第3話 チーシュ奪還作戦

   チーシュ奪還のために赤猪隊が出撃した。ロクスワからチーシュまでは、4日ほどかかり森の中を抜けていく道になる。赤猪隊がロクスワを出て3日目の明け方、アンファングを先頭に馬を走らせていると列の後ろのほうから「敵襲!」ということが響いてきた。なんと一週間たっても攻撃してこなかったサボジオ軍主力が森の中に潜んでいたのだ。サボジオ軍は、あえて連携の問いにくい列の後方を狙って奇襲してきた。この時、赤猪隊は森の中を2日間進み続けてもう少しで森を抜けられるところだったので、全員が油断していた。敵の奇襲により味方の兵士が連携できずにどんどんと敵に押されていっていたときアンファングが「俺が隊長のアンファングだ!全員俺に続け!」とかなり大きな声で叫ぶと、後方の敵に向かって突撃していった。その声と行動を見て周りの兵士もアンファングに続いてきた道に向かって突撃していった。このとき兵士たちは、2日間もかけて出口の直前まで来て来た道を引き返すことに疑問を持っただろうが、アンファングの声と勢いにその疑問はかき消された。赤猪隊は陣形も関係なくとりあえずアンファングの後に続いて突撃していった。この突撃はすさまじく奇襲を仕掛けた敵兵がどんどん蹴散らされていき、とりあえず赤猪隊は敵の包囲を脱することに成功した。


   敵の包囲を突破した後赤猪隊は、半日ほどロクスワに向かって行軍しもう森の中は暗くなってきていたので、偵察を送りながら休憩をとった。次の日、偵察から敵の姿が確認できなかった報告を聞くとアンファングは、兵士たちの損耗や武器の数などを確認し、森の中に防御陣地を作るように指示を出した。アンファングは、このままロクスワのほうに向かって行軍するのも考えたが、敵の場所が分からない状態で森を出たところに敵軍が陣を張っていたらまずいと考えとりあえず森の中に防御陣地を作ったのだ。その日の夕方には簡易的な防御陣地が完成した。先日の奇襲により、もともと10000人いた赤猪隊は9000人ほどに減っていた。敵の主力はおそらく20000ほどがいたとは思うが、森の中だったこともあり部隊の被害はおされられたほうだと思う。次の日もアンファングは、また偵察から敵の姿を確認できなかったことを聞きその日も防御陣地で待機した。


   次の日、アンファングはロクスワに向かって移動を再開した。森の中で2日間待っても敵が外で陣を張っている様子もなかったのでアンファングは森を出ることを決心した。その日は暗くなってくると森の中で休憩した。次の日、もう森の出口が近くなってきており兵士たちも安心し始めたが、アンファングは先日の奇襲のことも考えて油断しないように舞台に言い聞かせた。そして数時間後、部隊は森を出た。偵察の情報通り森の外に敵らしきものはいなかった。赤猪隊は少し休息をとった。すると偵察からこちらに向かってきている軍があると報告が入る。アンファングは慌てて見てみてると、その軍は白い旗に「狼」の文字があった。その軍は本部から援軍として来ていた白狼隊だった。白狼隊はロクスワから4000人の守備隊を含めて5000人の部隊で来ていた。そこから次の日からは白狼隊は赤猪隊とともにロクスワへ向かった。そして赤猪隊と白狼隊が行軍してロクスワが見えてきた時に、白狼隊のファルケがロクスワに敵の旗が立っていると言ってきた。その時その場の全員がファルケの言葉を疑った。白狼隊がロクスワを出て帰ってくるまでの1日半でサボジオ軍主力がロクスワを落としていたのである。これを受けアンファングは、本部への使者を送り自分たちはロクスワの東にあるレイドに向かうことにした。


   翌日本部がアンファングからの使者から話を聞くとヴァイスハイトが、「今すぐに深緑隊をセビアまで移動させるべきです。」と意見を出したが、それはすぐに却下された。もしも敵軍に、セレウスから東にある都市セビアをとられると深緑隊と本部の連携がとれなくなってしまうことをヴァイスハイトは恐れていたが、参謀部の人間たちは、スワロがとられてしまうと東側の港湾都市がすべて敵の手に落ちてしまうからスワロは深緑隊に防衛してもらうといった。実はこの戦争が始まってから、新入りのヴァイスハイトの意見はすべて参謀部で却下されていた。最終的に本部が出した作戦は、レイドにいる赤猪隊と白狼隊がロクスワを奪還するというものだった。もしもセビアがとられたとしても、ロクスワを奪還した赤猪隊をもってセビアも奪還し敵主力を包囲殲滅することが可能になっている。本部はこの作戦を採用した。それにより、4日後ロクスワ奪還作戦が発動されることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る