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4限目終了チャイムと同時に授業は終了し、

僕は席を立つ。


クラスメイト達は、各々仲良しグループに分かれだし…既に雑談に花咲かせ昼食をとり出した。



その中でも目立たない僕に、声を掛けてくる生徒など居るはずも無く。席を外そうが気に留める者すら、いなかった。








2年までは同じクラスで、唯一友人と呼べた『佐藤さとう』と言う生徒がいたのだけれど…。

3年進級時の選択科目で、ぷっつりクラスが別れてしまい。教室も随分離れてしまったから、接する機会も少なくなっていた。



それでも定期的に、僕の所へ遊びに来てはくれるものの…佐藤にも付き合いがあるだろうから、毎日というわけにはいかないし。


それに新学期から早3ヶ月、今更新しく友達を作るのも面倒だったし…。どうせクラスメイトが僕と仲良くしてくれるわけが無いと解っていたから…。



こうして常にひとりが、定着していたのだ。







鞄から弁当と小さな水筒の入った手提げを取り出し、教室を足早に出る。

奴を待たせると、教室まで来られそうな気がしたので、一目散に渡り廊下を目指した。




1年生と2年生はそれぞれ古い本館、そして3年生は新館に教室が有り。待ち合わせ場所はそれらを繋ぐ2階の渡り廊下にあたる。


互いにとって、そこが一番最短な合流地点になるわけだが───…そうこうしてるうちに到着してしまった。







(あっ…)


まだ来ていないと思っていた芝崎を、早くも発見。

友人らしき生徒数人に囲まれ、何やら話し込んでいるようだ。



頭ひとつ分高い芝崎は、友達に対して困ったような表情で話していたのだが…。

僕の存在に気がつくと、友人を置き去りにして。

猛ダッシュでこっちまでやって来た。






「ゴメンね先輩!逆に待たせちゃって…。」


申し訳無さそうに頭を掻く芝崎を一瞥し、クラスメイトらしき生徒に視線を送る。






「…いいのか?」


「うん、今日は先輩と昼飯食うって言ってあるから。」


そう答え、一度振り返り気さくに友達へ手を振ると。行こうと僕に向き直って、グイッと手を引いてくるので。


何だコレは…。






振り払おうにも、芝崎はずんずん長い足で歩いて行くものだから。僕はコイツの歩幅に合わせるのに必死で、されるがままの状態。


皆の痛い視線に不快感を覚えつつも…色々と面倒だったから。ここは黙って従う事にした。

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