第15話 敵主力撃滅作戦ー③

   アングリフは恐ろしく強かった。深緑隊のゼンティメントとアウゲが弓で攻撃し、ドルフが槍を突くのと同時にゼーンズフトが間合いを詰めて剣で攻撃する。深緑隊のコンビネーションは完璧であったが、アングリフは4人の攻撃のすべてを2本の剣ですべて捌き切る。しかも4人が少し押されているように見えた。4人はなかなか決定打を入れることができないと思い、できるだけアングリフを消耗させてキューンハイトの救援を待つことにした。だがアングリフの攻撃を避けるだけで精一杯で戦いの主導権を完全にアングリフに取られていた。するとアングリフは

「お前らこれで終わりか?そろそろこっちからいくぞ。」というと剣を構えた。次の瞬間、一気にゼーンズフトとの距離を詰め剣を振りかざした。ほかの3人も助けようとするが間に合うような速さではない。すると

「報告!」という声が聞こえてくると、アングリフは剣を首ぎりぎり止める。

「なんだ?」

「トイフェル様より、ザボギアに撤退せよ。各自、自分の判断で撤退せよとのことです!」それを聞くとアングリフは不機嫌に

「了解」と答えた。

「お前たち命拾いしたな。死にたくなければ戦場に二度と来るな。」そう言いアングリフは馬に乗り撤退していった。深緑隊の4人がほっとしていると、本隊側からキューンハイトが馬で走ってきて

「敵を追撃するぞ!全員俺に続け!」といい敵に向かって突撃した。このとき何が起きていたのか、それは別動隊である黒狼隊敵の背後から襲い掛かった時のことである。


   黒狼隊が突撃したとき、サボジオ軍の後ろには3人の指揮官が見えていた。これが、敵主力の指揮官であるトイフェル、ユーバメンシュ、ルフトの3人である。それを見たヴァイスハイトが

「ファルケ隊は敵兵を攻撃、リッターは左の男、ノアとハルトリーゲルで中央の男、ナハトが右の男を攻撃。敵将撃破後は各々援護しあってくれ、それ以外の兵は敵に向かって突撃。」と指示を飛ばす。アドルフは

「俺はお前の護衛する」というとヴァイスハイトは

「すまない頼む」という。そして馬で走りながら

「ヴァイスハイトの指示は把握したな!全員突撃!」と号令すると兵士たちが突撃していき、敵軍にファルケ隊の矢が降り注ぐ。


   隊長たちも敵将への攻撃を開始した。敵将トイフェルの相手をしたのはノアとハルトリーゲルだ。ノアが馬に乗ったまま槍を突くと、トイフェルはそれを躱した。そしてノアとハルトリーゲルが馬を降りると、トイフェルも馬を降り、

「私の名前はトイフェル。サボジオ軍トイフェル隊の隊長である。」と名乗った。

「僕はノア。クリスタ軍黒狼隊の分隊長。」

「あたしはハルトリーゲル。同じく黒狼隊の分隊長だ。」とお互いが名を名乗った。するとお互いに合図をせずに戦いが始まった。まずノアが槍で突きハルトリーゲルが間合いを詰め剣で追撃した。それをトイフェルは両方躱してノアを突き、ノアが躱すとそのまま槍を振ってハルトリーゲルを殴ったがそれもハルトリーゲルは躱した。この後もお互い攻防を続けたが実力は同等で勝負は拮抗していた。かすり傷などは負っても決定打を入れられないままどちらも体力を失っていった。するとノアが

「そろそろ勝負を決めようか。僕たちも仲間の救援に行かないといけないからね。」というとトイフェルも

「わかった私も次で決めるとしよう。」といい低い構えを取った。ノアとハルトリーゲルは縦に並んで構えた。お互いに見合いながら、先に仕掛けたのはトイフェルだった。トイフェルは低い構えから一気に近づき槍を下から振り上げたが、それをハルトリーゲルが剣ではじき落とし、ノアの鋭い突きがハルトリーゲルの脇の下から襲った。だがトイフェルの槍には細工がしてあり、槍の反対から左手で剣を抜きそれを下に叩き落とし、右手の槍でハルトリーゲルののど元を突いた。だが急にトイフェルはこめかみに打撃を受け、脳震盪を起こして倒れこんだ。実はノアが槍を叩き落とされたときに、そのまま槍を地面に刺して棒高跳びの要領で、ノアは高く飛んでトイフェルのこめかみを蹴り飛ばしたのだ。地面に倒れこんだトイフェルが話す。

「ノア、ハルトリーゲル、さすがだな完敗だ。きっと貴殿たちはずっとこんな技の鍛錬を欠かさなかったのだろうな。」

「別にこんな技練習してなかったよ。ぶっつけ本番でやってみたらうまくいったんだ。」そのノアの言葉を聞いてトイフェルは笑い出す。

「貴殿たちは天才だな。」というとハルトリーゲルは

「お前をすげえ強かったな。あたし一人なら勝てなかっただろうな。」というとトイフェルは

「自信を持たれよ。今までいろんな兵士を見てきたが、このような息の合った攻撃は見たことがなかった。ハルトリーゲル、貴殿は女性だ。これから戦うなかで様々な苦難を味わうだろう。だが貴殿ならきっと乗り越えられる。だが時には仲間に助けを求めよ。それが仲間っていうものだ。」と自分の敵に向かって助言をしたのだ。これにハルトリーゲルは

「わかった。ありがとよ。」と感謝の言葉を発した。

「私もやはり武人だったようだ。貴殿たちのとの戦いに充実感を感じていた。最後に貴殿たちと戦えてよかった。」というと続けて

「さあ、とどめを刺してくれ。もう脳が揺れて立つこともできない。」と言った。それを聞いて、同時にノアが心臓を突き、ハルトリーゲルが首を切った。そして二人はトイフェルに布をかぶせ、トイフェルの槍をそばに置いた。

「さあハルトリーゲル、味方の援護に行こうか!」とノアがいうと

「ああそうだな。」とほほ笑みながらハルトリーゲルは答えた。

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