第2話 ありきたりな、物語の始ま……



 ーーここは、どこだ?


 男は白い空間で目が覚めた。

 床もなければ天井もない。陰もなければ光もない。ただ、白かった。


 「お主、なかなか辛い人生だったの。なるほどのぉ……親は死んで。ふむふむ。この警察官が義理の父親が。ふむふむ、それで家族を殺した犯人を探しす為に警察官にか……だが、全てに裏切られ死んだと。なるほどのぉ……それでお主どうしたい?」


 目に見えないが、優しい声が聞こえる。

 その声は、殺気立っていた自分の心を優しく包み込んでいた。


 ーーなんだこの……ふわふわした感じは。どうしたい?ってどう言うことだよ。あれ?そういえば、俺ってなにしてたんだっけ……確か……


 「は!?」


 男は刺されていたと思い腹部を抑えたが、血も出てないどころかそもそも身体がなかった。

 気づいた時には、無いはずの身体があるような不思議な感覚だけが男には残っていた。


 「大丈夫じゃ。お主はもう死んでおるからな。今は魂だけがここに残っておる。それでお主、どうしたい?」


 謎の声は、男に同じ質問をした。

 どうしたい?っと。


 「どうしたいって……あれ、声が出る。どうしたいってどう言う事ですか?」


 「この人生を振り返って見ての話じゃ。お主はどうしたい?素直な気持ちを言えば良い」


 「……」


 男は言われたように、人生を振り返ったが思い出すのは死ぬ最後の日だけだった。

 そう……全てに裏切られた、最後の日……


 「なんじゃ?言いづらいのか?ここは魂の世界じゃ。お主が何を思い、何を言おうとも誰も気にしないぞ」


 「……殺したい。あいつらを殺したいです」


 「まぁ……そうじゃろうな。じゃが、いっそのこと他の世界へ行き、新しい人生を送るのはどうじゃ?まぁ、どこの世界は行ったところで、そこまで大差は無いのかもしれんがの。人を貶め、脅し、堕とす者はどこにでもいるからの。だからこそ、お主の綺麗な心、正義感、優しさを復讐にではなく、新たな世界で正義として使ってほしいのじゃよ……」

 

 「……」


 男は、返事をためらった。

 それは、自分のいた世界では未練なんてものはない。ただ、殺してやりたいと思う復讐心だけだったからだ。謎の声が言うように、新しい世界で忌々しい記憶のない自分でいられるのなら、幸せなんじゃないかと……そう思ってしまったからだ。

 そのまま、数分考えると男はある提案を持ちかけた。


 「力は手に入りますか?生まれ変わるとしたら」


 「そうじゃな……生まれ変わる世界でも変わるが、お主の功績を考えれば、それなりに強い力を渡してやらんでもないぞ?」


 「……なら、元の世界でいいので……力をください。あいつらに復讐を……そして、これ以上被害が出ないように止める力を俺にください!!!!!!!」


 「ふむぅ……正義を成すための復讐か。そうじゃの……じゃが、それは難しい。お主のいた世界で魔法は無いからの」


 「難しいって事は、あるにはあるってことですよね!」


 「もちろんじゃ。制限は掛かるができる。知識や肉体を変化させたりなどの、身体的な力を授ける事はできるぞ。肉体であれば、筋力はもちろん、見た目なども変える事はできる」


 「身体的な事……それは、自分だけじゃなく他の人間に対しても可能ですか?例えば、心を惑わせ惚れさせることができる。念じるだけで相手の心を読むことができるとか」


 「うむ、相手の肉体に変化をさせる能力はあるが、お主のあげたものは人と離れし能力ゆえ、強い制限もかかる。この場合は回数で、人生で使えても100ほどじゃな」


 「……」


 男はまた、深く考え出した。 

 復讐する為に何を得るのか。力、容姿、能力……

 そして男は答えを出した。

 

 「なら、僕が望んだ物を人間に見えなくするようにはできますか?」


 「望んだもの?例えば、なにをじゃ」


 「そうですね……カバンとかはどうですか?」


 「ふむふむ……そうじゃの。物理的なものであれば、可能じゃ。じゃが、その願いも制限がかかるぞ。先も言った、物理的な物、ようは生命以外じゃ。そして、対象範囲は縦横共に10mほどじゃな。回数の制限は、そうじゃの……お主の世界であれば1000回。時間制限で20分ぐらいじゃな」


 「……なるほど」


 男はまた深く考え出した。

 そして、提案した。


 「なら、大きさは3mまで小さくする代わりに回数制限を無くすことはできますか?時間も1時間」


 「ふむ?小さくする……確かに、それぐらいの大きさであれば、回数制限は取っても良いぞ。それに、時間も2時間まではよかろう。しかし、良いのかそれで?お主が良ければそれでも良いが……」


 謎の声は、少し心配をしていた。

 男は残酷な人生を送り、あたらな人生を求めれるのにも関わらず復讐の為に諦め、こんな能力を得たところで彼の復讐は成せるのかと。

 なぜ心配になるかと言うのは、人間の目に見えない……それはつまり、男の世界で言うマジックと一緒だからだ。

 技術のある人間であれば、人の目を欺くことなど容易である。

 だが、今度は男に迷わなかった。

 

 「はい。それが僕の願いです。それ以上は何も求めません。ただ、少し心配なのは、僕は元の世界で新しい命として生まれ変わるのですか?それとも、自分の肉体に戻ることはできるんですか?」


 「自分の身体に戻ることはできん。じゃか、肉体を与え何者でもない者を作ることはできるぞ」


 「なら、そうしてください。大人であればどんな状態でも構いません」


 「そうか……よし、わかったぞ。では、其方の願いを叶えてやろう。良いか、スキルを使いたい時は『透明カラーレス』解きたい時は2時間待つか『着色カラーリング』と唱えればよい。後これはサービスじゃ。では、頑張るんじゃぞ」


 「はい!」


 男は返事をすると、意識はなくなりどこかへ飛ばされる感覚のみが残った……

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