j氏へ
遠藤ららこ
j氏へ
j氏。
私が貴方にあだ名をつけたらそうなりました。名前を少しいじったものです。
j氏は姿も声も温度も、ない。人を選んで選ばれて、人によって、感じるj氏は少し、あるいは全く、異なるでしょう。
私の中にいるj氏は私の妄想で、だから確実にj氏でしょう。
人がj氏の名前を呼ぶとき、二つのパターンがあると私は思います。
一つは信仰心。もう一つは反抗心。
他人を殺そうとするか、j氏を殺そうとするか。
私は何度もj氏の名前で殺されかけました。
j氏、貴方は、そこにいるだけで指(ありませんが)一本も動かすことはないので誰も何も殺しませんが、自分の中のj氏のみを信仰する人は、人を物を壊します。
殺すのです。
(精神的な死という含みを私はいまいち理解できませんが、人の心が病んだ時には死がチラついたりするので、殺す、という表現を使います)
反抗心というのは、j氏を何度も殺します。殺そうとします。そしてそれは当たり前のことです。
j氏は生き返るから、その繰り返しで新しくなるから。
たまにはj氏を殺してあげて、j氏をまた、新しく美しくしてあげるべきです。
j氏は死にません、新しくなるだけです。ご安心を。
だけど私は、j氏を殺しの理由にする人の味方になってしまいます。
j氏が死ぬところを見たくないからです。
私の心の中のj氏を、少しでも傷つけようものなら、その人が優しく、新たなj氏の為に、誰かの為に、戦う者に対して「殺してやる、そこで死んでいろ!」と心の中で醜い叫びを反響させます。
私の中のj氏は、私を嫌い、蔑み、拒絶します。
私はj氏から愛されることなんてないのです。そしてそれは私以外のj氏からも同じ扱いになると思うのです。
私は先天的にも後天的にも、変わった作りの頭をしていて、それは体の動きにも、しゃべり方にも、思考回路にも、影響します。
共感されることが、することが、一番難しい人生を送っています。
だから例にもれず、j氏も私が嫌いみたいで、愛されているなんて感じたこと一度もありません。
だから本来私は、j氏を殺そうとする人の味方をするべきで、私は私の、延いては同じように苦しんでいる人の安心のためにも、こんなこと思ってはいけないわけです。
第一、醜いでしょう、人の不幸を願うなんて、幸せを奪おうとするなんて。
こんな醜い私は、j氏のことを愛しているわけはないんです。
j氏。
貴方が全て、私の言いなりになればいいのに。
j氏へ 遠藤ららこ @gnepuy
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