第17話 敵主力撃滅作戦ー⑤

   それでもリッターはあきらめずに剣を構える。その姿を見てルフトは

「そんなに死にたいのか?」と聞くとリッターは

「せめて貴殿の本気を出すまでは死なない。」と答えた。その答えにルフトは驚き、

「わかった。なら俺も本気で戦おう。本当は殺したくなかったが。」そういい初めて剣を構えた。それを見てリッターが切りかかった。その動きはさっきよりも数段速くなっていた。ルフトはそれに驚いたが、しっかりと剣で受け止めリッターを蹴り飛ばした。

「お前には驚かされてばっかりだな。」とルフトがいい、今度はルフトが切りかかるとリッターはそれを右に躱して、剣をルフトの左から振り下ろすがこれもルフトが剣で弾き飛ばす。するとリッターは後ろにのけぞり、その勢いを利用して顎を膝で蹴った。そして間合いを取り、

「どうだ、やっと一発入れたぞ。」とニヤけていった。だがリッターも体力が限界に近づいており、剣を構えるのがやっとになっていた。それを見てルフトは

「まだ満足しないか?」と聞くがリッターは剣を構えたままだった。

「そうか、残念だ。」というとルフトは間合いを詰め、剣を首を目掛けて振った。この時リッターにはもう余力は残っておらず、防御ができなく、死を覚悟して目を閉じた。この時のリッターは実に潔かった。彼女は根がまじめで曲がったことが大嫌いだったため、人からの信頼が厚い人物であった。


   だが、目を閉じていると耳元で金属音が鳴った。かすんだ眼を開けてみるとそこにはハルトリーゲルの姿があった。

「リッター大丈夫か!」そういい倒れるリッターを抱えた。

「すまない、私はルフトに勝てなかった。」といいリッターが気を失った。それをみてルフトは

「勘弁してくれよ。俺は二人も殺したくねえよ。」と言い剣を構えた。ハルトリーゲルも剣を構えると、伝令がルフトのもとに走ってきた。

「報告!わが軍は敵に挟まれ両方からの攻撃に崩壊寸前です!」と伝令が言うとルフトは

「馬鹿な!そんなにすぐ劣勢になるのか?」と聞いた。確かに黒狼隊が背後から現れてから、挟撃されたにしても崩されるのが早かった。すると伝令は

「後方から攻撃している敵兵のなかに、一人の男が現れてから一気に劣勢になったようです。」と答える。

「全軍撤退。全員自分が逃げやすい方向に撤退するように伝えろ。あと、この命令は各隊長が命令したことにしろ、責任はすべて俺が持つ。」それを聞いて伝令はルフトの言うとおりに伝えてまわった。そしてルフトは

「命拾いしたな。」といい馬に乗って味方の撤退を援護しに行った。ハルトリーゲルはすぐにリッターを救護班のところへ連れて行った。そこでハルトリーゲルがヴァイスハイトに

「敵に突撃していったのはアドルフか?」と聞くと

「ああ、ノアがナハトを連れてくるとすぐに出て行った。」と答えた。アドルフは突撃している味方兵のもとへ行って士気を上げ、次々に敵兵を倒していった。結果的にその行動がリッターを助けることになった。


   そして遂に、敵主力撃滅作戦は完璧とは言えないものの勝利を収めた。敵兵は続々と撤退していったが、川と山に挟まれた戦場でうまく撤退できず、ほとんどを倒すことができた。そしてクリスタ軍は兵士3000人ほどを失ったが、敵兵を約53000ほど撃破し、敵将3人を打ち取った。これによりサボジオ軍の戦力を大幅に減少させることができた。この作戦に参加した黒狼隊、深緑隊、白金隊はひとまず首都のセレウスに帰還した。


   帰還した後、各隊の隊長と本部で作戦会議が開かれた。初めにトラオムが話し始める。

「とりあえず前回の作戦みんなご苦労さま。じゃあ早速で悪いけどザボギア攻略について会議するね。」続けてザボギアについての情報を話す。

「ザボギアはね、難攻不落で包囲しても食料を都市の中で補えるし、壁は高いし門は固いうえに二重だし、正直かなり難しいんだよね。」それを聞いて参謀のオルドヌングが

「内側から崩壊させることはできないか?」と聞くとアドルフは

「いつもならそういう手も使うんだが、前の戦いでうちのルフトが重傷でな。」と答えた。するとヴァイスハイトが

「時間がかかってもいいなら一つ方法があります。」と言った。そのヴァイスハイトの作戦を聞きトラオムは

「面白い作戦だけど、こっちが時間をかけるってことは向こうにも準備させる時間ができるってことだけど、そこらへんはどうなの?」と聞いた。するとヴァイスハイトは

「正直言ってそこは賭けです。」と答えるとトラオムが

「じゃあ一応ここのみんなで多数決とろっか。」といい多数決を取った結果3対4で作戦決定となった。

「じゃあ工兵隊の人たちと相談してから、陛下に報告してくるからちょっと待ってて―」といい部屋を出て行った。1時間ほどするとトラオムが帰ってきて

「陛下が作戦認めてくれたよ。あと作戦準備に2か月かかるらしいから作戦決行は2か月後だね。じゃあよろしくー。」といい各々解散した。


   アドルフが部屋で休んでいるとドアをノックする音が聞こえて

「リッターだ。少しいいか?」と言ってきてアドルフはリッターを部屋に入れた。

「アドルフに頼みがあって来た。」とリッターが話しだす。アドルフが

「なんだ?」と聞くとリッターは頭を下げて

「私に稽古をつけてくれ。」と言うとアドルフは

「もちろんいいが、もう仲間なんだからこんなことで頭を下げるなよ。」と答えるとリッターは顔を上げ

「感謝する!」と答えた。

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