演説していた男が大声で叫ぶと兵士が大勢やって来たのでナハトは仕方なく首を置いてザボギアを脱出した。


   数日後の朝、ナハトが帰ってきてアドルフに報告をしに行った。

「すまない。部下5人が殺されて俺のせいでザボギアの住民がクリスタに反感を持った可能性が高い。」と言いい演説のことも報告するとアドルフはナハトの顔を見て

「わかった。お疲れさん、部屋に戻って休んでろ。報告は俺からしとく。」といいナハトを休ませた。アドルフがナハト以外の隊長たちを招集し、報告をするとキューンハイトが

「かなりまずいかもな、余計にサボジオに入りにくくなったな。しかも演説してた男ってのがうさんくせえな。」というとヴァイスハイトが

「ほぼ間違いなくラコールの兵士か協力者だな。」と言った。クリスタ軍はサボジオにおいて反クリスタ感情が高まったことで、作戦上サボジオ内に入ることが困難な状況に陥ったのだ。そのことをフェルネに伝えるとその日のうちに返事が返ってきて、そこには細かい作戦が書かれていた。

その内容は、敵軍のクリスタ上陸阻止のためにそれぞれの港湾都市である、首都セレウスに深緑隊、大陸最北端クライノートに白金隊、そしてサボジオを通れるようになった時のために、レイドに蒼龍隊、チーシュに薔薇隊を配置。そして黒狼隊はサボジオの港湾都市パーラに海路で上陸という作戦だった。このパーラに上陸というのは、ラコール軍がパーラに上陸して主力部隊を集結させ、一気にサボジオを侵略していくというフェルネの読みで、かなりの賭けだと書いてあった。だが、それはただの空想ではなく、根拠としてサボジオの反クリスタ感情を高ぶらせているのが、この上陸をクリスタに対する軍事支援という形で無血上陸するためだと書いてある。

この作戦指示に従ってそれぞれが都市に向かい、黒狼隊もパーラ上陸のためレイドで補給をして海岸を目指した。

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