3. 宇佐兄弟のチョコ事情
部活が終わり帰宅するまでの間に、多数の女子達に待ち伏せされて、チョコを20個ほど持ち帰る羽目になり、いい加減うんざりしている義彦。
「ウサ、すごいね~! 大収穫じゃん!」
学校の教材のリュックの他に、部活の汚れたユニフォームを持ち帰るだけでも、重いというのに、更に、沢山のカラフルな手提げ袋を持つ義彦をからかった、澄香。
「澄香って、甘い物好きだっけ? 食べる?」
部活帰りで空きっ腹だが、甘い物は苦手な義彦は、困ったように澄香に振った。
「えっ、チョコは大好きだけど、せっかく勇気出して手渡した女子達の気持ち踏みにじれないよ~! でもまあ、ウサの気持ち分からないでもないかも~! それだけ沢山のチョコ貰っても、肝心の本命から貰ってないなら、嘆きたくもなるよね~!」
他人事のように笑う澄香。
「俺は、どうしたらいい?」
「そんなの決まってるじゃん! 自分から、告ったら?」
「それが出来れば、苦労しないよ~!」
義彦の性格上、それは出来ないのを知っていた澄香。
「ところで、
2人の後方5mほどを待ち伏せしていた女子達からチョコを貰いながら歩いている、同じ野球部の一学年下の弟、宇佐義勝の手元を確認する澄香。
「10個くらいかな。兄貴には全然及ばない!」
兄に対し、何かと敵対心むき出しにしている義勝だったが、何一つ勝った試しが無かった。
「そんなの当たり前じゃん! 義勝が、10個もらえただけでも御の字ってとこ!」
義彦と比べるのは、鼻から無理が有ると突き付けたい澄香。
「澄香からも、貰ってないし」
ふてくされたような口調の義勝。
「私は、あなた達兄弟には渡さないよ~!」
それでなくても、義彦との噂がよく耳に入り、迷惑に思っている澄香は、これ以上、周囲の女子達を敵に回したくなかった。
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