第4話 ロクスワ奪還作戦

   作戦本部からの指令で、赤猪隊と白狼隊がれいレイドから出撃する。レイドからロクスワまでは1日ほどで到着する。この東からレイド、ロクスワ、港湾都市スワロは横に並んでおり、それぞれの都市が隣の都市に1日程度で移動できるので重要な防衛線となっている。参謀部の人間がロクスワ奪還を主張したのはこれも関係している。

   レイドを出てから移動中にアドルフがアンファングに話しかける。

「アンファングさんの軍の分隊長を教えてくれ。」

「俺の隊にはそんなのはないぞ。」

その返事にアドルフは固まった。確かに赤猪隊には分隊がなく、戦術を立てて細かい動きをするのは苦手である。だがそんなものが必要がないくらい戦いが始まると隊の全員がアンファングに士気をあげられ狂ったように戦う。これがなぜかかなり強い。ただ基本的に突撃ばかりする隊なので戦死者がかなり多い。それでも軍に信頼されて使われるだけあって、隊長のアンファング自身もとてつもなく強い。するとアンファングからもアドルフに話しかけた。

「アドルフ君。君のことを試験で見たいたが君もかなり強いね。」

とほめてくれた。そのような会話をしているうちにロクスワまでの道の半分を過ぎたころ、前方に戦列が見えた。なんとそこにはサボジオ軍約20000ほどの敵兵が陣を張っているのが見えた。それを見てアンファングは「白狼隊は俺たちの隊の隙を埋めてほしい。」とアドルフに伝えるとアドルフはその指令を受けた。


   白狼隊が陣を張っていると軍の前のほうからアンファングの声が聞こえてきた。

「赤猪隊!ついに俺たちの出番が来たぞ!俺たちは今から敵に突撃し、敵を蹴散らすぞ。敵は俺たちの2倍くらいいるが俺たちなら問題ない!」この声は赤猪隊の後ろに陣を張っている白狼隊にもはっきりと聞こえた。

「俺たちは強い!負けない!前だけを見ろ!行くぞ!赤猪隊おれに続け!」その声がと同時にアンファングは敵に向かって突撃し、兵士たちもそれに続いて突撃していった。それを見てアドルフは驚きを隠せなかった。アドルフからしたらそれは自殺行為にしか見えなかった。赤猪隊に敵の弓兵が放った矢が降り注ぐ。そんななか赤猪隊の兵士たちは、おびえることもなくそのまま突撃していった。アドルフはその様子を見て敵に打撃を与える目に全滅だと思い、白狼隊にも前進指示を出した。だが以外にも赤猪隊は減っていなかった。そして赤猪隊はその勢いのまま敵の陣形のど真ん中に突撃した。敵兵は陣形を張っていたのにもかかわらず蹴散らされた。敵陣の真ん中に亀裂が入り、そのままアンファングが左翼を攻めると兵士たちもそれに続いて左翼を攻めはじめ一瞬にして敵軍は壊滅した。赤猪隊を援護すべく前進していた白狼がついたころには敵は全滅していた。白狼隊は援護を頼まれたが援護に入る前に戦いは終わったのである。

   

   戦いが終わり、兵士たちが装備の点検や休憩をしているときにアドルフがアンファングに話しかけようとすると、アンファングはなにか考え事をしていた。アドルフがアンファングにどうしたのか聞くと

「敵はあまり連携できてなくてしかも敵将らしき人物が見当たらない。」と言った。それを聞いてアドルフが慌てて本部への使者を送らせようとすると、アンファングが「使者はもう送った。」と言った。すると本部からの使者がきて

「都市セビア、3日前に陥落!」と言った。これにはアンファングも驚いた。敵の主力は自分たちが叩いたと思っていたのに3日前にセビアが落とされていたのだ。こうなると、赤猪隊と白狼隊で急いでロクスワを攻める必要があったが、先ほどの戦いで赤猪隊の三分の一を失っていた。赤猪隊は作戦続行不可能となっていた。なので赤猪隊と白狼隊はライドによってから首都セレウスへ帰還することを決めた。


   翌日アンファングが送った使者が本部に到着した。本部はロクスワ攻略失敗の報告を聞いて唖然とした。今回の作戦によってスワロにいる深緑隊が包囲され、クリスタの都市は12都市中5都市が占領された。このままではクリスタ軍の主力である深緑隊の全滅と首都セレウス攻撃という最悪な状況に陥ってしまう。この状況を見て国王がある命令を出す。それは本部の主導権を参謀部から取り上げ、その主導権を近衛師団長のブリッツに渡すというものだった。この命令には参謀部は不満が多かったが、国王からの命令ということで誰も口出しできなかった。そしてその後の作戦会議でブリッツが驚く発言をする。

「ここからの反撃作戦はヴァイスハイト、お前に作戦を考えてもらう。」この発言に参謀部の人間達から反対意見が多く出たがブリッツはこれを聞き入れなかった。確かに、作戦を一人の人間に決めさせるのは異例であったが、ヴァイスハイトはこれを受け入れた。


―――3日後

   ロクスワ攻略から赤猪隊と白狼隊が帰ってきた。それとほぼ同時にヴァイスハイトが作戦をブリッツに伝えた。ブリッツはこの作戦を受け入れ、すぐに作戦を発動した。作戦が発動されるとすぐに白狼隊はレイドの烏隊と合流するために、セレウスを出た。赤猪隊も先日の戦いで失った兵力の訓練をすぐ始めた。


―――作戦発動から3日後

   白狼隊はレイドに到着し翌日からの出撃に備えて休んだ。そして翌日、ついに作戦の日が来た。すると本部からの使者がレイドに来た。その報告にアドルフは驚いた。なんとその使者の話によると、サボジオが急に休戦交渉をしてきたという。サボジオはセビア、ロクスワを返還するという条件を出してきてそれを国王が受け入れたという。これにより急に始まった戦争が約一か月で急に終わった。

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