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side. Akihito






俺の腕の中で泣き続けながら、事の顛末を語る水島。


いつもは感情を吐露するような弱さなど、

微塵も感じさせないのに…。



あんなに強固そうに見えた壁は、脆くも剥がれ落ち…。恨んでたはずの俺なんかにまで、何とも弱々しい姿を晒してきたから驚きだ。






あれだけ酷い仕打ちをしてきた相手にさえ、こうして縋りつく位だから…。よっぽどショックだったんだろうに。




不謹慎にも…

こんな状況にすら歓喜している俺もいて。


夢にまでみた、水島の感触を確かめるように。

抱き締める腕にギュッと力を込めた。






予感通り。アイツ────…芝崎とか言う後輩は、

水島に恋愛感情を抱いていたようで。


言わば同類、

眼を見れば、すぐ解る。




雑念に捕らわれ、好きだと言えなかった俺に。

とやかく言う権利はないだろうが…


水島の心を、こうもあっさり動かされてしまってたのは…正直、気にいらねぇ。





こうして今傍にいるのは俺なのに。


水島が涙し、心を痛める相手は…

ここにはいないアイツなわけで。



ようやく獲た筈の距離が、果てしなく……遠い。






話し終わっても、泣き止む事無く嗚咽を漏らす水島。

俺は今まで、こんな風に誰かに執着した事が無いから…こういう時、どう慰めていいのか解らなかったが…。



出来るだけ傷付けないよう、

優しく優しく背を撫でてやった。


雨に混じって、水島の匂いがする…








長い間、そうしていたら。

腕の中の水島も少しずつ落ち着きを取り戻し始め…。



ふと、辺りに視線をやれば。

少し離れた場所、校舎の影に隠れるよう鳴りを潜める────…




(芝崎…何しに来やがった…)


ここからでも解るくらい肩で息をして、

立ち尽くす芝崎の姿。



雨に打たれるのも忘れ、俺の存在を目にしたアイツは…あからさまに動揺していた。






(勝手な事しやがって、今更戻ってくんじゃねぇよ…)



ありったけの敵意でもって、芝崎を睨み付ける。


奴も気づいたのか、

複雑な面持ちでそれを受け止めていた。







…無かった事に、だと?

まだ滲み出てるじゃねぇかよ。


ハンパなことして、コイツを泣かせた癖に。



上等だよ、芝崎…。






隠すように腕を回し、水島の黒髪に唇を寄せる。




(来るな……)



今すぐ消えろ、


そして二度とコイツに近づくんじゃねぇ…




声を放たず、眼光だけでそう示せば。

芝崎は切なげに水島を一瞥し、拳を握り締め…項垂れる。


それから全てを諦め、振り払うように。

芝崎は全速力で踵を返し、雨の中走り去っていった。







(それでいい…。)



もう、譲る気はねぇ…。


やっと見つけたんだ。



水島は、俺のモンだ─────…

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