　　　白金隊の訓練は、初めのころは兵士たちも死ぬような思いを多くしていた。空気の薄い中での熊との戦闘、戦っている最中に汗や唾が凍り大変なことになった兵士も多くいた。だが村の子供たちは村での暮らしに慣れているため、兵士たちよりかは楽そうだったがかなり疲れていた。２か月ぐらいが経つと兵士も少年たちもある程度慣れてきていたがそれでもかなり疲労が溜まっていた。

　そしてついに３か月が経ってエーデルシュタインが村から迎えに来た。村に帰るとごちそうが出され

「よく頑張ったな、ほんとに大した奴らだ。今日はゆっくり休め。明後日には帰るぞ」とエーデルシュタインがいい兵士たちはすぐに寝床に入った。兵士たちが３か月間訓練しているとき、エーデルシュタインは妻にノアの様子を細かく話していた。妻はエーデルシュタインを嫌っているが、これが彼なりの償いだった。そして兵士たちはゆっくり休み、新しく配属されたチーシュへ帰っていった。帰り道でエーデルシュタインが兵たちに

「帰ったらしっかり隊の訓練やるぞ。黒狼隊に負けてられねえからな。」と言った。

　　　一方黒狼隊と深緑隊の訓練は順調に進み、もう実戦に投入できるようになっていた。ブリッツが教官を務める志願兵たちも、ブリッツが教官になる前からも含めてちょうど１年ほどの訓練をしており、そろそろ隊長を決めようとしていた。ブリッツが訓練兵たちを集めて隊長の任命を始めた。

「これより新しく編成する隊の隊長の発表をする。呼ばれたものは前に出ろ。マクシミリアン、ギュンター、アーデルハイト、べルティーナ、この４人を隊長に任命する。だが本来４隊を編成する予定だったが、君たち一人ずつに１つの隊は実力不足と判断したため、ギュンターを隊長、マクシミリアンを副隊長とした蒼龍隊。アーデルハイトを隊長、べルティーナを副隊長とした薔薇隊の２隊を編成する。続いて、それぞれの隊への配属を発表する。」といい２隊にそれぞれ２万ずつの兵が編成された。

　　　それぞれの隊長を紹介しよう。まず蒼龍隊隊長のギュンター。彼は訓練生の中で落ちこぼれであった。様々な訓練をしたが、全訓練兵の中でも最弱、集団の訓練でも一人だけついていけずにみんなの足を引っ張っていた。だがそんな自分が嫌で寝る時間以外すべてを自主訓練や戦術の勉強にあてて、ついには隊長に任命されるほどまでに成長した。副隊長のマクシミリアンは、クリスタの北方に位置するヒデストという都市で生まれ育った。ヒデストはエーデルシュタインに最も近い都市であり、かなり田舎だった。マクシミリアンはもっと発展した都市に住みたいと考えて軍に志願した。彼の才能は凄まじく、訓練の初めから最後まで全教科で主席を取り続けたエリートである。次に薔薇隊隊長のアーデルハイト。彼女は訓練兵の女性のなかでかなり優秀な人物だった。戦闘もなかなか強くて男性の兵士にも圧勝していた。そして戦術にも長けており、戦術の部門では全兵士の中で首位だった。彼女は身なりもよく中性的な見た目で、女性兵の中で絶大な人気があった。最後に副隊長のべルティーナ。彼女は女性訓練兵の中でアーデルハイトと１位２位を争った優秀な人物だった。彼女はアーデルハイトのことをライバル視しているがアーデルハイトにいつも流されて怒っていた。戦術でも女性隊員の中でアーデルハイトに次ぐ２位だった。彼女も小柄でとても可愛らしい顔をしていたため、女性隊員の中でも可愛がられていた。ブリッツはこれらの隊の編成を参謀部に報告した。

　　　蒼龍隊、薔薇隊が編成されてからも訓練が続けられ３か月が過ぎた。するとラコールからの使者が来て合同演習をしようと提案してきた。これをゲミュートは受け入れ、合同演習は２週間後に開かれることになった。サボジオにもラコールからの使者が来て軍事顧問を送るという提案をし、カイザーはそれを了承した。

―――二週間後

　　　ラコールから３万２千の兵士を乗せた帆船６０隻の大艦隊がクリスタ首都のセレウスに到着した。サボジオにも千人の兵士を乗せた帆船２隻が到着した。ラコールは海軍に力を入れている国で、クリスタ軍に海軍の運用を教える代わりに陸軍の合同演習をするという話だった。ラコール軍３万２千のうち１万２千はこの６０隻の帆船の戦闘員で後の２万人はラコールの陸軍である。１日目は長い船旅で疲れていたラコールの兵士たちに休んでもらい翌日から訓練を合同演習をすることになった。

―――翌日

　　　クリスタの主力５部隊がクリスタに集まってまずは海軍の運用を学んだ。ラコール軍は帆船１隻に２００人の戦闘員を乗せて運用し、できるだけ敵船を破壊せずに鹵獲して敵の船を利用して戦うという戦術をとっていた。なのでこの帆船には衝角があるがほとんど突撃は行わないそうだ。ラコールは海軍に力を入れているだけあって操船技術がとても高かった。陸軍は主に深緑隊と合同演習をして、お互いに得るものがあった。そして３週間の合同演習を終えてラコールの兵士たちを見送り、さっそく海軍の訓練の内容を変える会議を開いた。