第11話 大攻勢

   ラメロを奪還した白狼・烏隊は、ラメロ守備隊の補充が来てから港湾都市カミレ奪還へ向かった。前回の深緑隊の活躍により、サボジオ軍主力のアルメヒティヒを討ち取ったことによりクリスタ軍は大攻勢に出ようとしていた。その計画は、白狼・烏隊をカミレ、深緑隊をチーシュ、赤猪隊をレイドの東の都市シトルに送るものである。


   白狼・烏隊がカミレに向かって行軍しているときに作戦本部からの使者が来た。その内容は、今回のラメロ奪還を見てこれからは白狼・烏隊を1つの隊とし、その隊の名前を黒狼隊とするというものだった。その話を聞いてアドルフとヴァイスハイトが握手し、ここに黒狼隊が編成された。そして、新しく黒狼隊となったことで今後のことを話し合っている間に目的地カミレが見えるところまで来た。港湾都市というものは、文字の通り都市に大型の港がある都市のことである。そのため、城壁は陸側だけについており海は常に水軍が哨戒している。それに加え港湾都市は、制海権をとらないと敵の補給線を遮断することができなく、城壁が陸側にしかないので兵が集中しやすく落とすのが困難である。カミレの守備隊は5000人ほどだ。だが、カミレがある場所はもともと土地が平野ではなかったため城壁のところどころが巨大な岩を跨いでおり、その場所は地上から城壁までの距離が短かった。しかし、そこに攻城塔を置けるようなスペースはない。

   

   そんな中カミレ攻略戦が始まろうとしていた。ヴァイスハイトは、やはりその岩を跨いでいる場所に注目した。ヴァイスハイトが隊長達に作戦を伝え、全員が配置についた。アドルフの攻撃開始の声とともに全員が前進する。今回も隊が3つに分けられた。中央の隊はアドルフ隊450、左翼はノア隊1500とリッター隊1600、右翼はハルトリーゲル隊とレッフェルン隊それぞれ1600で、ファルケ隊3000が1000人ずつそれぞれの軍を援護した。ファルケ自身は3隊が見えるところから弓を構えていた。城壁に接近するときにすべての隊は兵士に盾を持たせて、要塞のように全方位を盾で守ってゆっくりと進んでいった。カミレの守備隊もそれを見て矢を撃ってきたが全く効かない。そのまま3隊は岩の上に上ると、城壁に近い兵士は肩車をして盾で城壁を上る坂道を作った。黒狼隊は、盾を展開するのがとてつもなく速かったが、それでも隙ができるのでファルケ隊が城壁の上の兵士を恐ろしい精度で射っていく。ファルケは3隊を見て取りこぼした弓兵を射っていた。ファルケのいる場所は3隊が見えるところなので城壁からかなり離れていたが、ファルケの矢は城壁の兵士に当たっていた。はっきり言ってこれは人間ができる芸当ではない。それぞれの隊が盾で作った坂道を駆け上がり次々と敵を倒していった。


   この戦いでも黒狼隊の被害は、けが人が出たくらいでカミレを奪還した。これは言うまでもなく神がかりな戦いだった。黒狼隊はカミレを奪還することができたが、深緑隊と赤猪隊は意外にもチーシュとシトレを落とせなかった。これは本部も予想できなかった。この二つの主力部隊が、都市を落とせなかったのは包囲しているときに敵の主力がすぐに増援としてきたからだという。敵主力から撤退するとき深緑隊と赤猪隊がそれぞれ2000ほどの兵を失い、一度深緑隊はロクスワに、赤猪隊はレイドに兵の補充のために戻った。この2つの隊はセレウスから兵が送られてくるまで出撃ができなくなった。そこで本部は、新しく編成したエーデルシュタインの兵で構成した白金隊5000と黒狼隊10000でチーシュ奪還、できれば敵主力の撃破を命令した。本部の予想では、敵主力は3部隊ですべてがサボジオ首都のザボギアで待機しており、チーシュかシトルが攻撃されたときにすぐに援護できるように道を整備しているとのことであった。なのでクリスタ軍は敵都市を包囲してから1日で陥落させなくてはならなかった。本部はそれらを見て、ザボギアから近いレイドがとられると敵の防衛線がより強固になると考え、レイドに赤猪隊の補充と追加の守備隊10000人の兵を送ることを決定した。


―――1週間後

   黒狼隊と白金隊が合流し、チーシュを包囲した。黒狼・白金隊は包囲してからその日のうちにチーシュを奪還した。だが包囲から奪還まで2日かかってしまい、連合隊は急いで隊を整えた。そこから1日が経ったが敵は攻めてこなかったが、ヴァイスハイトの判断で一応もう1日待機した。次の日も敵は攻めてこなかった。そして本部からの使者が来て報告をした。報告を聞くと、レイドに敵主力約60000すべてが終結し包囲されたということで、黒狼・白金隊はレイドへ出撃命令が出された。


―――2日前

   レイドには赤猪隊が待機していた。赤猪隊は、前回シトル攻略戦に失敗した後レイドに撤退して補充の兵を待っていたところだった。その時本部からの、赤猪隊の補充と追加の守備隊20000を待っていて、翌日には就く予定だった。アンファングはレイドで増援を待っている間にずいぶんと市民と仲良くなった。アンファングが都市の市民と仲良くなることはいつものことで、これはアンファングが好んでやっているのと市民と親しくなることで都市の状況を把握できるからだ。アンファングが都市の中を見て回っているときに、赤猪隊の兵士が敵約60000がレイドに向かってきているという報告が入った。アンファングは急いでレイドの守備を固めて自分は城門の上に移動した。城門の上から見ると確かにとてつもなく多い兵がこっちに向かってきていた。

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