第4夜
「なぜ貴様がここにいる!?」
怒りをむき出しに眼鏡男子が怒鳴る。
それを冷ややかに見つめて鼻を鳴らす悪路王。
「なーに、物見遊山だ。たまたまこの学園で強い妖力を感じてな。大当たりだった、そこの小僧と小娘が憑依するとはね」
「お前が…母さんを!!!!」
俺は悪路王に殴りかかる。
「あ、だめだ!!」
坂田先輩の静止する声が聞こえたが、もう止められない。こいつを殴らせてくれ!
バシッという音と共に俺の拳は悪路王の手で防がれる。いくら力を入れてもびくともしない
「ふん、ただの人間の小僧が私を殴るだと?笑わせる…な!!!」
悪路王は俺の体を持ち上げてそのまま突き飛ばす。俺の体はそのまま、本棚にぶつかり、ドンっという強い衝撃と激痛が体中を走る。
「安倍君!!」
月が叫びながら俺の元に走る。月は悪路王を睨みつけていた。
「ほぉ、私を睨むか?小娘」
「悪路王、その名は聞いております、最悪の鬼、我々大妖怪共々危険視する反乱因子」
「私の名がそこまで広がっているのは光栄だな」
「許せません、無垢な人や妖怪に手を出すなんて…!!」
「面白い、では私と殺し合いをしようではないか?」
悪路王はそう言うとパチンと指を鳴らす、その瞬間、空間が歪み、視界がぼやける
「な!?転移妖術か!?」
「ご名答」
眼鏡の男子の言葉にニヤリと笑う悪路王。やがて視界が正常に戻るとそこは体育館だった。
「体育館!?」
「そうだ、貴様らは他の人間や妖怪に被害が及ぶのは嫌であろう?ここで思う存分、殺し合おう!!」
ものすごいスピードで坂田先輩に突っ込んだ悪路王はそのまま、拳で腹を殴る。
「がっ!?」
「たかちゃん!!!」
それからは抵抗できない先輩方を全て倒すと、俺に向き直り凄まじい悪意に満ちた笑顔で俺を見る。
「どうだ、私は最強なのだよ」
「何が…最強だ…」
俺は先ほどの衝撃でかなりのダメージを受けた体に鞭を打ち、立ち上がり悪路王を睨む。
「まだ減らず口を叩けるとは恐れ入ったよ。今回は殺す目的ではなかったが…よろしい、貴様らを食らい、その後はゆっくりとそこに寝むる小僧共を食らうとしよう」
そういうと悪路王はゆっくりとこちらに近づいてくる。
「月!!」
俺が声をかけるとビクッとしたが、すぐに真面目な顔で俺を見る。
「憑依するぞ!!」
「わ、わかりました!!」
そうは言ったが憑依の方法が分からない。悪路王はどんどんこちらに…俺が迷っていると、月が俺の手を強く握る。暖かいが微かに震えている。俺は目を瞑り、月の手をさらに強く握る。次の瞬間、また強い風が吹く。そしてそれが止み、俺の手は鵺の爪になっていた。
「ほぉ!!何も分からずに憑依を成功させたか!!面白い!!やはりここで食うには惜しい!!」
そういうと悪路王は凄まじいスピードでこちらに襲い掛かる。俺は攻撃を防ごうと胸の前で爪をクロスさせる。凄まじい威力のパンチが飛んでくる。それを防いだ瞬間、足に激痛が走るが、爪の方は壊れた様子を見せなかった。
「防いだか!!」
そういうが早いか、凄まじい連撃が襲う。蹴りと殴りを合わせたそれは全て防げたが、身体中が悲鳴をあげている。足は後一撃でも入れられたら、折れてしまいそうだ。
「ふん、体の方が追いついていない様だな!!」
凄まじい蹴りと共に俺の体は遠くに飛ばされる。衝撃に全身に痛みが走り、口からは血がこぼれ落ちていた。
「かはっ…」
「小僧、やはり殺すには惜しい!!だが、私をここまで本気にさせた罰だ、命で払い給え!」
再び悪路王がこちらにゆっくり近づく。
「母さんの…仇…」
「先ほどから母を呼ぶとは…うん??あぁ…はははは!!なるほどそういう事か!!!」
悪路王は立ち止まり、その場で大笑いする。
「貴様、あの安倍家の人間か!!あぁ、それで母親か…確かに貴様の母親を喰らったのは私だよ」
ニヤニヤとする悪路王に殺意が芽生える。
「あぁ、あいつは美味かったよ、それも極上にな。貴様の母は必死に貴様を守っていたなー?さすがの私も胸が痛んだよ。まぁ、そんな気持ちもすぐに消えたがね?」
悪路王が笑う。殺す
「あぁ、何だったか?そうそう!!私を倒すと宣ってたな?笑わせる、いくら名家の娘だろうとこの私に敵うはずがあるまい?」
母さんの悪口…殺す、殺す
「あの時、貴様を必死に守っていたあの母親、私が貴様に手を出そうとした瞬間、土下座をして、どうか貴様を食らわないでくれと言われたよ。あぁ、あれは笑えたな。そう、約束は守ったとも。ただし、貴様の母はその骨まで食らってやったがね?ククク…はははは!!!」
殺す…殺す…殺す!!!!!
その瞬間、俺の記憶は飛んだ。
「ウガァァァ!!!」
「何!?」
(何だ!?この妖力!?私に匹敵する!?まさか!!)
「ううっ…はっ!?」
俺が起き上がるとそこは保健室だった。何でここに??そうだ、悪路王!!
俺は急いで起きあがろうとしたがあまりの激痛に叫び声を上げてしまった。それを聞いた北里先生が血相を変えてこちらに来た。
「あぁ!!安倍君!!!」
北里先生は涙目で俺を見る。後ろには先輩方が立っていた。
「安倍君!!大丈夫か!?」
「ええ、でも一体何が…」
「君は【半妖化】を起こしてしまったんだよ」
「半妖化……??」
「有る一定の条件下で憑依を完成させるならば、半妖化は所謂イレギュラー、強い憎しみや悲しみに囚われて自我を失い戦ってしまう、危険な状態じゃ」
聞きなれない可愛らしい声が響く。誰だ?
「ああ、聞きなれない声で混乱しておろう?すまんのぉ…」
そう言うと俺の前に白髪の美しい女子が立っていた。
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