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その後は完全無視を貫いて学校を目指す。
かなり早足だった筈なのに…僕だけがやけに息が乱れていた。
下駄箱まで着けば、2年と3年では校舎が別棟になるため、必然的に此処でお別れになるのだけど…。
上履きに変え3年の教室に向かう階段に足を掛けた所で、芝崎に呼び止められた。
振り返ってみれば、芝崎はチラチラとこっちを見たまま動く気配がないし。
…さすがに3年の教室まではついて来ないと、
高を括っていたが…。
「あの、先輩…お昼は空いてますか?」
それは杞憂だったようで、
芝崎はおずおずとそう切り出してきた。
「…何かあるのか?」
コイツの事だ。
僕が常に独りで過ごしている事くらい…既に知っているのかもしれないし。下手に嘘付くのは得意じゃないから、墓穴も掘りたくはない…。
それに、
「良かったらお昼、一緒に食べません?」
…そう、おねだりしてくる予感がしてたから。
特に驚く事もなかった。
じっと回答を待つ、緊張気味の芝崎を凝視する。
階段ひとつ分。それでやっと同じ位の位置で交わるそれ。
黙っていればかなり男前な部類の顔。
なのに眉を八の字に下げ、おねだりする姿はなんとも情けなくて…つい笑ってしまいそうになるから
コイツのお陰で気づかされた事。それは…
僕がこういう母性を擽るタイプに、
とことん弱いらしい…ってコト。
僕は溜め息ひとつ。
「…別に、構わない。」
「ホント!?」
やった~!!とはしゃぐ芝崎。
デカイ図体で、子どもみたいな反応する姿には全く違和感がないから不思議。
「じゃあ、お昼になったら迎えに────」
「絶対に来るな!!」
これだけ目立つヤツに、教室まで来られるのは迷惑な話。クラスメイトの目もあるから…これはだけは断固として譲らなかった。
仕方ないとばかりに思案した結果、
本館と別館…互いの教室を繋ぐ、渡り廊下で待ち合わせる事で妥協する。
芝崎は最後まで不満そうにしていたけれど…。
僕はそそくさと逃げる様にして、教室へと歩き出した。
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