第16話 敵主力撃滅作戦ー④

―――ルフトの戦場

   ルフトは馬で走りながら、敵将にナイフを投げつけた。敵将はそれに気づくと、ナイフを躱して近づいてくるナハトに向かっていき斧を振るとナハトは馬から飛んで避けた。

「おめえ名乗りもせずにナイフを投げるとはいい度胸してんなあ!」と敵将が怒鳴る。

「おれはユーバメンシュ!サボジオ軍最強の男だ!」と名乗るとナハトは黙って短剣を構えた。

「おいおい、相手が名乗ったってのにてめえは名乗らねえのか?無礼な奴だな。」それを聞くとナハトは

「俺は密偵だ。自分の素性を知られるわけにはいかない。俺には自分自身の生死をも隠す義務がある。」と答えた。

「なるほど密偵か。おれはお前みたいにこそこそしてるやつが大嫌いなんだよ!」そういい馬に乗ったままナハトに切りかかった。それをナハトは軽くかわしユーバメンシュに反撃をする。その反撃もユーバメンシュは躱す。

「今なんで馬を攻撃しなかった?お前なら出来たろうよ?」と聞くと

「隊長に馬を狙うなと言われている。」とナハトが答えるとユーバメンシュが

「お前んとこの隊長はちゃんとしてるみてえだな。」といい馬を降りた。

「これでフェアな戦いができるだろ?」といい斧を構える。お互いに間合いを取るとナハトがナイフを投げ、それをユーバメンシュが斧を盾のようにして防ぐと、ナハトが間合いを詰めて斧を蹴って飛びそのまま前に回ってユーバメンシュの脳天に踵落としをした。これは完璧に決まりナハトは着地して間合いを取る。するとユーバメンシュは

「いってえな!俺じゃなきゃ気絶もんだぞ!」といい頭を抑える。それを見てナハトはとても驚いた。普段ならこれで気絶させて拘束するなりとどめを刺すなりできていた。そしてナハトは、打撃で気絶させてから倒すのが無理と判断した。そこからは短剣を使って戦うが、体術を使わない攻撃は単純になりユーバメンシュも攻撃を躱せるようになった。ナハトが間合いを詰めたとき、ユーバメンシュはその動きを読んでいて斧を振り下ろすと、ナハトは後ろへ躱し反撃をすると、信じられない光景が見えた。ユーバメンシュが斧を振りかざしたとき、そのまま斧を地面に刺して、その持ち手の部分を足場にして先ほどのナハトのように飛んで前に回って踵落としをしたのだ。これは見事にナハトの脳天に直撃し、ナハトはその場に倒れこんだ。ユーバメンシュは

「どうだ!おめえの真似をしてやったぞ!」と斧を抜いて笑っていた。ユーバメンシュは。身長225cmほどの大男で体重も143kgぐらいある。そのような大男がナハトと同じ動きをするとは誰も想像できないだろう。ナハトもこの攻撃は予測できなかった。頭から血を出して倒れこんでいるナハトにユーバメンシュが

「もう立つこともできねえだろ?声も聞こえてるか怪しいか。今楽にしてやるぜ。」といい斧を振り下ろし、あまりの威力に砂煙が舞った。そして砂煙が引いてくるとそこのナハトの姿はなかった。ユーバメンシュが

「何!?」といい驚いていると急に足の力が抜けて膝から崩れ落ちた。

「なんだ!どうなってる!」ユーバメンシュが混乱していると首にナハトの短剣が見えた。ユーバメンシュがそれをみて理解したときには、首から大量の血が出ていた。そして、その場にユーバメンシュが倒れこんだ。ユーバメンシュが斧を振りかざしたとき、ナハトはそれをユーバメンシュのまた下に転がり込み躱していた。その後ユーバメンシュの両足のアキレス腱を切り、膝をついたときに首を切っていたのだ。そもそもナハトは密偵であるため、敵に拘束された時などの訓練もしていて、毒や痛みによる判断力の低下や行動の制限が普通の人よりも少ない。そのため脳震盪が起きて意識がもうろうとしている状況でユーバメンシュを倒すことができたのである。ナハトはユーバメンシュが倒れたのを見て味方の救援に向かうために馬に跨ると気を失ってしまった。


   ナハトを乗せた馬が走っているとたまたまノアとハルトリーゲルに会い。それを見たノアが

「ナハト!意識がないんだ。ハルトリーゲル!僕はナハトを送ってくる。君はリッターの援護に行ってくれ!」というとハルトリーゲルは

「まかせろ!」と答える。別れ際に

「気を付けてねー!」とノアが言うとハルトリーゲルは頷いた。


―――リッターの戦場

   リッターは敵将のところまで行くと馬を降り、

「私の名はリッター!クリスタ軍、黒狼隊分隊長である!貴殿の名を伺いたい!」と剣を抜く前に聞いた。すると敵将は馬を降り

「俺の名はルフト!ルフト隊の隊長だ!」と答えた。続けてルフトが

「俺はあんまり女と戦いたくないんだけど。引いてくれない?」というとリッターが怒りながら

「女だからと見くびるでない!」そういい剣を抜いて

「いくぞ!」といい間合いを詰め剣を振りかざした。それをルフトはリッターの剣の持ち手を手で受けて腹を蹴った。リッターは後ろに下がり

「なぜ剣を抜かない!なめているのか!」というと、ルフトは

「じゃあ抜いてやるよ。」といい剣を抜いた。次の瞬間ルフトはリッターに切りかかりリッターはそれを剣で防いだが、剣を下に弾かれたところにルフトが左のこぶしで顔を殴った。するとルフトは

「なあ頼むから降参してくれよ。俺には勝てないのがわかったろ?」という。それを聞いてリッターが

「ふざけるな!」と怒り、また切りかかったがそれを受け流されて、剣を持っている右腕をつかんでリッターの顔や腹をタコ殴りにした。リッターは何とか手を振りほどき間合いを取ったが、顔は傷だらけで腹も殴られて息が苦しくなったりして満身創痍だった。

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