第6話 ラコールという国
アドルフたちがセレウスを出て3週間後、目的地のラコールに到着した。ラコールには出迎えが来ていた。その案内人について城の"本丸"に行った。本丸には、ラコール国王のゼラフが"畳"に座っていてアドルフたちを歓迎してくれた。
「遠い国からよく来てくれた。今日はゆっくりと休み、明日からは案内人を付けよう。」というゼラフの言葉のとおりアドルフたちは宿で休んだ。翌日、フランメという者が案内人としてつくことになった。アドルフたちは街を案内されているときにフランメに質問した。
「なぜこの都市は城壁が城のところにしかないんだ?」
「わが国は、城を攻めるときや落とした時に市民に危害を加えるということが禁止されております故、城はすべてこの形になっております。」
そのフランメの言葉を聞いてアドルフは感激した。その後もアドルフたちは水軍の演習を見せてもらい、陸軍の演習も見て回った。陸軍の演習を見終わった時フランメがアドルフに話す。
「いまから私と手合わせをしませんか?」
それを聞いたアドルフは
「もしも俺が一本取ったらこの国の剣を俺に一本作ってくれるならやるぜ。」
というとフランメはそれを受け入れた。実はこのフランメという男は、ラコールの国内最強とうたわれる剣士だった。そしてフランメが使っている、反っていて刃が片方にしかついていない細い剣を見てアドルフはその剣を欲しがったのだ。
フランメとアドルフの手合わせが始まる。始まりの号令の瞬間、フランメはお互いに剣を抜く前にお互いの間合いに入り、すさまじい速さで剣を抜いてアドルフに切りかかった。アドルフはフランメが剣を抜いたときにまだ剣を抜けていなかった。だがフランメの剣は、アドルフから逸れていった。フランメは戸惑った。自分が完璧にアドルフをとらえて剣を振りかざしたのに自分の剣が逸れていったからだ。するとアドルフはフランメを蹴って後ろに下がらせた。フランメが体勢を立て直すが、気づいたときにはアドルフの剣が首元にあった。これでフランメは負けを認めた。二人が剣を収めて話す。
「クリスタには貴殿のような強者がいるとは、恐ろしい。」
「フランメもかなり強いな。あんなに早く剣を抜く奴は初めて見たぜ。」
約束通りフランメは、国で一番腕のいい鍛冶屋にアドルフの剣を作るように頼んだ。その剣は出国までには渡せると鍛冶屋は伝えた。その後アドルフたちは宿に戻り、報告資料をまとめた。資料を作っているときノアがアドルフに話しかけた。
「あのフランメって人かなり強そうだね。」
「ああ、多分あの時のは本気じゃ無かったろうな。多分小手調べだ。」
「そういえばヴァイスハイトは今日一日で水軍のことわかったのか?」とアドルフがヴァイスハイトに聞き
「この国は島国なだけあって水軍の練度がかなり高い。かなり勉強になった。」と答えた。そんな会話をしながらその日は資料をまとめて休んだ。
次の日は、一通り軍を見たということで遊んだ。この日は遊んでいたので、一日が早く過ぎた。いよいよ出国の日フランメと鍛冶屋が港に来ていた。鍛冶屋から渡された剣はとても出来がいいもので、なかなか刃こぼれもしないように出来ており国宝級だと鍛冶屋が自負していた。アドルフもその剣の出来に驚いていた。フランメがアドルフに話しかける。
「貴殿との手合わせはとても楽しかったです。是非またお越しください。ちなみに、私たちの国のは剣ではなく"刀"と言われるものでございます。」その話を聞きアドルフは礼を言い、船に乗り込んだ。これでラコール視察は終了した。
ラコールを出てから1週間が過ぎたころ、アドルフが甲板上で刀の手入れをしているとヴァイスハイトが話しかけてきた。
「その刀よっぽど気に入っているみたいだな。」
「ああ。この刀は今まで見たこともないぐらい出来がいい。これをくれたフランメと鍛冶屋のおっちゃんには感謝しねえとな。」それ聞くとヴァイスハイトは「そうか」とだけ返した。すると船員が急に
「敵襲!海賊だ!」
と叫んだ。慌てて見てみると、海賊船1隻に150人ほど、小舟に10人ぐらいが10隻の船がこちらに向かってきていた。これを見てアドルフはすぐに
「船員は全員船室に入れ!ヴァイスハイト、お前も船室に入ってろ。」
と指示した。甲板上にノアたちも出てきた。ファルケは急いでマストの見張り台に上った。船員が全員船室に避難しきったくらいに海賊船から矢が一本飛んできた。その矢には紙が巻いていて、その内容は持ち物すべてを渡せば攻撃はしないというものだった。アドルフはその矢をファルケに渡し、海賊船に打ち返した。すると海賊たちが一気に距離を詰めてきた。まず小舟10隻が左舷のほうに回り込み縄をかけてきた。それと同時に海賊船も横に着けて乗り込んできた。海賊たちはあっという間に船に乗り込みアドルフたちを囲い一斉に攻撃してきた。だが襲ってきた海賊たちは次々に倒されていった。この戦いでノアが一番活躍できていた。敵が大勢並んでいるところに鋭い突きを入れ、そのまま横に敵を薙ぎ払って海に落としていった。普通の兵士ではこのようなことはできるわけがない。ノアも十分な化け物だった。上からはファルケが放った矢が、下ではノアが薙ぎ払いノアの隙を全員で補っていき、海賊の数はどんどん減っていった。ついに最後に残ったのが海賊の船長だけになった。その船長に向かいアドルフが
「国まで捕虜になるか、ノアと一騎打ちをするか選ばせてやる。」
と言ったが、船長は無謀にもノアとの一騎打ちを選んだ。
この船長も実力はあるほうだとは思うが、この船の7人にかなうほどではなかった。そんな船長にアドルフは遠回しに捕虜になるようにいったのに一騎打ちのほうを選んだ。一騎打ちが始まり、船長が剣を振りかざしたが、それをノアは一瞬で弾き飛ばし槍の反対側でみぞおちをついた。船長の息が止まる。そしてノアがとどめの一撃を入れた。この襲撃による被害はなく、戦いの後始末をしてまたクリスタを目指した。
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