他ではない君へ。

18

「…キス、したい…。」

今まで聞いたことの無いような、低く雄臭い声で僕を誘惑する芝崎。更に追い討ちとばかりに強くなっていく…腕の縛（いまし）め。

｢なっ……」

｢先輩が悪いんだよ…？オレの気持ち知ってるクセに…」

“ガマンするの大変なんだからね────…”

いつぞやのメッセージの内容。

『キスがしたい』

決して僕を、からかってるとかじゃない。

だってコイツも僕と同じ位緊張してるのが、

肌で伝い、解ってしまうから…。

｢…こんなあっさり家に入れちゃうし、オレの前で普通に裸になって無防備過ぎだし…」

｢…………」

｢オレだって…男なんだからさ。好きなコが目の前でこんな格好してたら────」

“理性飛びそうでヤバイんだよ…”

｢あっ…！」

いきなり反転させられ、向き合わされる。

逃れようにも両手で頬を固定され、動けない。

｢…キス、しよ…先輩…ね？」

｢ッ………！！」

…だったらわざわざ聞かないで、無理やりにでもすればいいのに。コイツは本当の意味での強要はしてこない。

寧ろ意地悪なくらいに、甘くおねだりしてくるから…

｢…勝手に…し、ろ…。」

僕の命令を待ちわびる忠犬は。

合図と共に、従順な態度を一変させて…

野性的な雄の部分を、魅せつける。

｢…んンッ───…！！」

そのまま、僕の唇に噛みついてくる芝崎。

じゃれるようにそこを舌で舐めとられ、つい口を開けてしまい。ここぞばかりに侵入を果たしたソレで…

深く深く奪われる。

探るように、

舌が僕のソレを捕らえ絡められて。

まるで芝崎の口内から溶かされて行くかのような…。甘い甘い痺れが、僕の心を無遠慮に侵食していった。

｢ふっ……んッァ…」

芝崎の手が、露出した背中へと這わされる。

もう片方は僕の腰を抱き寄せて…時折、厭らしく素肌をなぞってくる。

今まで感じた事の無い、強すぎる刺激は。

僕の身も心もドロドロに溶かし、思考が追い付けない。

朦朧とする意識の中で、ふと過ぎる疑問。

こんな事をあっさりとやってのける芝崎は…初めてじゃないんだろうか？

知らないコと、芝崎が…なんて想像してしまったなら。どうしてだか胸がズキリと痛み出して、

無性に涙が出そうになった。

僕はこんなこと、初めてだっていうのに…

なんだか、ズルイ────…。