23
次の日、僕は熱を出した。
呼び鈴で意識を覚まし、起きようとするものの…。
体中の痛みと倦怠感、そして肥大した不安に精神的にも追い詰められ…。
起きる事も叶わず、
来訪者の存在に無視を決め込んでしまった。
三度ほど鳴らされた呼び鈴も呆気なく止んでしまい。またひどく静かな室内が、罪悪感を駆り立てて…
僕を、戒めた。
「綾ちゃ~ん?お友達がお迎えよ~!」
トントンと部屋のドアがノックされ。
仕事から朝方帰宅し、眠っていた筈の母が…どこか上機嫌で入って来る。
ベッドに入ったまま母を見上げるも、視界は虚ろ。
頬は上気していて、吐き出す呼吸も荒い。
すぐ様異変に気付いた母は血相を変え、慌て僕に駆け寄った。
「どうしたの~!?や~んっ綾ちゃんたら、お熱があるじゃないの~!!」
途端にオロオロする母に。
「…きょう、休む、から…」
何とかそれだけを伝えれば、母はハッとして我に返った。
「そっそうよねっ…。じゃあ、お友達に伝えておくわね…!」
その来訪者に向けて、僕はあからさま動揺していたのだけれど。熱が功を奏して、なんとか母を誤魔化せたようで…。
母はいそいそと、部屋を出ていった。
下から母の甲高い声に混じって、
アイツの低く心地良い声が聞こえたのに。
それにさえ逃げるようにして。
僕はあっさりと意識を手放した。
それから、熱は3日続き。
その間もアイツは、何事も無かったように…
毎朝、迎えに来てくれた。
勿論、顔を合わせる事はなくて。
メッセージの文面も、僕を労り心配する旨が綴られていたけれど…。
一度だけ、心配ないと送ったきり。
後は全て無視をしてしまった。
あの娘の事が気になる癖に、自ら聞くことに憚れて。
加えて何も言わないアイツに、
いつもと何も変わらないアイツに、
理不尽な憤りを…抱いてしまうから。
会いたくない、だなんて────…
ただ無邪気に笑って。
あの娘は友達なんだと、普段通りに話してくれればいいのに。
(肝心な事は僕に隠して、無かった事にするつもりか…)
こんな気まずい状況で、風邪を引いた時はラッキーだったと思っていたけど…。
今となっては、
この間が仇となって僕を苦しめる。
今はどんな顔をして接すればいいのか解らないから…
風邪も完治した朝。
まだ登校には早過ぎる時間に。
僕は避けるようにして、学校へと向かった。
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