第12話 赤猪隊奮戦!

   サボジオ軍60000は赤猪隊のいるチーシュを30分弱で包囲して見せた。この大群で都市を包囲するのにこの時間は異常な早さだった。一方赤猪隊含むレイド守備隊はまだ70%ぐらいしか配置に着けていなかった。サボジオ軍は包囲が完了した瞬間から攻撃を開始した。


   戦闘が始まり、サボジオ軍は城壁に次々とはしごをかけていき兵が上がってきた。守備隊は準備が出来きっていなかったので、いともたやすく侵入を許した。このレイドの城壁は変わった形をしており、城壁から町へとつながる階段がなんと1つしかなかった。守備隊の配置が遅れたのはこれが原因であった。だが今回はそれが逆に役に立った。守備隊は階段を固め、サボジオ軍は60000という圧倒的な数的有利を生かすことができなかった。だがサボジオ軍もそこまで単純な攻撃だけではなく、すぐに軍の半分を城門のほうにまわして城門を破壊した。だが門が開いた瞬間そこにはアンファングが立っており、前列の兵を槍で薙ぎ払った。

「俺は赤猪隊隊長、アンファングだ!ここを通りたければ俺を倒していくがいい!」そう言いアンファングが槍を構えると、サボジオ軍が突撃していった。それをアンファングは、狭い門の中で器用にやいを振り回し次々と敵を倒していき、門の中は敵の死体が邪魔で身動きがとりにくくなっていった。一方階段のほうは守備隊が耐えていたが徐々に数が減り少しずつ劣勢になっており、守備隊が壊滅するのも時間の問題であった。アンファングの見積もりでは1日ぎりぎり耐えられるかどうかだ。


―――戦闘開始から1時間

   アンファングも少し疲れてきていた。だが、まだまだ敵は門を抜けることができなかった。すると急にアンファングの背後から大勢の敵が階段から降りてきた。アンファングは驚愕した。いくら敵が大勢でも赤猪隊は精鋭ぞろいで、今までもサボジオの兵士10人を一人で相手できるぐらいの強さはあった。背後の兵の名から一人の男が出てきた。その男は背が小さく槍を持っていた。

「俺の名はクライネ、ユーバメンシュ隊の副隊長だ。お前には降伏するチャンスをくれてやる。お前んとこの馬鹿そうな兵は全員殺してやったぜ。」それを聞いてアンファングは

「俺んとこの兵をみて馬鹿だと思ったのか。お前副隊長に向いてないんじゃないのか?」と返す

「それは降伏しないと受け取っていいか?」クライネはそう言い、手を挙げて弓兵を構えさせる。アンファングは槍を構え

「俺が降伏しちまうと死んだ部下たちに会う顔がなくなるからな」といい、クライネが合図して飛んできた矢をすべて槍で薙ぎ払いクライネに鋭い突きを入れる。しかし刺さったのはクライネの槍だった。クライネは

「お前みたいな弱った雑魚に俺が負けるわけがないだろ」というとアンファングはクライネに頭突きをしてその場に倒れこみ、クライネは気絶した。


   黒狼隊と白金隊がチーシュを出て3日目に使者が報告した。

「作戦本部より報告。レイド陥落、赤猪隊壊滅、アンファング隊長戦死」その報告を聞いて全員唖然とした。本部の命令通りチーシュに帰還した。その帰路は悲しみにあふれていた。深緑隊にもこの報告が入りクリスタ軍は悲しみに包まれた。


   黒狼隊がチーシュに到着し、各々が自分の宿に入った。この時アドルフも悲しんでいたが何か嫌な予感を感じていた。しかしアドルフ自身もこの嫌な予感が何なのかがわかっていない。とりあえずこの後の作戦について話し合うためにヴァイスハイトのもとを訪ねた。アドルフがドアをノックし

「ヴァイスハイト、アドルフだ。入っていいか?」と聞くとヴァイスハイトが

「すまない、今は一人にしてほしい」と答えた。それを聞いてアドルフは話し合いを明日にしようとしたが、何となく嫌な感じがしてヴァイスハイトの扉を蹴破った。すると中でヴァイスハイトが首にナイフを当てていた。アドルフはそれを見た瞬間ナイフを蹴り飛ばし

「何してんだ!」と怒鳴る。するとヴァイスハイトは震えた声で

「今回赤猪隊が壊滅したのは私の判断が遅かったからだ。私がチーシュに留まらなかったら助けに行けていた。」ヴァイスハイトの声が震えていたのが、悲しみからか怒りからかはわからなかった。

「それで自害して責任を取ろうとしたのか。」とアドルフが言うとヴァイスハイトが「じゃあどうすればいいのだ!今回は明らかな私の失敗だここで私が責任を取らなくては...」言葉を言い切る前にアドルフがヴァイスハイトの頬を引っ叩いた。

「お前は責任をとるんじゃなくて現実から逃げたいだけだろ!」

「これからの戦いでも多くの犠牲者が出る。お前が言ってるのはその兵士たちを見捨てるということだ!おまえはすぐに死ねるような立場じゃないことを自覚しろ!」そう言いアドルフは部屋を出て行った。次の日、アドルフは黒狼隊の隊長たちを呼んで話をしたが、その中にヴァイスハイトの姿はなかった。リッターが

「ヴァイスハイトはなぜ来ないのだ?」と聞くとアドルフが

「昨日ヴァイスハイトの部屋に行ったら自害しようとしてた。しばらくはそっとしといてやろうぜ」それを聞いてハルトリーゲルが

「てめえなんでそんな状態でほってきたんだ!もしヴァイスハイトが死んでたらどうする!」と怒鳴るとアドルフが

「昨日俺が一応止めたから大丈夫だ。ヴァイスハイトがそこまで馬鹿じゃないことはお前も知ってるだろ?」というとハルトリーゲルは少し不満そうに黙った。

「俺たちは今まで場数もあまり踏んでいない状態で一回も負けなかった。その状態での赤猪隊壊滅の報告で、初めての失敗を味わったんだ。だからみんな思うことはあると思う。でもこれからも俺たちはもっと苦しむことになる。その覚悟が必要だ。」アドルフがそういう風に話したが、その場の全員が覚悟が決まったような顔をしていた。


   次の日、本部からオルドヌングがやってきた。

「次の作戦について現場の隊長と相談することになり参上した。」それを聞いてアドルフが隊長たちを読んだ。今回はヴァイスハイトも参加していた。みんなが大丈夫かと聞くとヴァイスハイトは申し訳なっそうに

「すまなかった。もう大丈夫だ。」と返した。そして全員がそろったところで作戦会議が始まった。

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