第21話 ザボギア攻略戦ー③

―――黒狼隊

   黒狼隊も勢いに乗って敵を押していたが、そこにルフトが現れた。それにリッターが一番に気づいて

「リッター!前回の借りを返させてもらおう!」と大声で言うと、ルフトはリッターに気づき兵たちに攻撃停止を命令した。そして

「お前と戦うのはいいが、その間にほかの兵がやられてしまう。」と言うとリッターは

「わかった。貴殿と戦っている間は我々も攻撃を停止しよう。」といいハルトリーゲルたちに攻撃停止を頼んだ。黒狼隊とサボジオ軍の兵士が攻撃停止をしてからルフトが

「よし、いいぜ。」と言い剣を抜き、リッターも剣を構えた。


   先にリッターが切りかかり、それをルフトは剣で受けて間合いを取ると

「前より速くなってるな。」といい、今度はルフトが切りかかる。そしてリッターもそれを躱して反撃する。しばらく攻防が続き、ルフトが

「確かに動きがよくなってるけどそれじゃまだ俺には勝てないよ。」と言う。するとリッターが切りかかってつばぜり合いになり

「言っただろ、借りを返すと!」とリッターがいうと、ルフトが後ろに下がりながらリッターを蹴った。

「まあやれるならがんばれよ。」とルフトが言うとリッターの攻撃が激しさを増していく。だがルフトはこれをすべて躱しながら反撃をしていた。リッターが、蹴られたり殴られたりでボロボロになってくるとルフトは

「前と一緒じゃねえか。今度こそ降伏してくれ、俺はあまり優秀なやつを殺したくない。」と言うとリッターは

「馬鹿にするな、私にはまだ奥の手がある。今からそれを出すと宣言しよう。」とニヤッと笑いながら言った。ルフトの目の前にいるリッターは、全身打撲や骨折だらけで満身創痍なのにまだ戦おうとしていて、しかも笑っていた。それを見てルフトは恐怖を抱いた。そしてリッターは剣を振りかぶり、そのまま間合いを詰めていった。ルフトが剣を頭上に出して受けようとすると、リッターは剣を手放し、ルフトの目の前で手を叩いた。俗にいう[猫だまし]である。これは極度の緊張状態の相手に対して有効で、ルフトにも一瞬の隙を生んだ。その瞬間リッターは手を首にまわして、みぞおちに膝蹴りを、完璧に入れた。それでルフトは息が止まって膝をつくと、リッターがこめかみを踵で蹴る。ルフトは脳震盪を起こして地面に倒れこんだ。ルフトは、みぞおちを蹴られたせいで息ができなくなり、脳震盪で立つこともできなくなっていた。そしてリッターが

「貴殿のおかげで私は強くなることができた。感謝する。今すぐ楽にしてやろう。」といい、剣でルフトの首を切った。そして黒狼隊は歓声を上げる。するとサボジオの兵士達は

「あのルフト様が討たれるなんて。」と悲しそうに言い、全員武器を捨てて投降した。4人の将が討たれたことは瞬く間にザボギア中に知れ渡り、全員武装解除した。これによってサボジオは陥落し、クリスタ軍の勝利となった。


   ザボギア陥落後、サボジオ国王であるカイザーは何の抵抗もせずに開城した。本作戦に参加した兵たちは、サボジオ軍の監視のためにザボギアに残った。カイザーが開城してから1週間後、クリスタからの指令が届き、クリスタ軍はカイザーをセレウスまで護衛しながら帰国した。帰国するとカイザーはクリスタ国王のゲミュートのいる王宮に通された。そこには参謀の5人と国王護衛のブリッツの姿があった。そしてゲミュートが話し始める。

「今から講和会議を始める。」その言葉通りクリスタとサボジオの講和会議が始まった。ゲミュートは

「カイザー、そなたから何か言いたいことはあるか?」と聞くとカイザーは

「ふっ、おかしな国王だ。おぬしは戦争に勝ったのだからなんでも好きに要求すればよかろう。」と言う。そしてゲミュートが

「わしはまだ国王として未熟でな、そなたの要求をもとにいろいろ決めたいんじゃ。」と言うとカイザーは

「ならばわしからの要求はただ一つだ。民には手を出すな。おぬしの国の兵士がわが国民に対して危害を加えないように言ってくれ。それ以外は俺を殺すなり国を支配するも好きにせよ。」と言った。それを聞いてゲミュートは

「それは約束しよう。そしてサボジオ国には、半年間の軍の編成の禁止、クリスタとサボジオとの国境は大陸戦争終結時の状態に戻すこと。また半年の間はクリスタ軍がサボジオを守ることとする。これが講和条件である。」と述べた。これにカイザーは驚き

「サボジオが占領した国も開放しなくてもいいのか?わしは殺さんのか?」と聞くとゲミュートは

「実はサボジオが占領した国の民の話を聞いてみると、占領された時のほうが居心地がいいと言っていたのでな。あの国々の国王たちは少し横暴すぎた。あとそなたは殺さんから政治に全力を尽くしてくれ。」と答えた。するとカイザーが

「おぬしはどこまで情報を持っておるのだ。わしの国を残してくれたのには感謝する。あと、わしはおぬしを勘違いしていたようだ。」といい、この条件で講和条約を締結した。これによりクリスタとサボジオにおける戦争は終結した。のちにこの戦争はゲミュートによって「第二次大陸戦争」と呼称された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る